斬られ役(影)、号令する
251-①
出撃当日、朝焼けに包まれながら、魔王城は出撃の時を待っていた。
魔王城の底部には以前、ホン・ソウザンに殴り込みをかける直前に、老朽化により落下してしまった秘密兵器の代わりに超弩級穿影槍が取り付けられ、改修によって魔王城は武光の世界のカブトムシを思わせる姿となっていた。
そして、その魔王城の大広間には、王国軍と新生魔王軍の将兵が整列していた。
大広間の最奥に設えられた壇上には、王国軍を率いるアナザワルド王国第三王女、ミト=アナザワルドと、魔王シンの娘であるマナ、そして、新生魔王軍を率いる影光の姿があった。
ミトとマナによる決戦前の訓示が終わり、マナが影光の方を向いた。
「それでは師匠、出撃の命令を!!」
〔我が相棒よ、将兵の士気を高め鼓舞するのだ!!〕
マナと、ネキリ・ナ・デギリに促され、将兵が注目する中、影光が壇上中央に立つ。
影光は、居並ぶ兵士達を端から端までゆっくりと見渡すと、深く息を吸い、腹の底から声を出した。
「俺はマナやミトみたいに上手くは喋れねぇ。だからお前らにはこれだけ聞いておく……王国軍の野郎共、ミトを敬愛してるかーーーっ!? 魔王軍の野郎共、マナは好きかーーーっ!?」
元が俳優なだけあって、部屋の
影光も負けじと更に声を張り上げる。
「上等だコノヤローーー!! だったら……俺達の強さと格好良さを!! 存分に!! 大胆に!! 嫌という程!! コイツらに見せつけてやれオラァ!!」
ミトとマナはズッコケそうになった。これではまるで、軍の総大将というより、山賊の頭目か、ならず者の親玉である。
「テメェら、この後に及んで人間だ魔族だと下らん事で揉めたり、格好つけて犬死にすんじゃねーぞ!! マナもミトもそういうのを死ぬほどダサいと思ってんだからな!? そうだよな、マナ!? ミト!?」
いきなり話を振るなよと思いつつも、マナとミトも影光の言葉に乗っかった。
「そ……そうですっ!! 皆さん王国軍の方々と仲良くして下さいね、こ……このやろー?」
「人間も魔族もありません!! 一致団結して暗黒樹を撃滅し、必ず生きて帰りなさい!! 死んだら主命違反で処刑ですからね、処刑!!」
マナとミトの言葉を聞いた影光はニヤリと笑った。
「……聞いたなテメェら!! 犬死になんてダセェ真似すんじゃねーぞ!! 絶対に生きて帰れよ!! 分かってんのかコノヤローーーー!!」
先程よりも、もっと大きな返事が返って来た。
影光の言葉は、一軍を率いる将の言葉とは到底思えないほど単純で、威厳も重厚さもまるで無かったが、
「よぉぉぉし!! 行くぞ野郎共……暗黒樹をブッ潰すッッッ!!」
影光が右の拳を高々と突き上げると、魔王城を震わす
「魔王城……発進ッッッ!!」
暗黒樹を撃滅すべく、魔王城が動き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます