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『!!?』



 神と人が驚愕きょうがくする。

 聞こえた声は、確かに――――神によって殺されたはずの少女の声。



 そして。



〝せっかく柱々われわれが協力してやるのだっ!! せめて命消えるまで足掻あがいてみせよっ、人の子よ!!〟

〝力になれるかは解らんがね。神のはしくれなりに、足掻いてみせるつもりだよ〟

「――――こやつら、」

「プデス……キュロス……、」

〝そうだぞクローネッ! 神二人が味方になんだ、後のことはドーンと任せてアンタは突っ込みなッ!!〟

〝こっちはおさえる――そっちは頼んだよ、クローネッ!!〟

「…………クヲン…………カンデュオ…………」



 聞こえた声は。

 脳裏のうりに浮かんだその姿は。

 契約パスに感じたその存在は。



〝勝つよ、クローネ。残ってる人たちみんなみんな守って、絶対勝つよ!!!〟



 ひとりの騎士に、那由他なゆたの希望を奮い立たせる。



「…………タタリタ…………!!!」



 クローネは久しく見せなかった笑顔でゼタンに向き直り――魔力を爆発させる。



「!!」




◆     ◆




『おおおおっっ!!!』



 ――――極光きょっこう四辻よつじに伸び、機神きしんばくす。



 機神はその光を引き千切ろうと身じろぐも、一向に千切れる気配が無い。

 それも道理。

 その光は、ただただカラクリの神を縛すためだけにつくられた――――神の魔術まじゅつなのだから。

 


『うおぉぉぉぉ――――――ッッ!!』



 機神を囲む四点の魔力まりょくまりを形成するのは、生きていた二人と二柱ふたりの神――クヲンにカンデュオ、そしてプデスとキュロス。



 人と神の膨大ぼうだいな魔力をかてとして、捕縛陣ほばくじんなおも機神を捕らえ続けている。



「じゃあ――――本当に、すべて・・・もらうからね」

「早くやれ! わ、わたしの気が変わらぬうちに!!」

「ああ――頼む。アレは神がつくり出した罪だ。柱々われわれの命をもっめっすべき存在なのだ」

「…………、ありがとう。あなた達がいてくれなかったら私達、きっと滅びてた」

「ふんっ。礼ならそこの小娘にすることだ」

「小娘って言うなって言ってんだろ何回も! 戦友と呼べ!!」

「調子に乗るな小娘っ!! わたしはお前の説得に応じた訳ではないからな!!」

「はっ! 私があんたの魔術を破るまでは殺す気満々だったクセによく言うぜ!」

「違うと言うておろうがっ! そして負けてもない、あれはわたしが魔術を引っ込めたのだ!!」




◆     ◆




「……興味深いな。どうやって神を操った?」

「あんたじゃないんだ。大義たいぎや恐怖に頼らなくても、俺達は他人を味方につけることが出来る。役目を外れて自分達の、世界の幸福を追い求められる俺達にはな」

「…………?」



 心を尽くして話し、互いを認め、仲間とする。



 そんな非常に人間臭い行動を、役目を遂行するだけの神には解り得ない。

 いや――「解ってはいけない」という方が、解釈かいしゃくとしては正しいのかもしれない。

 


 命をしみ、より幸せに生きられる未来を望む。



 それは、神にとってはただの堕落だらくであるのだから。



「言ったろう、ゼタン。俺達は、お前達神と共に歩むことが出来る道を探していたと」



〝人間も神も無い、ただ一個の命として、この世界で共に生きていくことは出来ないのか?〟



「――――貴様等は、最初から」

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