斬られ役(影)、優しさに怯える


 134-①


 翌朝


「よし……行くぞ影光!! 百鬼塞へ!!」

「グォアッ!!」

「行きましょう影光さん!!」

「フフフ……派手に蹴散らしましょう!!」

「よーし、ぶっ飛ばすぞー!! ガロウには負けーん!!」

「デュフフ……行くぞ同志よ!!」

「グフフ……やるぞ、ドルォータ、ネッツレッツ!!」

「ヌフフ……おうさシンジャー!! 全てはヨミ様の為に!!」


 四天王達は一斉に影光の方を見たが、当の影光は「お、おう……」と気の無い返事だった。


「オイオイ……どうした影光? らしくないぞ、不安げな顔など……」


「あー、うん……まぁ、仲間が全員……揃いも揃って目がイッちゃってればな」


 およそ三百体もの影魔獣との戦いで傷付いたガロウ達は、『オサナちゃん印の癒しの御札!!』の力ですっかり元気を取り戻していた。

 ただ……取り戻したのは良いが……用法・用量を守らずに貼り付けまくったせいで、必要以上に元気を取り戻し過ぎて爆発し、全員目がイッちゃっていた。


「ウヘヘへへ……」

「ヒヒヒ……」

「ハァ……ハァ……ハァ……」

「ヒャハハハハ……」


 癒しの札の半分は『癒しの力』、そしてもう半分は『オサナちゃんの優しさ(笑)』で出来ていると成分の欄には書いてあった。

 『癒しの力』については武光から複製された記憶によって影光はよく知っている……だとしたら、この惨状は『オサナちゃんの優しさ(笑)』によるものなのか……


 影光は半分程に減った癒しの札の束を見てげんなりした顔をした。


「オサナ……お前の優しさって一体……」



 ~~~~~ 双竜塞にて ~~~~~



「ぶぇ……っくしょい!!」

「おさなー、だいじょうぶ?」

「かぜー?」

「大丈夫大丈夫!!」

「なにそれー?」

「おふだのざいりょう?」

「ふふん……優しさ……かな?」

「ぐねぐねしてるねー」

「うねうねしてるねー」



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ハァ……ハァ……皆、行くぞぉぉぉぉぉっ!!」

「「「「「「「うおおおおおーーーーー!!」」」」」」」

「ちょ……ちょっと待てってお前らーーー!?」


 雄叫びを上げて、物凄い勢いで駆け出したガロウ達を影光は慌てて追いかけた。そして……天驚魔刃団は何と予定の半分の行軍日程で百鬼塞に到達してしまったのだった!!

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