死神、指摘する
106-①
「魔王シンが倒された後しばらくして……勇者リヴァル=シューエンは人々の前から姿を消した」
ロイはそう切り出した。ロイの言葉を聞いて、武光は唖然とした。
「……そんな奴が『影魔獣の脅威から人々を救うために旅立つ』と私の
「え……? 何で……?」
頭上に疑問符を浮かべまくる武光に、ロイは問いかける。
「なぁ……唐観武光よ、お前に聞きたい事がある」
「な、何や?」
「私はずっと違和感と疑念を抱いていた……三年前、空に映し出された勇者リヴァルと魔王シンの最終決戦……あの時、リヴァルが
「ど……どういう意味や?」
ロイは武光の目をジッと見た。
「単刀直入に言うぞ? あの時……魔王がその身に纏っていた漆黒の鎧と鉄仮面……あの中身は、お前だったのだろう?」
「……お奉行様、言いがかりは
遠◯の金さんで、お
「間合いの取り方、動きの
それを聞いた武光はぐぬぬ……と唸った後、観念して盛大に溜め息を吐いた。
「はぁ……お前程の武芸の達人相手に隠し通すのはやっぱ無理かー?」
「フッ……お前もそれが分かっているから、人払いをしたのだろう?」
「まぁな……なぁ、誰にも言うなよ?」
「お前がそう言うのなら……更に言うならば、本物の魔王を
「……何でそう思うんや?」
「本当にリヴァルが魔王を仕留めたのなら、わざわざあのような大芝居を打つ意味などあるまい? それに……あの場にいたであろう
「誰が突拍子も無い
「美男子とは言ってないぞ……だが、これで
「何やねんな、『得心が行った』って……?」
ロイはゆっくりと武光を指差した。
「リヴァル=シューエンが人々の前から姿を消したのは……お前が原因だ」
「はあっ!? 俺っ!? 何で!?」
「考えてもみろ、奴の性格を……奴は
「お、おう……」
「そんな奴が、自分が
ロイの指摘を武光は慌てて否定した。
「いやいやいや、確かに最後の一撃をブチかましたのは俺やったけど……勝てたのは俺一人の力やなくて皆の力やし!! ヴァっさんがおらんかったら俺、何べんも死んでたで!? それに何より……ヴァっさんが助けた人達の数は、俺なんかより桁違いに多いし……勇者以外の何者でもないやん……勇者でええやん!?」
「それで割り切れる奴なら良かったのだろうがな……奴はそれが出来る男ではない」
「あわわわわ……」
武光は頭を抱えた。あの時はめちゃくちゃ良いアイディアだと思ってやった事が、まさか親友を苦しめていたとは……
「……あああああああああーーーーー!! ヴァっさん……スマーーーーーーーーン!!」
武光は居たたまれなくなり過ぎて、壁際まで全力ダッシュすると、窓を全開にして、空に向かって全力で叫んだ。
「おいやめろ、営業妨害だぞ」
「あああああああああーーーーー!! あああああああああーーーーー!!」
「……フンッ!!」
「おげぇっ!?」
ロイの ボディーブロー!!
会心の一撃!!
武光は 悶絶した。
〔大丈夫か武光!? しっかりしろ!!〕
〔こんの……クソ骸骨がーーー!! よくもご主人様に……表に出ろコノヤロー!!〕
武光を心配するイットー・リョーダンと、『シャーーーッ!!』とロイを威嚇する魔穿鉄剣だったが……
「大丈夫や、お陰で少し落ち着いた」
「本当に大丈夫か? 死ぬ程手加減したつもりだが……」
「あの威力でかよ……」
ドン引きしつつも、武光はゆっくりと立ち上がり、再びソファーに座った。
「で、本題や……ヴァっさんの
“ガッシャアアアアアン!!”
武光が本題に入ろうとしたその時、下の階でガラスが激しく割れる音がした。
直後、ウンギョウさんが慌てて応接室に入ってきた。
「何事だ?」
「向かいの肉屋と服屋と花屋が襲撃してきました!!」
それを聞いたロイは武光に視線を向けた。
「……あんなに大声で叫んで……周りの店に迷惑をかけるからだぞ?」
「俺!?」
異常事態にもロイは冷静だった。ロイは、不敵に笑うと武光に言った。
「仕方ない、下に降りて一緒に謝ってやろう…………剣を忘れるな」
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