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「どういうも何も、肝心かんじんの中身スカスカじゃねーかお前さんの作戦は。そんな状況でホントのことを話しても、この疑り深いヤツが応じるワケねーだろうよ」

「そ、そりゃまあ……そうですけど」

「それと、マリスタはどうしてイグニトリオ君を誘おうと思ったの? 何か理由があるのでしょ?」

「……この件、学長……代理に、かなりワガママ言うことになっちゃうので。少しでも力と立場のある人を味方にして、有利な材料を少しでも持っておこうと、思いまして」

『………………』

「わ……わかってます、ヒドいこと言ってるのは。でも、ケイを――このプレジアを守るために、出来ることはみんなしようって決めたんです。だから――」

「はは――つまりお墨付すみつきが欲しいからってことか。いつからンな打算的なこと考えるようになったんだ、お前さん」

「え…………」

「ふふ――マリスタにしては合理的ねって言ってるだけよ。悪く言ってるんじゃないわ――なんかますます似てきたね。ケイと」

「そ、そうですかね?」

「まァいいさ。ともかく、そういう事情なら尚更なおさら、お前さんは作戦の中身を充実させたほうがいい。そうでねーと、イグニトリオの奴が乗ってくることはねえだろうな。無論、学長代理殿どのもだ」

「……わかりましたっ。ありがとうございますっ!」

「わっ。…………もう行っちゃった」

「あのグータラ娘があんだけシャカリキで動いてんのが見れるとは。面白いもんですねぇ」

「そんなこと言ってる場合ですかザードチップ先生っ。私たちも協力するって言っちゃったんですよ!」

「あらら。引き受けたからには何かアテがあるのかと思ってましたけど」

「そんなものこれから考える所ですよっ! 受けたはいいけど、ああもう。そんなムチャクチャにどう利を通せば――」

「まあ、移動しながら考えといてくださいや。行きましょう」

「ザードチップ先生も少しは――――え? 移動って……どこにですか?」

「決まってんでしょう。アテのとこにですよ」

「な――先生もしかして、もう何か無茶を通す方法を思いついてるんですか?」

「そんな大層なモンじゃありませんや。それに……何をどう頑張っても無茶は無茶ですよ。じょうちゃんの作戦は、恐らく百パーセント成功しません」

「……え?」

「『え』って、ディノバーツ先生も感じられたんでしょう? 嬢ちゃんの作戦は無理だって。その通りだ、あのはそれだけの作戦を準備・実行するのにかかるコストをまるでわかっちゃいない。デカい企画に慣れてないヤツがやる典型的てんけいてきな失敗だ。あのデモもどきがなまじ成功したせいで、事の大きさを測り損ねてんですよ」

「で……でもそれじゃあなぜ先生は賛成したんです?」

「アテを思い付いたからだよ。これからソレに会いに行きます、先生もどうぞ」

「ちょ待ッ……ザードチップ先生っ、ちゃんと説明を――」

「それも行きながら説明しますから、ホントにやるんだったらマジで時間ないですからね」

「――わ、分かりましたからッ、さっさと説明してくださいってば――――!」




◆     ◆




「ずさっと到着!! 私史上最速!!!」

「一番遅いのだわよマリスタ」

「んな?! みんな早ぁ! って……あれ。みんなじゃないじゃん。パールゥ……はわかるけど、リアもナタリーもいないし」



 第二層、飲食スペース。

 白い丸テーブルを囲み座っているのはエリダ、システィーナ、シータとパフィラのみ。

 数人欠けた「いつもの」集まりは、ひどく物足りなくマリスタの目には映った。



「これで全部らしいわ」

「え、そなのシスティ。なんで?」

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