シャルロッテとミラとジップロッ〇と……

『お酒のために~』書籍発売記念!!

番外編ですー^^

作るのを忘れてた……という(゜ロ゜;


*********


「ミラ!!私、ジッ○ロックが欲しいのー!!」


ミラの部屋をバンと勢いよく開けた私は、何の脈略もなく一方的にそう言い放った。


「……は?ジップ……? 何それ。ていうか……突然、何なの?」

ポカンとしたミラがこちらを見ているが……気にしない!!

今日は絶対に、何が何でもミラにジップ○ックを作ってもらうのだー!


きっかけは、始めてリカルド様に貰った手紙……。

【アーカー】の特産のシーラの白い可愛い花が描かれていた便せんに書かれた、丁寧なのにちょっとクセのある綺麗な文字。

その便せんにはシーラの様に爽やかな、優しいリカルド様と同じ匂いが染み込んでいたのだ。

それを永久保存する為には、是が非でもジップロッ○が欲しいのだ!!

そう今すぐに!!匂いが失われてしまう前に……!!


……ということで、ミラの部屋に突撃した次第である。


「作ってもらえるまで、自分の部屋には帰らないから!!」

「……ちょっと待って。……そこの残念令嬢」

前髪をバッサリと切られたせいで、すっかり見えやすくなった赤い瞳が、呆れた様な視線を私に向けている。


「……ざ、残念令嬢!?」

『残念令嬢』とは酷い言い方だな!?

本当は『悪役令嬢』でしたが……何か?


「肩書きと見た目が、中身の性格に全く合っていないから『残念令嬢』。……ね?シャルロッテに合ってるでしょ?」

「…………うっ!」

反論できない時点で私の負けである。


しかーし!!今日の私には、勝ち負けなんてそんなことはどうでもいい!!

……ちょっとだけ心を抉られたけど、それよりも大事なことがある!

「ミラ!!!作って!!」

ズカズカと部屋の中に押し入った私は、そのままミラの座っている机の方に向かった。


「……取り敢えず、話だけ聞こうか」

私の鬼気迫るような雰囲気に負けたのか、ミラが『降参』とでも言うように両手を小さく上に上げた。



**


「へえー!それは面白いアイテムだね!」

説明を一通り聞き終えたミラは、赤い瞳をキラキラと輝かせている。


ふふーん。ミラなら絶対に食い付くと思ったんだよね!

だって『研究バカ』のミラだもん!


「でしょう?!……作れるかな?」

「作ろう!」

「材料はどうするの?透明な袋状の物を作るのに最適な魔石とか……ある?」

「うーん。ここはやっぱり『スライム』じゃない?」

「スライム?」

「うん。知らない?」


……勿論、知っている。

RPGの定番の雑魚キャラは、大抵スライムと言っても過言ではない。

最強なスライムに転生している人物は除く……。

私が答えに迷ったのは、ミラの言う『スライム』と私の知っている『スライム』が同じなのかが、そのそもそれが分からなかったからだ。


たが……!!材料なんてこの際なんでも良い!

ジップ○ックが出来れば素材なんてどうでも良いのだ!!



さっきまでは、そう思っていたのだが……。


「シャルー、そっちにもいるよー」


保護者おにいさま同伴で、スライムが生息しているという森に連れて来てもらった私は……早くも後悔していた。


「コ・レ・で、三匹目!!」

「そのまま、じゃんじゃん狩っちゃってよ!」

何故かノリノリで楽しそうなお兄様とミラ。

……二人の仲が良いのは何も問題ない。


問題があるとすれば私の方だ……。


私は心を無にして、目の前に現れためがけてナイフを突き刺した。


すると……『モォーキューーゥ』という妙にスローな悲鳴?音?を上げながら、スライムはデロリと溶け……その後には小さな魔石が残った。


ドラ○エの様な可愛らしいスライムを想像したそこのあなた!

間違っていますよ!?


この世界のスライムは……アメーバの様にデロデロでドロドロな可愛くない魔物でした。


ひいぃっ!!

目玉がギョロギョロしていて……禍々しすぎでしょ!!

こんなの想像していなかったよー……。

早くも心が折れそうになる。


……んーん!弱気になっちゃ駄目よ!シャルロッテ!

全てはジップロッ○の為……!リカルド様の為なのよ!!


私はキッと目の前のスライム達を睨み付けながら、ナイフをしっかりと握り締めた。



「ミラー。ねえ、もっと欲しいの……?」

「うん。まだまだ!」

キラキラとしたミラの瞳。


これは……魔石集めが目的に変わっていないかな?

『集められるだけ集めてしまおう』という魔道具バカの瞳に見える。


このスライムは、見た目の気持ち悪さとは裏腹に、一突きすれば倒せるほどに弱いから楽だけど……。

見た目が可愛すぎるスライムは……流石に倒せないかもしれないし。


でも……この単調な作業はそろそろ飽きてきた。


……そうだ!こんなにスライムがいるのだから……!!

私はとある事を思い付いた。


それは…………

『ジップロックになーーれ!!』である。


ええと……何を言っているのか分からない?


よし!それなら早速試してみよう!!


「ジップロックになーーれ!!」

私が右手を翳しながら言うと、射程範囲内にいたスライムが全て動きを止めた。


動きを止めたスライムは、一気にサラリとした液体に変化し……あっという間に、B5サイズの数十枚の袋状へと変化した。


しかし……

「……コレが、シャルロッテの作りたかった『ジッ◯ロック』なの?」

……違います。


「シャルは、随分と良い……趣味だね」

……だから、違うって!!


私は頭を抱えてうずくまった。


私が作りたかったのは、透明で模様の無いジップロッ◯だ。

決してこんな……アメーバ状の可愛くないスライムをメインにあしらった袋ではない!!


どうしてこうなった……!!

どうした?!私の万能チートさん!!


袋に触ると目が合って、ジップ部分を開けると『グヘヘッ』なんて笑う袋じゃないんだーーー!!!!


***


簡単に倒せるスライムはが強い為に、魔石にしてからじゃないとアメーバ感が残る事をミラが後日教えてくれた。


……私が生み出してしまった、アメーバ感が強くて開けると笑うジッ◯ロックは……

なんと!……完売しました。


えー……。

何でも、アメーバスライム(勝手に命名)のマニアックなファンがいるそうで、その人達が全て引き取ってくれました。はい。


在庫が無くなった事は嬉しいが……複雑だ。

再販して欲しいと要望があるのだそうだが…………私はもう作らないんだから!!




因みに、私の想像通りのジ◯プロックは、ミラとの一緒にきちんと完成した!


それにより、リカルド様からの手紙は無事に半永久的な保存が可能になりましたとさ。


ふふふ……幸せ。


私は手紙の入ったジップロックをギュッと抱き締めた。



終わり良ければ全て良し!!

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