第3話 恋?の行方?
猫神さまの世界 第3話
「ギルド長、失礼します」
ノックの音が聞こえて声をかけると、受付嬢のロベリアが種類を持ってきた。
ここギルド長室には、私ことギルドマスターと秘書の2人で書類仕事に追われている。
最近、冒険者ギルドの冒険者が問題を起こしているようで、その対応にギルド職員が当たっており、その報告がかなりの量なのだ。
本来ならその問題の冒険者を何とかしないといけないのだろうが、証拠がない。
しかも、その冒険者は貴族の御子息らしくそちら方面からも圧力がかかっていて、私ではどうすることもできない。
一応、国に訴えてはいるが当分放置だろうな……。
「相変わらずの苦情の山ですね……」
「そう思うなら、ロベリアの実家の力で何とかできないか?」
「無理ですね、問題の貴族は証拠を残しませんから」
「やはりそこがネックか……」
ギルドマスターの私が、貴族というだけで一冒険者をどうにかできないとは情けない……。
私が書類に囲まれて落ち込んでいると、秘書のユーナがロベリアの表情に気づいた。
「それよりもロベリア、どうしたの? なんだが嬉しそうね」
「わかる? さっきすごくかわいい少年が来たの」
「かわいい? そういえば受付の方で騒ぎがあったそうだな」
「ええ、その少年が襲われていたので私が助けました。
こちらがその少年による依頼で、その依頼を受けた私の報告書です」
私は、ロベリアから報告書を受け取るとそこに少年のことが書かれていた。
少年の依頼は、この町に来たばかりなのでこの町の案内と今日泊まる宿を紹介してもらうこと。
何だ?こういう依頼は新人冒険者に優先的に譲る依頼なんだが……。
私は、チラッとロベリアの顔を見ると、満面の笑みで返される。
これは譲る気なし、だな。
まあ今の時期、新人冒険者は研修を兼ねて王都に行っているからな……。
「ロベリア、そんなにかわいい少年なの?」
「そうよ、猫獣人の男の子なんだけど白い猫耳が立派でね?
黒い髪の間からピョコっとのぞかせていて、たまらないわね!」
「へぇ~、他はどうなの?」
「え~と、身長はロージーと同じくらい。
年は15歳って登録の時に確認したわね。
服装は、この町では見たことない服装だったわ。でも、その服装がまた可愛いのよね」
……これってガールズトークとかいうやつか?
ギルド長室で、何を盛り上がっているのか……。
それにしても猫獣人か。
この辺りでは、珍しい種族だな。
それに、この国は隣国が隣国だから、獣人がこの国を訪れること自体めずらしい。
……もしかして、何かの予兆か?
私は、書類の中から一枚の報告書を引っ張り出す。
『大陸北側の町で、黒いドラゴンの目撃例相次ぐ』
確か、先週この報告書がきて王都で貴族会議が開かれたとか。
う~ん、もしかしたらすべてはどこかで繋がっているのかもしれない?
私の考えすぎか……。
「……ギルド長、ギルド長!」
気づけば私を秘書のユーナが呼んでいる。
ガールズトークとかいうものは終わったのか?
「ん?どうした?」
「どうした?じゃありませんよ。
少年の依頼は、問題ないならロベリアに任せようと思いますが?」
「私もそれで構わないぞ? 依頼内容も新人に任せるような内容だしな」
「ということよロベリア。
その少年とのデートを楽しんできてね?」
「デ、デートじゃないわよ! 依頼よ依頼!」
これはめずらしい、ロベリアの恋する乙女のような顔は久しぶりに見たな……。
「し、失礼します!」
この部屋を出て行くときまで、顔を赤くしているとは……。
「なるほど、ロベリアにも春が来たということか?」
「……また、フラれなきゃいいけど」
ロベリアの本当の身分や強さを知った相手は、離れていくからな……。
「ふむ、相手が猫獣人だけに、ネコを被るか?」
「……ギルド長?」
「すまん、失言だった……」
▽ ▽
今、僕は受付カウンターの目の前にあるソファに座ってロベリアさんを待っているのだが、何故かロージーさんが隣で僕に抱き着いている。
「コテツ君、いい匂いだね~」
何だろう、この状況は。
多分僕の魂が地球の神そのものだから、この肉体から漏れている匂いは神の匂いってことなのか?
受付からは、ニナさんがこっちを睨んでいるし、わけがわからない。
それに…。
『冒険者ギルドに依頼するなら、どこかのギルドに所属していた方がお得よ?』
『そうなんですか?』
『そりゃ、所属しなくても依頼は出せるけど、依頼の信用度が違うのよ』
『信用……』
『そう、コテツ君も知らないお店での買い物より、知っているお店での買い物の方が安心でしょ? それと同じなの』
『あ、それ分かります』
『だから、どこかのギルドに所属することで、そのギルドがこの依頼は私たちが保証します、安全ですよってことなのよ』
『へぇ~』
で、冒険者ギルドに登録しちゃったけど……。
「不安なの?コテツ君」
隣で抱き着いていたロージーさんが、声をかけてくれる。
しかも抱き着いたままだ……。
いい加減離れないと、またロベリアさんにデコピンですよ?
「ええ、今の僕は弱いですからね。
これから強くなるにしても、何ができて何ができないのか分からないので……」
「コテツ君は真面目だね~」
そこに、ロージーの後ろからロベリアさんが声をかける。
……いつの間に後ろに?!
「ロージー、幸せそうね?」
「ヒャッ!」
ロージーさんは僕から離れると、その場に直立した。
「まったく、すぐに受付に戻りなさい!」
「はい、ごめんなさい!」
……すごいな、ロージーさんが逃げるように受付へ戻っていった。
ロベリアさんって、そんなに怖い人に見えないんだけど……。
「待たせたわね、ギルド長の許可ももらったし、早速行きましょうか?」
「はい、よろしくお願いします」
僕とロベリアさんは連れ立って、冒険者ギルドを出て行く。
その2人の後姿を、ロージーとニナが羨ましそうに見ていた。
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