新天地~レオの魔力②

私がただ黙って見ている間にも、虹色の光の粒は、パンパンに膨らんだ黄色の巾着袋の様な形状の物から、一つ……また一つと、今も尚、重力に引き寄せられられる様に浮かんで行く。


早く何とかしないといけないのに、解決策が浮かばない……。


ふと、私は右手の人差し指で眉間を押さえた。

……何かのドラマかアニメの登場人物が、こうして考え事をすると『あっという間に解決さ☆』なんて言って、難問を本当に解決していた様な記憶があったからだ。


あれは何という作品名だったか……。


眉間を押さえた片手で拳銃を撃つ真似をしながら――――

「あっという間に解決さ☆ストロング探偵にお任せあれ!」


……そうだ!

真似をして口に出してみたら思い出した!


【99.99%ストロング探偵】というアニメだった。

どこかの酎ハイを連想させるタイトルが魅力的で、深夜放送を全話録画して見ていた。

ストロング探偵こと『榊田さかきだレモン』と助手の『柑橘かんきつグレープ』の掛け合いが好きだった。

見ているとついつい酎ハイが飲みたくたくなって、無意識に開けている事があったっけ。


……って、脱線した。

今はそんな場合じゃないのに。


ストロング探偵恐るべし。

……ん?ストロング?

ストロング…………ストロー!!

そう!ストローだ!!


リボンを解いて一気にレオの魔力を解放するのが駄目ならば、今開いている隙間を広げれば良いのだ!


『あっという間に解決さ☆』

ストロング探偵、レモン様ありがとう!!


さあ!作戦が決まったら早速実行しようじゃないか!


しかし、残念ながら今の私は実体ではないので、いつも持ち歩いている異空間収納バッグが手元には無い。

バッグの中にはタピオカミルク用の丁度良い太さのストローが入っていたというのに…………だ!


無い物を悔やんでいても仕方がない。

無いなら作れば良いのだ! 私のチートさんは万能なのだから!


と、いう事で……

必要な材料は、私のチートさんとです☆


……え?『どうしてレオの魔力を使うのか?』


ふふふっ。それはね!

を使用するよりも、元からあるレオの魔力を方が、身体に優しいと思ったからだよー。



私は、黄色の巾着のリボンの隙間から溢れ出す、虹色の光の粒を十個程捕まえ、そのまま逃げられたりしない様に両手で優しく包み込む。


そっと……そっとね。

潰したりしない様に気を付けながら、私は静かに瞳を閉じた。


イメージするのは勿論、『ストロー』だ。

タピオカミルクを飲む時と同じ位か、少しだけ太い…………。

細すぎず……太すぎない……ストロー。

頭の中でイメージを練り上げた私は、材料に手を加えて何かを作るという意味合いで、『メイク』と、そう呟いた。


途端に、光の粒を包み込んでいる両手がカッと熱くなった。


「……っ!」

火傷しそうな程に熱い。

私は唇を噛み締めながら、決して両手を離さない様にグッと力を込めた。


レオの魔力が私を異物として排除しようとしているのか……はたまた事への抵抗なのかは分からない。


こんな状況でなければ、さっさと放して自由にさせてあげたいところだが、私はレオの魔力の暴走を起こさせないという目的の為に行動をしている。

ここで躓いている場合ではないのだ。


だから、私は手の平の中の光の粒達に向かって、優しく語り掛ける事にした。


『このままだと君達の主が死んでしまうかもしれないの。お願いだから抵抗しないで私に力を貸して……』

『…………』

『お願い。このままだと魔力が暴走してしまう。そうなる前にどうにかしたいの……!』

語り掛けても何の反応も無かった。


これは……私のチートさんで強制的にしかないかな?

そんな強引な事はしたくなかったけど、背に腹はかえられない。

掛かっているのはレオ自身の命なのだから。


私の中のロッテとシャーリーに呼び掛けようとした瞬間……。

『コレは……あるじ、たすけるため?』

『きょうりょくしたら……しなない?』

『でもね、ふあんなんだ』

『そう。こわいんだ』

頭の中に直接、幼い子供の様な声が響いた。

それと同時に、火傷しそうに熱かった手の平の中の温度が下がったのを感じた。


思いが伝わった感動から興奮してしまった私は、気持ちを抑える為に、静める為に、大きく深呼吸をした。

怖がらせない様に。落ち着いて……。


『約束する。私はあなた達の主を助けたい。そして、あなた達の嫌がる事もしない』

冷静さを心掛けながら語り掛けると……


『だったらいいよ!』

『きょうりょくするー!』

『みんなでたすけるのー!』

『がんばろー』

頼もしい声が返ってきた。


『ありがとう。みんなで助けよう!』

『『『『おーー!』』』』

私は光の粒達を包み込んでいる両手を、コツンと額にくっ付けた。

手の平の熱はもう、心地良い温もりへと変化していた。


『私が作りたいのはストローっていう細長い筒状の棒なの。全て終わったらあなた達も戻してあげるから心配しないでね』

そう語り掛けた私に応える様に、一瞬だけフワッと温度が上がったが、直ぐにまた心地良い温もりへと戻った。


そして私はまた「メイク」と呟いた。

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