シスターズ、混ざる
177-①
武光の指摘を受けたシスターズの三人の脳裏には、初めて融合した日のシルエッタとの会話がよぎった。
シルエッタの秘密の実験場、その敷地内に作られた戦闘能力テスト用の闘技場でサンガイハオウは僅か5分足らずで、50体もの影魔獣を殲滅した。
剣影兵や槍影兵を蹴散らし、弩影兵の矢を弾き返し、狂王型の影魔獣ですら容易く
「「「す……スゲェ!! これが……? サンガイハオウの力なんだね♪」」」
圧倒的な自分達の力に酔いしれるシスターズだったが……
「……貴女達、今すぐ融合を解除しなさい」
シルエッタはシスターズに融合解除の命令を下した。突然の命令に三人は内心首を傾げながらも融合を解除した。
「ちぇっ、せっかく楽しんでたのによー!!」
「何故融合を解除させたのです?」
「私まだ全然暴れ足りなーい♪」
不満げなシスターズの三人に対しシルエッタは告げた。
「……あのまま放って置いたら、貴女達は二度と分離出来なくなる所でした」
シルエッタの言葉に三人は言葉を失った。
「サンガイハオウの形態を長時間続けると、貴女達の肉体は完全に混ざり合って分離が不可能になります……白と黒の絵の具を混ぜ合わせて作った灰色の絵の具を、再び白と黒に分ける事が出来ないように……」
「もし、そうなってしまった場合……私達はどうなるのですか?」
02の問いかけに、シルエッタは答えた。
「おそらく、最も強い人格が生き残って……それ以外は消滅します」
177-②
シルエッタの言葉を思い出したシスターズは、不吉な考えを振り払うように頭を左右に振った。
「「「クソが……一気にカタをつけてやる!!」」」
サンガイハオウは両の掌を合わせると、指をガッチリと組んだ。
組み合わさった両手の隙間から光が漏れ始める。
「「「ゴミ虫が……覚悟して下さいね?」」」
光は輝きを増し、拳の周りに稲妻が
「「「跡形も無く、消し飛ばしてあげるね♪」」」
「フン……それならこいつも一緒に消し飛ばしてもらおうか!!」
「「「なっ!?」」」
サンガイハオウが力を溜めている隙に、武光はダッシュで階段を駆け上がり、シルエッタを背にした。
「「「卑怯だぞテメェ!! 恥を知らないのですか!? ……最っっっ低だね」」」
シスターズは武光を罵倒したが、当の武光は涼しい顔である。
「フフン……俺はプロの悪役やからな!! 卑怯・反則・掟破りは大好物じゃー!!」
七年半も悪役をやり続けてきた男である、『悪役たる者、徹頭徹尾悪であるべし』は武光のモットーなのだ。
「「「そこから離れてくれ、姉さん!! どうして逃げないのです? ほ、本当に撃っちゃいますよ!?」」」
シスターズは階段の踊り場からこちらを見下ろしているシルエッタに向かって叫んだが、シルエッタは柔らかな微笑みを浮かべたままその場を動かない。
これには武光も違和感を抱いた。
(え? ウソやん……何でコイツ逃げへんねん!? あの見えへん壁に相当の自信があるっちゅう事なんか……それとも……?)
下から熱風が吹き上げてくる。サンガイハオウの周囲の空気が渦を巻いているのだ。
……その風が、シルエッタの髪をふわりと舞い上がらせ、そして武光は見てしまった。
シルエッタの首筋にこの世界の文字で『04』という数字が刻まれている。
(影武者!? いや……まさかコイツ……シルエッタの言葉を伝える為だけのスピーカーかっ!?)
階下のサンガイハオウが俺の後ろに立っているシルエッタが偽者だと気付いてしまったら……焦る武光だったが……不意に熱風が
「「「ぐあああっ!! 02、03、分離だ、分離しろ!!」」」
シスターズは融合を解除しようとしたが……
「「「ぶ……分離出来ない!?」」」
「「「そんな、嘘でしょ……私、消えたくないよ!!」」」
サンガイハオウは両膝を地に着き、頭を激しく振った。それまで、頭部と背部がルビーのような赤、胸部と腕部がトパーズのような黄色、下半身がサファイアのような青と、三色の宝石のように綺麗に色分けされていたサンガイハオウの肉体が結合部を中心に泥水のように濁った色へと変色してゆく。
武光はシルエッタを睨みつけた。
「おい!! あれは何や!! 『消えたくない』ってどういう事や!!」
「フフフ……長時間あの形態でいると、分離が出来なくなって……三つの人格が反発し合った結果……三つの内、二つの人格が消滅するのですよ」
返ってきた残酷な答えに、武光は言葉を失った。それを知っていながらあの三人を合体させたのか。影魔獣とは言え……人格と記憶を持っているというのに。
「「「い……嫌だ!! 助けて下さい!! 私、消えたくないよ!!」」」
もはや全身が濁り、悲痛な声でシルエッタに助けを求めるシスターズだったが、シルエッタの影武者は、淡々とシルエッタからの言葉を告げる。
「そんな事より、早く賊を抹殺しなさい」
シルエッタの言葉に武光は激怒した。
「お前ぇぇぇっ!! それが……苦しむ仲間に言う事かああああああっっっ!!」
激昂する武光だったが、シルエッタは何を言っているか理解出来ないと言わんばかりに首を傾げた。
「仲間? 実験体が? アレらはただの道具に過ぎません」
武光は悶え苦しむサンガイハオウに視線を落とした。
「…………イットー」
〔…………ああ、やろう〕
流石は相棒、皆まで言わずとも自分のやろうとしている事を理解してくれる。
武光は力強く頷くと、猛スピードで階段を駆け降り、苦しむサンガイハオウの前に立った。
「お前ら……俺とイットーを信じるか?」
「「「突然何を……!?」」」
「お前らの……
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