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「うん。だから、みんな来て」

「え、みんな?」

「ううん、マリスタは違う。オーダーガード君、バディルオン君、セイントーン君、ロハザー。風紀のみんな、一緒に来て」

「だ、だから理由を――」

「――おし。解った」

「は、ハイエイトきみっ」

「いいから来いってお前らも。――りィマリスタ、人集めもなるべくしとくからよ。今は行かせてくれ」

「……一つだけ言わせて、ヴィエルナちゃん」



 ヴィエルナが振り返り、マリスタの目を見る。



 そんな静かで怜悧れいりな瞳に、マリスタはずっと憧れていた。



 だから、彼女も――――その一人・・・・なのだ。



「ヤバくなったらすぐ逃げて。あなたまで倒れたりしたら、許さないから」

「……それ、こっちの台詞。私、マリスタの笑顔だって守りたいんだから、ね?」

「――――私だって!!!」



 周囲の者が揃って耳をふさぐ大声にキュ、とヴィエルナは目をつぶり。



 開けた目で、にこやかにマリスタへと笑いかけた。



「――行こう、みんな」

「お、おう……」

(ぼ……ぼく初めて見たかもしんない。キースさんがあんなにはっきり笑うとこ)

(おめーもかチェニク……俺もだ)

(ロハザーが動揺してるくらいだ、相当めずらしいぞ今の)

「早く!」

『はいっ!』



 ヴィエルナに続き、いそいそと出ていく風紀委員ふうきいいんたち。

 マリスタが残されたナタリーを見ると、彼女はため息をきながら帽子ぼうしをグシグシとかいた。



「……動きますか。貴女あなたはまずどうします、マリスタ」

「シャノリア先生たちの所。ナタリーは?」

「……もう少し考えます。マリスタは一人で出てください」

「うん。――やられないでよ?」

「私の周囲には記録石ディーチェ張り巡らせてますから。そうそう手は出せませんよ」

「なにそれこっわ」

「いいから行きなさい。進展があり次第報告します」

「おっけ! いってくる!! 協力してくれてありがとね、ナタリー!」

「はいはい」



 ガチャバタン、と慌ただしく出ていくマリスタ。

 ナタリーは少し歩き、ソファの上にぼすんとうつ伏せに倒れ込んだ。

 クッションに顔をうずめながら、小さく目を開く。



「…………御覧ごらんなさい。貴方あなたがいなくたってマリスタは動けるのですよ、ケイさん」




◆     ◆




「おいヴィエルナ、どこまで行くんだよ」

「風紀委員室」

「な、なんでンなとこまで」

「みんなに、連絡して。風紀委員全員、すぐ集まるように、って」

「あ――ああ? 全員っ?」

「構わないけど……理由が分からなきゃ招集もかけにくいよ」

「テインツの言う通りだぜ、キースよ。あんた一体――」

「学長に、正しい手段で物申す、なら。立場ある人の、承認。絶対、必要になる、から。不登校気味、生徒会長だけじゃ、足らないと思う、から」

「……立場ある人の、」

「承認?」

「それに、」



 人気のない廊下で立ち止まり、ヴィエルナが振り返る。



「変わらなきゃ、いけないと思う。私達、風紀委員会も。いつまでも、」



〝そりゃ風紀委員長の席も決めきれなくて空きっぱなしなわけだ。こんな人たちしかいないんだもんね〟



「いつまでも、ナイセスト不在の風紀・・・・・・・・・・じゃ、ダメなんだよ」

「……ヴィエルナ、お前……何考えてる?」

「……決めよう、風紀委員長。プレジアを変えられる、強い意志を持ったリーダーを」

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