5
――オーウェンが表情を険しくするのが、エマにはハッキリ見て取れた。
「…………
「え?」
「先の
「ええ……確か、ケイ・アマセとかいう子でしたっけ」
「………………」
やはりエマの言葉には応えず、難しい顔のまま舞台から目を離さないオーウェン。
エマも弱く息を吐きながら、舞台のケイ・アマセを――騎士クローネをへと視線を送る。
「奴は『神』で、逆に言えば『神』でしかない。同類の神を殺した俺達を憎んだり、自分が殺されるかもしれないと焦ったりなんて感情は、奴には存在しないんだ――
(……彼が来たのは、実技試験の少し前だって話……だったのよね)
エマとオーウェンが、マリスタの
申し訳なさそうな手紙が送られてきたのが、その直後。
以降は家に帰ってくることも無く、説明も無く。
帰ってきたと思ったら、
〝アルクスが捕まえてる私の友達を解放して欲しいの〟
――
(……男の子のことだとは、思わなかったな。あの後オーウェンから聞いて知ったけど)
昔から友情には熱い一人娘だった。
時には命の危険を
しかし、異性の友人についてマリスタから聞くのは今回が初めて。
「ふふ……」
黒い鎧に身を包んだ、整い過ぎる程に整った
我が娘が――――オーウェンが注目するのも無理はない、などと、エマは
(でも……なんだかあの子、)
「やめろよゼタン。思っても無いことを喋るな」
「……そう言うな。こうした方がよく育つのだ、貴様等は」
その表情は、確かに「
(そう、なんだか……イグニトリオ君と話すときだけ、雰囲気が変わるような……)
〝ティアルバーを
誰とも知れない一般人に、そんなことが可能だろうか。
夫に聞けばあの少年は、ディノバーツ家の娘とも浅からぬ縁を持つという。
姿を現してから数か月で、
果たして、それは偶然だろうか。
〝先の
(…………起こらない、わよね。何も)
気付けば夫と同じような表情をして、エマは
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