モーガジャで……①

番外編です。

ライス島の後なので、シャルロッテとミラは十六歳です!

年齢が前後する番外編で申し訳ありませんm(__)m


*******


シャリシャリ……シャリシャリ……シャリシャリ……。


ふふふっ。


シャリシャリ……シャリシャリ……シャリシャリ……シャリシャリ……。


私はほくそ笑みながらも、夢中で手を動かしていた。

すごく疲れるが、この単調な作業は嫌いじゃない。塊だった物がすり下ろされて、小さくなる様子はとても面白く、なかなかの達成感を感じる。

しかし、集中し過ぎると逆に手元が危うくなる。知らず知らずの内に違う事を考えてしまっていたりするからだ。


……『すり金』を使った事のある人は分かると思うが、この調理器具はなかなかに危険なのだ。すっている物が大きい時はまだ良いが、困るのは小さくなった欠片である。


包丁で細かく切って混ぜてしまうべきか……それとも、諦めずに最後まですり下ろすべきか……悩み処である。

最後まで諦めない事を選択すると、自分の爪や指先をすり下してしまいそうになるリスクが伴う。


日本には、そうならない為の安全ホルダーや電動や手動の機械もあったが、この世界には存在しない。


安全に作業する為には、いずれ作るべきか否か……


「そんなにモーガジャをすり下ろしてどうするの?」

突然、背後から声が聞こえてきた。


あ、危ないじゃないか!

危うく私の指先がすり下ろされる所だったよ!?


「お兄様!!……じゃなくて……ミラ?」

思わずポカンとミラを見つめてしまった。


こういう時は、ほぼ100%お兄様が背後にいるのだ。なのに、まさかミラがいるとは思うまい……。


「聞いてる?そんなにモーガジャをすり下ろしてどうするのって、聞いたんたけど」

私の背後から顔を覗かせるミラ。


因みに……『モーガジャ』とは、和泉の世界で言うジャガイモに似た食材である。

揚げても良し、蒸かしてバターを付けても良し、和えても良しの万能食材!


「……シャルロッテ?」

「あ、聞いてるよ!」

ごめんって!だからそんなルーカスお兄様みたいな顔しないで……!!


「えーと、私が作っているのは『かたくり粉』って言う粉なの」

私はミラに向き合った。


「粉……?モーガジャの実をすり下ろすと粉になるの?」

「うん。作り方があるんだけど……」


私が作ろうとしていた『かたくり粉』を簡単に説明すると、途端にミラの表情が明るくなった。

魔道具開発が得意なミラは、こういった実験的な調理にも関心があるらしい。


それならば!手伝って頂こうではないか!


モーガジャを全てすり下ろし終えた私は、後の作業をミラに任せる事にした。


「じゃあ、ミラ!後はよろしく!」

「OK!」


①すり下ろしたモーガジャをさらしの様な布で包んで、口をゴムで縛ります。


②ボウルにたっぷりの水を用意し、その中に布で包んだモーガジャを浸けて、十分くらい水の中で振ったり揉んだりし、布をしっかり絞って取り出します。


③十五分ほど置いておくと、白い粉が沈みます。水を静かに捨てて、底に溜まった白い粉は残す。再び、ボウルにたっぷりの水を入れてからよく混ぜて、そのまま十五分ほど置く。


④すると、少し水が澄んできます。ボウルの水を静かに捨てて、底に溜まった白い粉だけを残す。同じ事を、後一回繰り返します。


⑤ボウルの水を捨てたら、ヘラでボウルの底にたまった白い粉をほぐす。

白い粉は容器に広げて、完全に水分が飛ぶまで半日ほど乾かします……が、ここは私の出番です!


「シャルロッテよろしく!」

「了解!」

流石に半日は待ち遠し過ぎるので、チートさんの発動です!


右手を翳しながら『ドライ』と呟けば……


「モーガジャのかたくり粉の完成ー!!」

「おー!」

ミラと二人でパチパチと拍手をした。


チートさんは優秀な子なので、私が何も言わずとも、大きな塊や小さな塊をついでに細かくサラサラに仕上げてくれました!


「それで、この粉は何に使うのさ?」


ふっふっふー!

良くぞ聞いてくれました!


「唐揚げに、とろーりとしたあんかけでしょー。小麦粉の代わりになったりするし、デザートなんかにも使えるんだよ!」

「へー。唐揚げ……?何だかよく分からない食べ物もあるけど、シャルロッテが作るなら美味しそうだね」


小麦粉でも作れるが、唐揚げは断然かたくり粉派である。サクサクに仕上がるのだ!


以前から料理の付け合わせで出てくる事から、モーガジャの存在は知っていたが、その時はかたくり粉を作ろうとは思わなかった。


なのに何故、今頃作ろうと思ったのか……

そ・れ・は!

先日訪れたライス島で、白米やもち米を含めた、念願の食材を手に入れる事が出来たからだ!!


ライス島には近々また行きたいと思っている。あそこは私にとっての夢の島なのだ!!


「という事で……これからが本題なのだよ」

私はニヤリと笑った。

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