斬られ役(影)と巫女(姉)、出迎える


 246-①


 ナジミの前に立ったオサナは、ナジミを力一杯抱きしめた。


「あ、あの……オサナさん!?」

「大丈夫!? 怪我してへん!?」

「は、はい。大丈夫ですよ、私はとっても元気です!!」

「良かった……」


 ナジミは目に薄っすらと涙を浮かべているオサナを落ち着かせるように、そっとオサナを抱きしめた。そして、そんな二人を見て、(よっしゃ、俺も……!!)と両腕を広げてナジミを抱きしめに行こうとした影光だったが、そんな影光の前に天照武刃団の面々が立ちはだかった。


「姐さんに何しようってんだコノヤロー!!」

「副隊長は……隊長と《らぶらぶ》なんですからねっ!!」

「我らの副隊長殿に、悪い虫は近付けさせん!!」

「そ、そうです!! ふ、不埒ふらちで不届きです!!」

「んだ!! アスタトの巫女様には指一本触れさせねぇだ!!」


 武器を取り出しかねないほどに天照武刃団の剣幕は凄まじかったが、それ以上の剣幕を見せる者がいた。


「ちょ、ちょっと待て!! 何でオサナまでそっち側なんだよ!?」

「影光っちゃん……あんた、婚約者の目の前で浮気しようなんてエエ度胸してるなァ?」

「いや、お前何言って──」

「問答無用じゃーーーーー!!」

「おげぇっ!?」


 オサナは 48の退魔技の一つ、流星跳躍蹴り(=ドロップキック)を繰り出した!!

 会心の一撃!!

 影光は 吹っ飛んだ。


「ま……まぁまぁ、オサナさん」

「おーい、影光ーーーっ」


 ナジミがオサナをなだめていると、今度はガロウがやって来た。


「ここにいたのか、影光……むっ?」


 ガロウはオサナとナジミの二人をジッと見た。


「あ、あの……何か……?」

「そこの女……確かナジミとか言ったか……」

「はい、そうです」

「……前から思っていたんだが、お前とオサナは顔だけでなく、匂いまでよく似ている、まるで姉妹──」

「っ!!」


 オサナは懐から癒しの札を取り出すと、ガロウの鼻と口をぐるぐる巻きにして封じた。


(う……い、息が……!?)


 ガロウがブッ倒れると、今度はフォルトゥナがやって来た。


「おーい、団長ーーーっ、ガローーーウ……って、わーっ!? 一体誰にやられた!? アタシとの決着を付ける前に死ぬなーーーーー!?」

「ゆ、揺さぶっちゃいけません!! まずは口のお札を剥がしてあげないと!!」

「そ、そっか!!」


 ナジミの助言に従い、フォルトゥナはガロウの口と鼻に巻き付けられたお札を引っぺがした。


「ふぅ……た、助かったぞ、猫娘」

「フン、アンタを倒すのは最大の好敵手であるこのアタシだからね!!」

「そんなものにしてやった覚えは無い。それはそうと……何か用があったんじゃないのか?」

「あ、そうだ団長!! 『暗黒樹の中から逃げて来た』って人間達が来たんだよ!!」

「何ぃっ!?」


 フォルトゥナの知らせを聞いた一同は、大急ぎで暗黒樹から逃げて来たという人々のもとへ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る