エピローグ―あとがき

 ――魔法は、痕跡を残さない。 


 発動された魔法は、なにかしら影響を与えるが、魔力がなくなってしまえば、魔法自体の存在は残らない。


 彼は、魔法だったのかもしれない。


 魔法の絨毯の魔力がなくなると同時に、彼は私たちの前から姿を消した。


 本当に彼が魔法だったら、私はなぜ彼のことを覚えているのだろうか。


 ――魔法には、人の気持ちが内包されている。


 そうなんだと思う。

 きっと、私は彼に魔法をかけられたんのだと思う。


 私が幸せになる魔法を――


 それは、私の好奇心をくすぐる魔法だったに違いない。

 だから、彼が私の前に現れた。


 そして、歴史の一端を間近に見せてくれる旅に、私を連れて行ってくれたのだと思う。


 ただ、私が世界の真実を見てしまったことで、彼の緋色の探求を終わらせてしまったのだろうか。


 私は、どこかで彼が緋色の探求をしてくれていればいいなと祈るしかない。




 こうして、私のこの記憶が消えないうちに本として残しておくことにした。


 いつか世界の真実を知らされる時が来るかもしれない。


 それはそれとして、私は彼がいたことを忘れたくない。


 魔力がなくなったのに、あの絨毯は存在している。


 彼という魔法が私の前から消えてしまっても、絨毯が存在するように残り続けてほしい。



 せめて、魔法に抗うため、この本を魔法ではない太陽と月の光のもとで書いた。


 でも、この本の魔力が少なくなっていたら、魔力を吹きこんでほしい。


 この本を読んだあなたに。


 ――魔法は、人を幸せにするためにある。




 白鹿チサ


 終わり

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魔法解析探偵録 緋色の探求者 水島一輝 @kazuki_mizuc

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