斬られ役、異世界を征く！！ 弐！！

隊員達、追い詰められる

　１６９－①

「やばい！！　皆、散れ！！」

　突撃してくるシスターズに対し、フリードは散開の指示を出した。それを追うようにシスターズも散開する。

「さっきはよくもやってくれましたね？　約束通り、今度はブチ殺してあげますからね？」

「くっ……上等だこの野郎！！」

　フリードは眼前に立ちはだかるリクシンオウ０２に対し、吸命剣・妖月を逆手に構えた。

「今行くよ、フー君！！」

「え、援護します……！！」

「フン！！　させるかよバーカ！！」

「チッ……私が行く！！」

「おっと♪　そうはさせないよ♪」

「くっ……」

　フリードの援護に行こうとするクレナとキクチナの前にクウレツオウ０１が、そして同じくフリードを援護しようとするミナハの前に、カイコウオウ０３がそれぞれ立ち塞がった。

「ククク！！　テメェら……この私から逃げられると──」

「邪魔です！！」

「うおっ！？」

　キクチナが放った雷導針を０１は間一髪で躱（かわ）した。

「て、テメェ！！　人が話してる最中に……ってうおおっ！？」

　間髪入れずにクレナが穿影槍を腰溜（こしだ）めに構えて突っ込んで来たのを、０１は空中に飛翔して何とか逃れた。

「こらー！！　飛ぶなーーー！！　卑怯だぞーーー！！　降りてこーーーい！！」

　眼下で地団駄を踏むクレナを見て、０１は笑った。

「誰が降りるか、バーーーカ！！」

「クレナさん、ここは私が！！」

「……ふん」

　雷導針を射かけてきたキクチナに対し、０１は背中の翼を大きく羽ばたかせて突風を巻き起こした。

「きゃあああっ！？」

「くうっっっ！？」

　凄まじい突風は０１目掛けて飛んでいた雷導針はおろか、クレナとキクチナまでも軽々と吹き飛ばし、広間の壁に叩きつけた。

　背中から壁に叩きつけられ、うつ伏せに倒れ伏した二人の頭上に０１がスゥッと移動した。

「へへへ……いいザマだな！！　今からたぁぁぁぁぁっぷりと痛めつけてやるぜ！！」

　０１は嗜虐的な笑みを浮かべると、両腕を長い鞭（ムチ）状に形状変化させ、空中から二人の背中を滅多打ちにした。

「きゃあっ！？」

「ああっ！？」

「クレナ、キクチナ！！」

　苦痛に悲鳴を上げる二人を助けようとするミナハの前に、０３が立ち塞がる。

「おっと♪　あなたの相手は私だよ♪」

「邪魔を……するなぁぁぁっ！！」

　ミナハは、渾身（こんしん）の力で、愛用の斧薙刀である『驚天動地』を真っ向から振り下ろしたが……

“ガシィッ！！”

「なっ……！？」

「フフ……♪」

　ミナハの渾身の一撃は片手で軽々と受け止められてしまった。斧の部分に０３の左手のサメが食らい付いている。ミナハは驚天動地を握る両腕に力を込めたが、まるで万力にでも固定されたかのようにビクともしない。ギリギリと金属が軋むような音が響く。

「死んじゃえ♪」

「くっ！！」

　ミナハは咄嗟に驚天動地を分離させ、手槍の『動地』で右の鮫を防いだ。

「おぉー、やるねえ♪　でも、もっと頑張らないと……私の両腕のカイコウオウに噛み殺されちゃうよ♪」

　明らかに遊ばれている。ミナハは歯を食いしばった。

「クレナ！！　ミナハ！！　キクチナ！！」

「貴方に……他の娘を気にする余裕があるのかしら？」

「ぐぅっ！？」

　フリードはリクシンオウ０２の突進を躱そうとしたが、躱し切れずに左肩が僅かに接触してしまった。ただそれだけなのに、フリードの身体は空中で独楽（コマ）のようにスピンして床に叩きつけられてしまった。

　フリードは衝撃から立ち直る間もなく、宙に浮いた。０２に首を掴まれて持ち上げられたのだ。

「ふふふ……さて、どうやって殺しましょうか？　言っておきますけど、楽には死なせてあげませんからね？」

「グッ……」

　首への圧迫に意識が遠のき、フリードが意識を失いかけたその時……

“すん！！”

　０２の腕が一刀両断された！！