竜将、キレる
95-①
天驚魔刃団が双竜塞に逗留する事になって五日が経過したその日、影光はリュウカクの自室に呼び出された。
影光は、部屋で待っていたリュウカクに『よう、カクさん。何か用か?』と、フレンドリーに話しかけてみたのだが……
「馴れ馴れしく呼ぶな」
……この塩対応である。
ゲンヨウは影光の事を『主の名を騙る偽者を倒してくれた男』として、かなり当たりが柔らかくなったものの、リュウカクは未だに影光達に対して警戒心が剥き出しだった。
「姫君はお前達を客人として扱うと言っておられたようだが……ハッキリ言っておく、私はお前達を信用していない!!」
「えー、何でだよ!?」
リュウカクの両肩は怒りでわなわな震えていた。
「何でだと……? お前らが来てからというもの──」
“バーン!!”
リュウカクが何かを言おうとしたその時、扉を突き破らんばかりの勢いでガロウが転がり込んできた。
「ガロウ!? どうした!?」
「む……影光か、丁度良い!!
「お、おう……」
「あっ、いたーーーーーっ!!」
「チッ!?」
ガロウを追って、今度はフォルトゥナが部屋に突入してきた。
「アタシと……勝負しろーーーーーっ!!」
ガロウの返事を待たずにフォルトゥナが飛びかかった。
ガロウはフォルトゥナの拳を軽々と躱すと、フォルトゥナの顔面を鷲掴みにして持ち上げた。
「あっ!? こ……このっ!! 離せ、離せーーーーーっ!!」
ガロウは影光にチラリと視線をやった。
「影光、コイツ殺しても──」
「却下」
「このガキ……飯の最中だろうと、水浴びの最中だろうとお構い無しに襲いかかって──」
「却下」
「この前なんざ用を足してる最中に襲って──」
「おい……それ、モテ期だぞガロウ? 却下」
「こ、これが……いや、絶対違うだろ!?」
「とにかく殺すのだけは絶対に駄目だ!!」
「……チッ」
「ふぎゃっ!?」
ガロウはフォルトゥナをリュウカクの執務机に勢いよく叩きつけ、リュウカクの机は真っ二つに叩き割られた。
リュウカクの執務机を破壊したガロウは、足取り荒くリュウカクの部屋を出て行き、気を失っていたフォルトゥナも目を覚ますなり、ガロウを追いかけて慌ただしく走り去ってしまった。
「えーっと……で? 何の話だっけ?」
「だから私は──」
“ババーン!!”
今度はヨミが転がり込んで来た。
「ヨミ!?」
「あ、影光!! 丁度良いわ、匿いなさい!!」
「お、おう……」
ヨミが物陰に隠れた直後、三人の兵士がどやどやとリュウカクの部屋にやって来た。
「何だ!? どうした!?」
リュウカクの質問に兵士達の一人が答える。
「ハッ!! リュウカク将軍、我々はヨミ様を探しているのであります!!」
「ヨミ『様』だと……!?」
「ハッ!! 我々は《ヨミ様を
「あー、ヨミなら練兵場の方に行ったぞ」
「情報提供、感謝するであります!!」
影光の嘘っぱち情報を聞いた兵士達は『デュフフ……』と笑いながらリュウカクの部屋を去っていった。
男達が去った後、物陰に隠れていたヨミが姿を現した。
「フッ、美しいって……罪ね」
「まぁ……顔だけは良いからなー、お前」
「なっ!? ふざけんなコラー!!」
ヨミのドロップキックが影光に炸裂した。影光はリュウカクが軍学の書物を並べてある棚に背中から勢い良く突っ込み、倒れてきた棚の下敷きになった。
ぷりぷりと怒りながらヨミが去った後、影光はズリズリと棚の下から
「ごめんごめん、で……何の話だっけ?」
「いや、だからだな──」
“バコーン!!”
今度はレムのすけが、その巨体と有り余るパワーで、壁ごと扉をブチ破って部屋に入ってきた。
「な、何だお前は!?」
「どうしたレムのすけ?」
影光に聞かれてレムのすけは答えた。
「カゲ……ミツ……グォアーッ!! ゴガァッ!!」
「うん、うん……なるほど……だってよ、カクさん?」
「いや、何を言っているのか全然分からん!!」
「キサイなら多分、地下の隠し通路の辺りじゃねーか?」
それを聞いて、リュウカクは慌てた。
「なっ!? ちょっと待て!! 何故お前達が隠し通路の存在を知っている!?」
「二、三日前に、天驚魔刃団でこの砦を見て回った時に、キサイが、『自分ならここに隠し通路を作りますね』って言って……で、その
リュウカクは苛立たしげに吼えた。
「私はッッッ、お前達をッッッ、信用していないッッッ!!」
「あー、そうそう、そういう話だった!!」
「お前達が来てからというもの……双竜塞の秩序は乱れに乱れている!!」
それを聞いてムッとした影光はすぐさま言い返した。
「言いがかりはよしてもらおう!! 俺達が……何したってんだ!!」
「この部屋を見ろ!! 良くその台詞が吐けたなお前!?」
怒り心頭のリュウカクは影光に言い放った。
「練兵場まで来い!! お前を……叩きのめす!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます