合唱コンクール

 2017年10月28日土曜日、中学校の合唱コンクールの日です。

 毎年保育園の芋煮会と丸被りするため、私か夫、どちらかが保育園、どちらかが合唱コンクールと、手分けして行っていました。この年は夫が保育園へ。私が次女を起こして合唱コンクールへ連れて行くことになりました。

 眠り姫状態の次女を起こすとき、大抵手伝ってくれる頼りの長女は、なんと模試でした。家に残る長男と三女では頼りになりませんので、私が必死に起こします。

 模試の長女と合唱コンクールの次女、それぞれに弁当を用意し、とにかく早め早めに起こそうと努力しました。2年学年合唱の時間、次女のクラスの時間を先生に事前に伺っていた私は、それまでどうにか間に合わせようと必死でした。

 しかし、起こそう起こそうとすればするほど、全く起きません。耳に声は届いているのだろうけど、全然動かないのです。

 ベッドの上で、朦朧として全身力の抜けた次女に、必死に制服を着させます。ブレザーではなく、セーラー服なので、頭を通さなければなりません。腕を通し、頭を通し、どうにか着させても、寝させたままネクタイを結ぶことが出来ず、頭を抱えました。

 そうこうしているうちに、時間がどんどん迫っていきます。

「ヤバい。もう少しで学年合唱始まる」

 焦りから無理やり身体を起こしますが、次女は苦しそうにするだけで、自分の意思で動くことが出来ません。

「だめだ、学年合唱終わった。クラス合唱まであとちょっとある。行こう。頑張って行こう」

 励ましましたが、それで動けるはずもなく。

「間に合わないよ……。行っても立ってられないし、歌うことなんか出来ない……」

 全身の力が抜けて、如何ともしようがなかったのです。

 頑張れ頑張れと励まし続け、未だ間に合う未だ間に合うと言い続けましたが、無理でした。

 時間は残酷です。待つということを知りません。

「だめか……」

 クラス合唱も、気が付くと終わっていました。

 ようやく立ち上がれるようになったのは、お昼近くになってからでした。

 次男の芋煮会がそろそろ終わる、という頃、12時になってから、私は次女を連れてホールへと向かいました。

「行ってもどうにもならないよ」

 次女に言われましたが、

「せっかく頑張って準備したんだもん。せめて会場に行って、出席扱いして貰おうよ」

 半ば無理やり連れて行きました。


 ホールへ着くと、午前のプログラムは全て終了していました。

 丁度お昼の時間。ロビーなどでシートを広げて各クラスごとにお弁当を広げていました。

「来ただけだからね。直ぐ帰るから」

 次女は弁当を車に残し、私に手を引かれてホール内で自分のクラスを探しました。会場の近くで、弁当を広げている一団に、担任の先生がいました。

「次女さん! 来たんだ。一緒にご飯食べよう」

 すかさず声をかけられましたが、次女は直ぐに帰るつもりで、弁当は車の中です。

「いいえ……」

 帰ろうとする次女に、

「お弁当持ってきてるじゃん、車に取りに行くよ」

 私はそう言ったのですが、

「直ぐに帰るって言ったじゃん。帰ろう」

 余程気まずかったのか、次女はやたらと帰りたがりました。

 そうこうしているうちに、芋煮会を終えた夫が、次男を連れてホールへと向かってきたようです。

≪弁当持ってきて。大ホールの入り口≫

 私は夫にLINEを入れ、それを見た夫が、車から弁当を持って、次男と共にやって来ました。

「お弁当、持ってきてます。大丈夫です」

 先生に言うと、

「お弁当、今食べ始めてばかりだから。次女さんも一緒に食べていこう」

 こうなると断りようもなかったのでしょう。次女は渋々とクラスの話の中に入っていきました。


 合唱コンクール、次女のクラスは散々だったようです。

 歌を歌うのが好きな次女にとって、それは許されないことでした。

 しかし、もしかしたら合唱コンクールには出られないかもしれないということは、前々から分かっていたことです。合唱コンクールは午前開催。次女にはハードルが高すぎました。

 それもあってなのでしょうか。

 長女と長男が先手を打っていました。

 公民館祭で姉弟で合唱を披露しようというものでした。

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