第12話 痴漢王 街へ向かう





 俺の『痴漢魔導士』の力で盗賊のリーダーをビンタで倒した後は、実にスムーズに事が進んだ。


 盗賊達はリーダーがやられた事によりあっさりと降伏。今度こそだまし討ちされないように、村人にも協力してもらって盗賊を囲って貰った。流石に完全敗北と悟った盗賊達は、自らの職業を破棄したのを確認した後、盗賊が持っていた鉄製の檻にぶち込んだ。



 盗賊達を殺さない事にしたのは、村人と巨乳が相談して決めた事だ。俺はどちらでも良かったので、巨乳の揺れるスカートをぼんやりと眺めていた。



「やっぱり罪は私達で裁くより、しかるべき場所で償って貰いましょう」と言ったのは意外にも巨乳だった。てっきり殺したいほど恨んでいるのかと思ったがそうでもないようだ。



 彼女曰く「あの時は殺す以外の選択肢がなかっただけで、捕まえられる余裕があるならその方がいい」との事である。



 本当に底なしにいい奴だなと思う。自分の事しか考えていない俺とはえらい違いだ。



 きっとこれからこの異世界で、その清さにより損する事も多いと思うが――是非このままでいて欲しい。やはり痴漢するとしたらビッチより処女の方が楽しい。



 とまあ、そんな訳で盗賊関係の事件は一見落着したのだけど、これからさぁハッピーエンド! とはいかないのが異世界転生なのだ。



 終わりと言うか、まだまだ序章である。俺様の痴漢旅はまだ始まったばかりなのだ。








 * * * * *








 盗賊達が使っていた塒で、俺と巨乳と村人は一泊することにした。



 そして、朝。



 俺は盗賊達が利用していた荷馬車の上に乗って、ゆらゆら青空を見上げながら馬に運んで貰っていた。



「恩返しをさせて欲しい」そう言ったのは白髪の髭を生やした村人だった。



「私とこの男は、この世界で言うとええと――『転生者』って人なんです。だから、この世界について教えてもらえませんか?」



「是非! ワシが知っている事ならば、喜んでお答いたします」



 昨夜、そんなやりとりが二人の間で行われた。この世界の常識には俺も興味があったので、会話こそは参加していないが二人の隣に座って話を聞いていた。



「――ところで転生者様。これから何をするかお考えですか?」



「……うーん。何も考えてないかな。とにかく生活出来るまでの稼ぎと住む家が欲しいかな?」



「それならば、ここから半日ぐらい先にある――『セントナム』という大きな街に向かうのはどうでしょうか? あそこなら『ギルト』や『依頼掲示板』もありますし、転生者様ほどお強いならお金を稼ぐのに苦労しないと思われます」



「なにそれ! ゲームっぽい!」



 村人の話を聞くと、『セントナム』という街はここ一帯では一番大きな街らしく、とりあえずそこに行けば生活に関する悩みの大体は解決するとのこと。



 村人達も、村を壊されてしまったのでセントナムにしばらく移住するつもりだったらしい。特に反対する理由もない俺と巨乳は、村人達と一緒にセントナムに向かうことになった。



「なんだか……私達だけ荷馬車の上でゆっくりさせて貰って……罪悪感がある」



 俺と同じく荷馬車の上で揺られる巨乳が、荷馬車の並走して歩く村人達を見てボソリと呟いた。



 ちなみに荷馬車の中にいる盗賊達は、セントナムにあるこれより遥かに強度がある檻にぶち込む予定のようだ。



「巨乳はその程度で罪悪感を覚えて大変だな。そんなストレス抱えてたら乳がしぼむぞ?」



「……アンタって、ほんと痴漢するかセクハラ発言するかしかしない男ね。この、社会の敵ッ!」



「当然だ。俺はエロにしか興味が無いからな。会話が下品になるのは致し方ない」



「誇るなッ! 恥じろッ!」



「私は女の体にしか興味がありません」



「ああもうッ! そのドヤ顔めっちゃムカつく……ッ!」



 何がこの女の癪に障ったのか、頭をガシガシと掻いてうめいた。



「ふん。エロのどこに恥じる要素がある? エロパワーがどれだけ産業に貢献したと思っている? エロが無いと、そもそもお前は生まれてすらいないではないか」



「…………う」



「お前は両親のセックスで生まれました。はい復唱!」



「言えるかボケぇえええええええええええ――ッッ!!」



 顔を真っ赤にした巨乳から拳が飛んできた。ふん。こう何度も食らっていれば流石に慣れる。



 俺は拳をギリギリの所でスウェーバックで回避、制服の上から胸を揉んだ。



「ひゃあああんッ!?」



「すまん。魔が差した」



「…………ううううううううううう。ムカつくムカつくッ!!!」



 巨乳はそう言って荷馬車の端に逃げて拗ねた。頬を限界まで膨らませてこちらを睨む姿は、とても痴漢心がくすぐられた。



「………………ねぇ」



「なんだ?」



 巨乳はそっぽ向きながら言う。



「……私を巨乳って言うのやめて。ムカつく」



「そうしたいのは山々だが、俺はお前の名前を知らない」



「……九条京香」



「ふむ。九条京香か。略してクリ〇リスでいいか?」



「駄目に決まってるじゃないのッ!? っていうか、どこ略したらそんな頭が悪そうなあだ名になるのよッ!! まだ巨乳のがマシだわ!!」



「……では、捻りがないが九条と呼ぶことにしよう」



「……お、おう……」



 自分で言わせたのに、何故か俺が言うと九条は口をモゴモゴさせて照れた。とことん処女的は反応で可愛らしい。



「……で、アンタの名前は……?」



「俺の名前が、あまり好きじゃないが『おま〇こ太郎』って言う。是非気軽に『おま〇こ!』って呼んでほしい」



「よぶかぁあああああああッ!! しつこいッ! アンタのボケしつこいよッ! 話が全然進んまんないんだけどッ!!」



「そう怒るな。――犬神明人って言う。名前でも苗字でも好きに呼べ」



「……分かった。大神って呼ぶ」





 それからとりとめのない会話をしていると――木々の間から大きなレンガ状の建物が顔を覗かせた。




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