第6話 人形使い
猫神さまの世界 第6話
「ダンジョンの中って、地上よりも魔素が濃いって知ってる?」
「ええ、魔物を生み出したり宝物を生み出したりするからでしょ?」
この世界のダンジョンって、魔素で魔物や宝物を生み出しているのか。
ダンジョンポイントとかは、関係なのか……。
「そう、そこで先代はアブアボの木を育てるためだけの建物を建てたの。
しかも建物の中の魔素を濃くするための魔道具も作ってね?
おかげで、結構お金がかかったって先代のレシピに愚痴が載っていたわ」
「それはそれは」
……もしかして、ビニールハウスみたいなものを作りたかったのかな?
でもそれだと魔素が拡散してしまうから、密閉できるようにしたとか。
「でもそのかいあって、建物内をダンジョンと同じ魔素濃度にすると、アブアボの木がダンジョンの中にいるとき同様に育って実をつけたのよ。
そして、アブアボの実を無事、収穫できたのよね」
おお……。
「それじゃあ、手に入りやすくなったってこと?」
「それだけじゃないわ、この育て方をすれば他のダンジョン産の食材も育てられるのよ」
「それって、革命じゃない! このことはもう発表したの?」
「勿論、各ギルドには報告済みよ。
あとは領主様の返答次第ってところね」
各ギルドに報告することで、世間に広まっていくわけか……。
これも独占させないためのものなのかな?
食事が終わり、ロベリアさんは帰っていった。
フィリアさんに送った方がいいか旦那さんが聞いていたけど、笑われていたな。
何でも、ロベリアさんを襲うような物好きはいないそうだ。
ロベリアさん美人なのに……。
ロベリアさんが帰ってから、フィリアさんに僕の泊まる部屋の鍵をもらい部屋へ行く。
僕の部屋は2階の角部屋だった。
部屋の中はベッドに机と椅子、後はクローゼットが付いているだけのシンプルなもの。
ただ、一階に大浴場があるそうでもちろん僕は入ってみた。
うん、先代は絶対日本人だね。
だって、大浴場の壁に富士山が描かれていましたから。
お風呂で温まった後、部屋で明日の予定を考えてからベッドでゆっくりと寝る。
こうして、異世界一日目が終了した。
次の日、僕は昨日ロベリアさんから聞いた図書館へ来ている。
なぜ僕が図書館に来ているかというと、僕の箱庭に関して調べるためだ。
空間魔法の1つに、亜空間に空間を固定して世界を創るという魔法がある。
その空間は箱庭と呼ばれ、術者の力量で如何様にもできるらしい。
で僕は、その箱庭を北海道ぐらいの大きさにして大自然をつくった。
またその中に、僕が暮らせる村を作ってみた。
もちろん村民がいなければ、村と呼べないので村民も作ってみた。
『ホムンクルス』という村民たちを。
そしてこの村づくりを、地球にいるときにしたのだ。
……今でもそうだけど、僕はこれでも一応神様だからね。
地球では役立たずの魔法神でしたけど……。
とにかく、図書館で箱庭の『ホムンクルス』を、この世界に呼び出していいものかどうか調べるのだ。
ロベリアさんからこの図書館の話を聞いた時は、そんなに大きくはないだろうと思っていたけど来て見てびっくり。
国立図書館か?というほど大きな建物で、蔵書の数もすごいの一言だった。
あの冒険者ギルドのポスターを見た時から、紙が普及していると予想はしていたけど、こんなに本を作れるほどにまで普及しているとは驚きだ。
異世界物の小説なんかでは、異世界での本は高くて貴族しか買えないとかあるけど、本当はこんなにも普及していたんだな……。
と、驚いているばかりでなく調べ物をしないとね。
でも、こんなに本があると何から調べていいのか分からなくなるな……。
「あの、本をお探しですか?」
受付カウンターにいた女性に声をかけられた。
どうやら、入り口付近で悩んでいたのがいけなかったな……。
ふむ、ちょうどいい。
「そうなんです、ホムンクルスについて書かれた本を探してまして……」
「おや、なかなか専門的な本をお探しのようですね」
「ええ、気になると知りたくなるものなので……」
女性は、カウンターに並べてあるバインダーの1つを手に取ると…。
「え~と『ホムンクルス』関連の書籍は、2階の24番の棚にあるはずですよ」
「2階の24番の棚ですね、ありがとうございます」
「いえ、こういう案内も仕事のうちですから」
受付の女性に挨拶をして2階へ上がり、24番の棚を見つける。
「……これが24番の棚か。ふむ、書籍の数もかなりの数があるな……。
ふむ………ふむ………ふむ………ん?ここからはゴーレムの本か」
なるほど、なるほど。
昔から『ホムンクルス』を始め『ゴーレム』『人造人間』の研究はされていたみたいだな。
しかも、戦闘用が多いみたいだ。
………考えることは地球もこっちも同じというわけか。
それに、本の著者を見ているとあきらかに日本人だろ!という名前があるな。
異世界に来てまで、何の研究をしていたんだ?
でも、ホムンクルスに対する世間のイメージはそう悪くはないようだ。
ここの受付の女性も、顔色変えずに対応してくれたし、ホムンクルスに関する本もこんなに並べられているしね。
「これなら、箱庭のあいつらをこっちに呼んでもいいかな………
ん?『人形使い』?」
僕は隣の棚に並べられていた『人形使い』という本に興味を持ち手に取り読んでみた。
……そこに書かれていたのは、歴史の闇にいた暗殺者『人形使い』という召喚者に関する著書だった。
ある時勇者召喚で呼ばれた勇者の1人が、ダンジョンで行方不明になり数年後、魔王軍の1人として見つかるというお話だ。
日本の学校でいじめられていたその勇者は、魔王軍の1人となって他の召喚された勇者たちに復讐するというもの。
最後は、魔王軍の生き残りによって逆恨みで殺される、というところで終わっていた。
そして、その勇者についた二つ名が『人形使い』
ゴーレムを操り、ホムンクルスを作りだしそれを暗殺に使う。
そんな戦い方から、人形使いは忌み嫌われるようになったんだとか。
……これって、箱庭にいるあいつらを呼び出すと僕が人形使いって思われるかもしない。
う~ん、イメージが良くないな……。
しばらくは、なるべく箱庭から出さないようにした方がいいかも……。
その後、魔法関連の本や錬金術に関する本などを読み漁り、図書館を出るころには夜となっていた。
「夕食に間に合うかな、夢中になってすっかり遅くなってしまいました」
速足で宿への道を進んでいると、路地から男に声をかけられる。
「探したぜ、獣人……」
そいつらは、冒険者ギルドで僕を蹴った男とその仲間だった……。
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