巫女(姉)、怒る
227-①
涙で頬を濡らしているナジミを見て、影光は息を呑んだ。
「えっと……その……無事で良かった」
「全然良くなんかありません……!! そこを退いて下さい……っ!!」
「どこへ行くつもりだ?」
「そんなの決まってます……武光様を助けに行くんです!!」
「ちょっ、待てって!?」
影光は、部屋から出て行こうとするナジミの腕を掴んで制止した。
「離して下さい!!」
「危険な目に遭わせるわけにはいかへん!! お前が……大切なんや!!」
「……さい……!!」
「え……?」
「やめて下さい!! 武光様のフリをするのは!!」
「っ!?」
「武光様のフリをして……私を惑わせないで下さい!!」
辛辣な言葉に、影光の手が思わず緩んだ。そしてその隙を突いて、ナジミは影光の手を振り払い、部屋を飛び出そうとしたのだが……
「怒りの……お姉ちゃんヘッドバット!!」
影光の背後にいたオサナが飛び出し、ナジミの
「「ーーーっ!?」」
突然のヘッドバットを喰らったナジミと、ヘッドバットを喰らわせたオサナは互いの石頭の前に頭を抱えて、姉妹仲良く(?)悶絶した。
「痛たた……だ、誰ですか貴女は!? いきなり何を──」
「うるさーーーい!! 怒りの……お姉ちゃん鎌固め!!」
「ひっ!? 痛だだだだだだ!?」
「こ、コラ!? やめろオサナ!!」
影光は慌ててオサナをナジミから引き離して、背後から羽交い締めにした。
「は、離せレフェリーーー」
「誰がレフェリーやねん!? ええから落ち着けって!!」
影光は何とかオサナを
「アンタなぁ!! 焦ってるのは分かるけど、言うてエエ事とアカン事があるやろ!! 影光っちゃんはな……まさちゃんの記憶と人格をそっくりそのまま複製されてんねんで……!! 本人と全く同じ記憶や思い出を持ってんのに、本人やない……それがどれだけキツい事か……!! アンタ……自分が影光っちゃんと同じ立場やったらどうする!?」
「そ……それは……」
オサナの言葉にナジミは言葉を詰まらせた。
「影光っちゃんが命がけでアンタをここまで運んできたのは……本人と同じくらいアンタの事を大切に思ってるからやろ……!!」
オサナの言葉に少しだけ平静を取り戻したナジミは、影光の立場に思いを巡らせ
影光が武光と同じ思考や人格を持っているのなら……自分は何と酷い事を言ってしまったのか……と。
「その……影光さん……本当にごめんなさい……私、酷い事を……」
震えながら頭を下げたナジミを元気付けるように影光は笑いかけた。
「ええって、気にすんな」
無理をしている時の笑顔まで、武光と寸分も違わない。ナジミの胸は更に締め付けられた。
「お前のそういう悲しそうな顔見るのは好きちゃうねん、俺も……本体もな」
「……はい」
「俺の本体はそう簡単には死なへん!! あいつは何千回と斬られてるけど一回も死んだことあらへんし」
「……それ、お芝居での話でしょう!?」
「ははは……まぁな。でも安心しろ、本体は俺が助けてやる!!」
「本当ですか……!?」
「ああ、約束する!!」
「でも、どうやって……!?」
影光は少し考えた後、言った。
「とりあえず、元凶を締め上げてみる、一緒に来い!!」
影光はナジミを連れて、シルエッタをブチ込んだ牢屋へと向かった。
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