6

「……どうだろうな。なんせ、」

「あんたも俺を試そうってか?」

「聞け最後まで。――記憶がねえ・・・・・んだ。俺にはよ」

「!」

「――記憶、」

「そ……そうなんですか?」



 ナタリー、シャノリアもトルトに向き直る。

 トルトが顔をしかめた。



「勘違いすんじゃねぇ、今回の件にはからんじゃねえよ。お前さんがここに来る前から……俺自身がここに流れ着く前から、記憶はとっくにねえんだよ」

記憶喪失そうしつ、ってことか」

「そう意識できてるだけで、もう二十年にはなるか。内乱中に頭でもぶつけたんだろ、我ながら間抜けな話だ。だが、その記憶が――」

魔弾の砲手バレットッ!!』



 トルトが言葉を切り、彼と同時に声に振り向く。

 飛来する弾丸は俺にはどうしようもない弾道コース辿たどり、



 一発は、ナタリーの鼻先をかすめて障壁しょうへきに着弾し。


 一発は、緑の赤毛の弾丸に相殺そうさいされた。



「ッッ!! お前ェっ!」

「――マリスタ」

「まったくもうっ。なんでまだリタイアしてないワケあんたはっ」

「マリスタ、俺は」

「なんつって。大丈夫だよ、わかってるから」

「――何」

「ザードチップ先生と話したいことでも、出来たんでしょ。そういう目ぇしてるもの」

「…………」

「だから、さっさと済ましちゃいなさいよね。――このじゃじゃ馬姫は、私が面倒見ておくからさ。ね、サイファス!」

「あ、ああ。それは構わないが……」

「だァれが誰の面倒を見るっつったお前ッ!」



 全身を怒らせてマリスタに歩み寄る王女、ココウェル・ミファ・リシディア。

 その横を、視認せねば気配を察せない程の静けさで歩く黒の騎士、アヤメ。

 その二人が、



「――あんたに言ったのよ、じゃじゃ馬」



 眼前の四大貴族よんだいきぞくいちが放った魔波まはに、足を止めた。



「――――」

「っ……お、お前……邪魔すんなっつってんの!!」

「やりたい放題もいい加減にしろってのよこのバカ!!」

「ば――――ばっっっっ、」

「どんなにエラい奴でも、友達を困らせる奴は許さないわ。あんたがどれだけエラかろうとねっ!」

「殺すッッッ!!!! 殺す殺す殺す一族郎党いちぞくろうとう皆殺みなごろォすッ!!! アヤメッ」

「…………はい」

「何笑ってンのよお前もっっ!!」

「うっ。……すみません」

「クソが。もういいから! 早くアイツを殺せっ!」

「殺すと失格では?」

「言葉の綾でしょうが理解しろバカっ!! 二度と立てないようにしてやれってこと!!」

「承知しました」

「ハン、今度はそう易々やすやす刺さっては・・・・・やらないんだから! サイファス、頼んだわよ!!」

「て俺かよっ?! 今のカッコイイの完全に自分が戦う流れだったろ!」

「お願いっっ!!」

「しょ、しょうがないな……というか誰なのこの人ら……特に黒い人は只者ただものじゃないんだけど雰囲気ふんいきが」

「っし、これで一対一!!」

「はっ、そんな劣化れっかケイみたいのがアヤメに敵うかバーカ! 共々ともども秒殺してやるから覚悟しとけお前ら!!」

「……ケイさん。貴方あなた、あの最高に口の悪いロリ巨乳が何者なのか知ってるのですか?」

「……お前が知らないことに驚きなんだが俺は」

「知ってるのですね。では取引をしましょう」

「取引?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る