第51話 無血完勝友情大作戦

1

「おハロー。学祭最終日の朝ですよー」

「………………何しに来た、ギリート」



 ――それにしても、アルクスの詰所つめしょにこんな拘置所こうちしょのような場所があるとは。



 学祭二日目。が沈んで間もない時間に、俺はアルクスの隊員から学祭がくさいの期間のこと、そしてこの身の「限定的な解放」についての話を受けた。

 クラスの出し物である劇の時間だけ解放される……非常に限定的ではあるが、見方を変えればギリートのこと、ココウェルに仕掛けた作戦など……実に様々な策と行動が無駄になる事態は避けられたことになる。



 ……感謝すべきだろうな、今回もまた。マリスタたちに。



 夜も多少睡眠をったが、ここに入れられて一番心安こころやすい休息だった気がする。

 お陰でこうしてギリートに、扉に着いた小さな四角の格子窓こうしまどから話しかけられても、そうイライラせずに対応できるというものだ。



「うわくさっ。シャワー浴びてないとさすがににおうよ」

「適当なことを言うなちゃんと入ってる。世間話はいいから要件を言え」

「つれないなァ相変わらず。非人道的な尋問じんもん拷問ごうもんですっかり参っちゃってると思ったのに」

「用事がないなら帰れ」

「朝食はたべた?」

「帰れ」

「せっかく情報持ってきてあげたのにィ。ホントに帰っちゃうよ? 生徒会長の権力で強引に面会許可までさせたのになァ~」

「…………」

「最後はムシかい。ま、牙も心も折れてないようでそこは安心したけどね――――昨日のアレ・・は君の差し金?」

「……マリスタ達のことか」

「へえ、違うの? へー、じゃあホントに彼らが自分で考えたんだ。てっきり君かコーミレイさんの献策けんさくだと思ったんだけど」

「ナタリーは知らんが、俺じゃない。自分でも今言ったろうが、俺への面会は誰にも許されてない」

「彼女も自分じゃないって言ってたんだよね。あのモブの中でも底辺でしかなかったアルテアスさんがねえ。変わったもんだねえ、アマセ君?」

「それが要件か?」

「ホントつれないんだから――――昨日は犠牲者ぎせいしゃゼロだって」

「――何?」

「襲撃者の被害。アルクスが厳戒態勢げんかいたいせいで夜通し見回りして、何なら自分たちから探し出そうとさえしてたのに、まったく姿を見せなかったそうな」



 ……姿を見せなかった?



 確かに、容易に考えが及ぶことではある。

 アルクスが相当数、このタイミングで急に帰ってきたとなれば、敵も警戒して当然だ。

 だが……



「……ギリート。アルクスは」

「当然、その質問来るよね。答えはノー。頭カタい連中だけど『品質』は僕も認める所だ、それなりに世界に通用する訓練は受けてるよ。相手が王国の精鋭だとしても、そう易々やすやすと集結を気取けどられるようなタマじゃない、と思う」

「……間違いないのか」

「リシディアの国力は、僕もそれなりに把握はあくしてるからね。いわゆる『本物』に近い戦力を持った人は王国にもリシディアにも多数いる。でも、その人達の駆け引きを全部無に出来るような力を持った『本物』なんて、悪いけど在朝ざいちょうの人間には一人もいない。かといって在野ざいやの人間が関われる事件でもない」

「…………」



 そう。

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