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「『四大貴族よんだいきぞく史上最弱の女』って? 『アルテアス家凋落ちょうらくきざし』って? ったく、なーにがプレジアよりスゴいヘヴンゼル騎士よ。むしろウチの義勇兵ぎゆうへいより質が悪いんじゃないですかあー!? 陰口なんてみっともなさ過ぎ!!」

「なぅっっ……!!お前っフザけン」

「ふざけんなはこっちのセリフなのよ! 散々プレジアをバカにしてくれちゃってさ。プレジアのことなんてなんにも知らないクセに」

「見くびんじゃねーぞ貴族きぞく風情ふぜいっ!! 知り尽くしてんだよこんなクセェ学校のことなんて! だからこそ父様と一緒に、わたしはお前達プレジアをずっと危険視していた!」

「き……危険視ですって?」

「そうよ! 国の不穏ふおん分子ぶんしとして――――王国から独立した巨大な戦力を持つお前達をね!!」

「……!?」



 マリスタは眉をひそめる。

 どう取ったのか、勝ちほこったような顔になるココウェル。



 王国の手の及ばない場所で、私的に大きな戦力を持つ団体。



 そんな風にプレジアをとらえたことなど、これまで一度も無かったからだ。



「はっ……どうせそんな考え方なんて、一度だってしたことないんでしょ!? 井の中のかわずがよ!」

「い……いやその。ど、どうしてそんな険悪なワケ!? 王国とプレジアって、昔からそんな感じなの!?」

「もっと勉強してから口開けボンクラッ!! 昔からも何も、王国とプレジアが仲良かったことなんて一度たりとも無いんですけど!?」

「!」

「だからこうやってわざわざ! 王女が直々じきじきに内部の様子を見に来てやってんのに!! やれニセ王女だのバカ呼ばわりだの恥を知れよ! 立場わきまえろってずっと言ってんだろうがッ! マジでつぶすぞお前ら。学校プレジアリシディアで戦争したらどっちにがあるかくらい、グリーンローブの低能ちゃんでもわかんだろうが、あァっ!!?」

「…………」



 マリスタはこれまでの人生を、すべてプレジアの付近で過ごしてきた。

 王都を訪れたことが無いわけではない。しかし、訪れた経験はどれも少し気取ったお出かけ程度のものだった。



(……そっか)



 考えてみれば、おかしな話なのだ。

 リシディアは、大貴族だいきぞく達がリシディア家を王族としておこした国だ。

 それはマリスタも、日々の暮らしの中で頭にり込まれている。



(なのに、どうして私は……王国でなくプレジアに・・・・・・・・・・来たんだろう・・・・・・?)



 王都おうとヘヴンゼルには、能力を認められれば真っ直ぐに、国に関係する仕事にくことが出来る学びが存在する。

 であれば何故なぜ自分は、プレジア魔法魔術学校に居るのか。

 何故自分は、父母から何も聞いていないのか。



 何故自分は、今までそれを疑問にさえ思わなかったのだろうか。



「――え、」



 眼前に迫っていた魔弾の砲手バレットに気付いたのは、その時だった。

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