斬られ役(影)、檄を飛ばす


 197-①


「うおおおおおっ!! 進めーーーーーっ!!」


 影光は軍勢を引き連れ、一直線にソウザン城に向かっていた。影光の『家から出るな!!』という脅しが効いたのか、路上には人の姿は無い。

 その代わりに、城へと続く道には影魔獣がひしめいている。


 影光は先頭に立って魔王剣ネキリ・ナ・デギリを振るい、迫り来る敵を斬り払いながら、突き進んだ。


「喰らえぇぇぇっ!! 超ハイパーウルトラスペシャルギロチンスラァァァッシュ!!」

〔オイ!? 魔煌飛刃波だと言ったであろうが!?〕

「超赤熱ファイヤーヒート斬りィィィッ!!」

〔ま、待て!! 魔炎灼烈刃まえんしゃくれつじんだからな、それは!? 魔炎灼烈刃まえんしゃくれつじん!!〕

「ハイパーエクストリーム最強マキシマム……」

〔貴様ァッ!! これ以上我の技にダサい名前を付けるんじゃない!! 滅するぞ貴様ッ!?〕

「何だようるせーな!? 人が戦ってる最中に!!」


 斬り捨て、蹴散らし、薙ぎ払い……激しい戦いの末に、影光達はとうとう城へと到達したのだが、そこで意外な光景を目撃した。


「あれっ!? 何だありゃ、門がブッ壊れてるじゃねーか!?」


 それはフリードが黒王紫炎咆こくおうしえんほうでブチ破ったものだったが、そんな事を知る由も無い影光は、『これぞ天佑てんゆう!!』とばかりに、ニヤリと笑った。


 暗黒教団の首魁の身柄は大きな交渉材料となる。教皇の身柄を押さえておけば、暗黒教団を壊滅させると同時に、来たる人間達との交渉において、教皇の身柄と引き換えに色々と譲歩を引き出す事が出来るかもしれない……というのは、マナの談である。


 影光は四天王や仲間達を見回すと、高らかに叫んだ。


「行くぞ野郎共!! 目指すは暗黒教団のかしら……ヴアン=アナザワルドの身柄の確保だ!! かしらは殺すなよ!!」


 影光の檄を受け、新生魔王軍はソウザン城に突入した。 




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る