第4話 保健体育とリカ先生

「今日はこれから保健体育の授業だ。タイムリーな話題だな?」

とリカ先生は僕の方に視線を向ける。

「勉強熱心な保健体育だけ優等生のヒロ、あとで当てるから覚悟しておくように。」

ああ、やっぱりそうなりますよね。リカ先生ならプライベートなあれこれまで質問しかねない、適当にごまかすしかないな、1時間だけでも。

普通なら保健体育は男女分かれて授業をするのだろうが、この小さい村ではそんな贅沢は許されない。常勤の教師はリカ先生だけ、忙しくそしてデリカシーのカケラもないヤツが2回に分けて同じことを喋るなんて「無駄に決まってだろそんなの」と決めつけ、うら若き乙女や少年たちの心への配慮なんてものはするわけもなかった。

「今日の授業は避妊についてだ」

さぁって楽しい時間がやってきたぞ、どうせ僕を当てるんだろ。

リカ先生は案の定、クラスをもったいぶってザーッと見渡すと僕のところで視線を留め、

「避妊って何だ?ヒロ。」

と僕を指名した。

「こどもが、できないように、することデス。」

棒読みで答える。余計なことを喋らない、相手にスキを与えたら最後、ヤツはさっきの話題にもどり、ズタズタに自分のような年端のいかない少年の心を切り裂く言葉を吐くに違いないのだから。

「いつ?どこ?だれが?どのように?それで、答えたつもりか?ヒロ」

リカ先生は声を一転明るくし、

「恥ずかしがらずにちゃんと具体的に話してごらん?先生怒らないから」

むしろ、喜ぶだろヤツは。わかっている。ちゃんと理解してます。

「5W1Hを答えるときはちゃんと意識して答えよう!って国語の授業で何度も注意しているだろ、ヒロ。国語赤点だったな?あとで放課後来いよ?ん?」

怒っているふりだけで、楽しそうなリカ先生は、

「せめて何をしている時かくらいは言ってもらいたい。先生は悲しいよ、だって常に子供をできないようにしたら、世界滅んじゃうぞ?な?もっとそこを詳しく頼む。」

棒読み作戦続行でいくしかないな、わかっていたが。

「……性行為のときデス。」

喋らない、突っ込ませない。これリカ先生に対しては重要な会話スキル。いや、ついでに女子Yにもね。

「先生ーー。ヒロくんの言う『せいこうい』って良くわかりませーん。」と女子Y、つまるところユミさまも追い打ちをかけてくる。と、その時ソフィーが、

「ちょっと待って、辞書引くね……、セックスって書いてあるよ?ユミちゃん??」え、ざわ、ざわ。ソフィーさん、知らないんですか?知っててわざとやっているんですか?……いや、良くわかってないに違いない、そう彼女ならね。たぶん。いや、そうであって欲しい。

「コホン、先生は大人の責任が取れない男女、つまり子供をきちんと育てることができない二人がセックスするときは避妊するように、と言いたい。つまり、君たち全員当てはまるな。これから具体的に先生が教えてあげよう、実はな、コンドームという便利なものがある、そしてなんとこの村でもユミちゃんの家で取り扱っているから、セックスしたかったら購入よろしくぅ。」

まさかのCM、というか買うところ他にないから当然なのか?率直でそしてデリカシーのカケラすらない。おい、こんなヤツが教師でいいのか?いいんかい村長さん、そして神父様?大事なことはわかる。当の教師が茶化してどうする?

「誰か?実演したい男子居る??ね、恥ずかしがらないで、わかり良いから実演希望しちゃうぞ先生は。」


おい。


「実演は私で勃起できる人に限り認める。」

……とヤツは言っている。

「まぁ、良い。放課後、先生のところに来たら、実演したいってことな??とりあえず、この棒につけるから、着け方良くみておけよ?」

おい、おれ放課後に行くことになっているんだが、それも含むのか?ま、流石にそれはないと信じたい。もちろん、リカ先生だから、答えはもう自明だよな。ははは。










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