星降る夜に……。
クリスマスといえば、シャルロッテとルーカスの誕生日!
――ということで、誕生日特別SSです!
今回は滅多にないラブラブ回……かも!?
(シャルロッテ15歳)
****
「……大丈夫?寒くない?」
リカルド様が心配そうな表情を浮かべながら、私の顔を覗き込んでくる。
「大丈夫です」
私は心配性なリカルド様を安心させる為に、笑いながら大きく頷いた。
……というか、本当に平気なのだ。
リカルド様のお陰で少しも寒くない。
幸せだぁー。
私を包み込む暖かい温もりに頬を擦り寄せると――
「……っ!」
リカルド様の身体が一瞬強張った気がした。
「リカルド様?」
「……な、何でもないよ!それよりもほら見て!」
リカルド様が指した方向に星が一つ流れた。
それは大きく尾を引いたような綺麗な流れ星だった。
「うわぁぁーー!」
夜空を駆ける流れ星空をバッチリと瞳に捉えた私は、歓喜の声をあげた。
「リカルド様!今の見ました!?」
「うん。ちゃんと見ていたよ」
リカルド様は、まるで眩しいものを見るかの様に瞳を細めながら、私を見ていた。
「……リカルド様?」
「んーん。ほら、また流れるよ?」
先ほどの流れ星を皮切りに、幾つもの星が天上の空を流れていく――――。
「どうして星が流れるのが分かるのですか?」
「それは、流れる音が聞こえるからだよ」
音で分かっていたとは……!
半獣人であるリカルド様はとても耳が良いのだ。流石は私の大好きなリカルド様だ。
「綺麗だね」
「……はい。とっても綺麗です」
私はギュッとリカルド様の手を握った。
**
「……今日の夜に、流星群ですか?」
「うん。シャルは星に興味はないかな?」
今年のクリスマス……この世界でいう建国記念の日に、数百年に一度しか見れないという流星群が見れると、アヴィ家を訪問してくれたリカルド様が教えてくれたのだ。
この世界は和泉の住んでいた日本とは違い、夜の灯りが少ないので、元々から星が綺麗にハッキリと見える。
眠れない夜にバルコニーから見上げる星が好きだった。
数百年に一度しか見れない流星群を私の誕生日に……リカルド様と一緒に見られるだなんて、そんなのOKするに決まっているじゃないか!
この時にしか体験できないことを大好きな人と共有できるなんて嬉しすぎる!!
「はい!喜んで!!」
私は即答した。
**
そして、ここはアヴィ領地にある小高い丘の上である。
シートと厚地の暖かいブランケットを重ねて敷いたその上。リカルド様の膝の間に座った私は、ぐるぐるに巻いたショールごと背後からリカルド様に包み込まれるように抱き締められていた。
これだけでも十分に幸せなのに、更にリカルド様のモフモフの尻尾まで私をグルリと巻き込んでくれている。
ああ……モフモフが素敵だ。
この滑らかな肌触りは……相変わらず癖になる。しかもリカルド様は良い匂いがするのだ。
「匂いはあまり嗅がないで欲しいかな……」
リカルド様が苦笑した。
思わずクンクンと鼻を動かしてしまったのが見つかってしまった。
てへっ。
でも後悔はしていない!
「リカルド様の優しい匂いがします。私が一番大好きな匂いですよ」
クンクンとまた尻尾を嗅いでからニコッと笑うと、私を抱き締めるリカルド様の腕の力が強くなった。
「……リカルド様?……わっ!」
私の顔の一つ上にあるリカルド様の顔を仰ぎ見ると、顔面をリカルド様の片手で覆われた。そのせいで、リカルド様の顔が見えなくなってしまう。
「……え?」
見上げる角度から、正面を向く角度へと直された後は、何も言わないリカルド様に両耳を塞がれた。
「ちょっ……リカルド様!?」
振り返ろうとしても、リカルド様の両手が私の耳を押さえているので、ビクリともしない。
そうしている間に、尻尾が私の頬を
く……くすぐったい。
「ふふっ」
くすぐったさに笑うと、リカルド様の両手の力が弛んだ。
……さっきからリカルド様はどうしたのだろうか?
リカルド様を振り返ると、今度は抵抗されることもなく顔を見る事ができた。
リカルド様は、先ほどの様に眩しそうに瞳を細めて私を見下ろしていた。
「……リカルド様?」
「シャル」
「はい」
「僕は君が大好きだよ」
「…………っ!」
突然のリカルド様からの愛の告白に、一気に頬が熱くなった。
ど、ど、どうして急に!?
嬉しいんだよ!?嬉しいのだけど……!
心臓はバクバクと爆音を奏で、頭の中は嬉しさと動揺のあまりに真っ白になった。
……しかし。
「私もリカルド様が大好きです!」
躊躇いも嘘もない素直な気持ち。
だからこそ、頭で考えなくてもすんなりと、この言葉が出てきた。
「ありがとう」
嬉しそうに、はにかんだリカルド様の顔がゆっくりと私に近付いてくる。
……あ、リカルド様とキスをするんだ。
そう直感した私は目を瞑って、静かにその時を待つ。
初めてのキスが流星群をバックに……だなんて、なんてロマンチックなのだろうか。
きっと、一生の素敵な想い出になるはずだ。
って……あれ?
目を瞑ったまま暫く待っていたが……幾ら待っても、その時はやって来なかった。
もしかして、キスのタイミングじゃなかったの!?間違えた!?
リカルド様を困らせてる最中だったり……?
焦った私は、そーっと片方の瞳を開けた。
すると、私の目の前にはニコニコと微笑む
「お兄様!?」
驚いた私は思わず身を引かせた。
背後にリカルド様がいるので、ほんの少しだけしか下がれなかったが。
「君達ならきっとここにいると思ったよ」
ニコニコと微笑むお兄様からは、全く悪びれた様子が感じられない。
……くっ!
『またか』である。
一体、何回邪魔をすれば気が済むのだろうか。
リカルド様の顔を仰ぎ見ると、リカルド様も困った様な、呆れた様な顔で笑っていた。
「お兄様!いつも、いつも、いつも!!どうして邪魔をするんですか!!」
「ん?邪魔者したいから?」
「………………」
「今まで放っておいてあげてたんだから、寧ろ感謝してもらいたいけどね」
……駄目だ。話にならない。
お兄様が現れた以上、私とリカルド様の進展は何も望めないだろう。
それならば……もう流星群を楽しむに他ならない。
深い、深い溜め息を吐いた私は、せめてリカルド様との距離を剥がされない様にと、リカルド様の手をギュッと握った。
へっへっへー。
恋人繋ぎしちゃったもんね。
お兄様が相手でもそう簡単に引き剥がせないからね!?
「ふーん?」
そ、そんな怖い顔をしても、絶対にこの手は離さないからね!?
「くっ、……あはははっ」
リカルド様が突然吹き出す様に笑いだした。
「リカルド様!?」
笑い事じゃないんですよ?!
お兄様が現れたせいで、滅多にないラブラブな時間が邪魔されたのですよ!?
私とお兄様は珍しく同じキョトン顔でリカルド様を見ていた。
「……うん。ごめんね。いつもの僕達だなぁーって思ったら、何だか可笑しくなっちゃって」
「ああ、なるほど」
……まあ、そうだよね。
神出鬼没なお兄様が現れないはずがなかったのだ。油断したのは私だ。
「失礼だな」
『失礼だな』じゃない!
もう……。
「隣に座っても良いですから、これ以上邪魔をしないで下さいね!?」
ショールの隙間からにょきっと腕を出して、ポンポンと隣を叩いた。
「保証はしないかなぁ」
お兄様は瞳を細めて笑いながら、隣に座った。
その後。
私達三人は、何だかんだで賑やかに流星群を観賞した。
リカルド様と二人だけの方が嬉しかったけど、お兄様がいても楽しかった。
でも、本当は……。
「……シャル」
ツンツンと、リカルド様に不意に頬を突つかれた。
どうしたのだろうかと、リカルド様を見上げると――――柔らかい温もりが一瞬だけ私の唇に触れた。
「…………!?」
「あーーー!!」
呆然と瞳を見開く私と、目聡くそのシーンを目撃して叫び声をあげたお兄様。
「誕生日おめでとう。シャル」
リカルド様はイタズラが成功した子供のような顔で微笑んでいた。
私は真っ赤な顔で口元を押さえた。
柔らかかった……。
まるで夢心地な気分だが……こんなサプライズなら、どんと来いだ!
振り返った私が、背後のリカルド様にギュッと抱き付くと、リカルド様が優しく私の頭を撫でてくれた。
「羨ましい?あ、ルーカスも誕生日おめでとう」
「あ・り・が・と・う!!あー、くっそー!やられた!まさかリカルドに出し抜かれるとは!」
形勢逆転。
いつものお兄様の様な余裕な顔で笑うリカルド様と、今まで見た事がない様な顔で悔しがるお兄様。
二人のやり取りが、とても新鮮だった。
「僕だって男だからね」
「次はないからね!?次は絶対邪魔してやるから!」
「どうかな?それは」
リカルド様とお兄様は、まるで子供の様に言い合いを続けているが……。
――一瞬だけだったけど、リカルド様とキス……しちゃった。
私は正直、それどころではなかった。
流星群が降り注ぐ中。
お邪魔虫なお兄様はいたが……今日という誕生日は、生涯忘れられない日となるのな確実だ。
「これからは絶対に邪魔してやる!」
「絶対に邪魔なんかさせない!」
――この幸せがいつまでも続きますように。
私は降り注ぐ流れ星に、そう祈った。
********
やっぱりお兄様が登場しちゃいました(^^;
たまには甘々な二人を書きたい!!
機会があったらもっと書きたい!!
でも……お兄様が来ーる。きっと来る。(笑)
懲りずにまた挑戦したいと思います(*^^*ゞ
ここまでお読み下さり、ありがとうございます(≧▽≦)
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