スイートポテト➀

現在、冬真っ只中だが、米酒造りの為に出入りしていた厨房で、に出会った。


は、例によってパッと見では分からない色や形をしていたが、我が家のデザート担当の料理人ノブさんが丁寧に説明をしてくれた。


「イマサツモは蒸すとホクホクして美味しいですよ」

ですよねー!

私も大好き!皆も好きだよね!?


皮のまま良く洗って、濡らした新聞紙、ホイルの順番で包み、トースターで二十~三十分焼いたら…………簡単焼き芋の完成だ!


あー、久し振りに焼き芋が食べたくなった。


因みに、この世界ではサツマイモは『イマサツモ』という。

黄色いバナナの様な形状をしていて、何と皮がツルリと剥けるのだ。

茹でてもパサパサしたりせずに、しっとりネットリと濃厚な甘さを楽しめる……とノブさんが教えてくれた。



という事で、今日はスイートポテトを作ります。


え?何の脈略もない?

まあ、まあ、いつもの事じゃないですか(ニヤリ)


本日の私のパートナーはロッテ①です!

相変わらず、ロッテ達に作ってもらった純米酒を呑むと関係がギスギスしたり……泣き上戸になってしまったりと……不穏な物に仕上がってしまう。


こうしてロッテ達との時間を積極的に取って、どうにか事態の改善を図ろうとしているのだが……なかなか上手くいっていない。

お陰で、まだアーロンを起こしにも行けていない。

もう直ぐ冬休みが終わってしまうというのに……だ。


不穏な純米酒を飲ませたりして……何かあったら怖いので試す事も出来ない。

私だけは何故か純米酒を飲んでも何もならないのが不思議である。


そんなこんなで地道にロッテ達と交流を深めながら試行錯誤をしている。

これもその一環なのである。


……私の願望がメインになっていないか?

ソ、ソンナコトハアリマセンヨ?

ロッテは私と一緒にいられて、私はロッテ達のお陰で美味しい物が作れる。

winーwinですよ!?

(とにかく、私はどうしてもサツマイモが食べたいのだ!!)


「じゃあ、早速だけどスイートポテトを作りまーす!」

『ハーイ!』


まずは『イマサツモ』を適当な大きさに切って、ロッテ➀に入れて柔らかくします。


「ロッテお願いします!」

『了解シマシタ!』


元気に返事をしてくれたロッテがイモサツマをチンしてくれている間、私はロッテ①と話をしてみる事にした。


「ねえ……ロッテ➀?もっと普通に話せるんだよね?」

『……チョット言ワレテイル意味ガ分リマセン』

「ロッテ➁に聞いたんだけど」

『エ?』

「ロッテ①は私達みたいに滑らかな話し方が出来るって。ロッテ➁が凄い褒めてたよ?だから、私の前でも普通に話して欲しいな……って」

私は微笑みながら首を傾げた。


……因みにこれは引っかけだ。嘘である。

ロッテ➁は相変わらずロッテ①の話題になるとだんまりを決めてしまう。

なので、試しに夢で見た話題を振ってみた。

何もないのなら、ロッテ➀は反応しないはずだ。


チーン。

出来上がりの音が鳴った。


おっと……熱い内に裏ごししなければいけない。


私は一旦、ロッテ➀との会話を止めた。


ヘラを使って柔らかくなったイモサツマを裏ごしして行く。

イモサツマはサツマイモの様にネットリとした黄色をしている。


……これだけでも美味しそうだが。

次は鍋にバターと砂糖を入れ、滑らかになるまで弱火にかける。

滑らかになったら裏ごししたイモサツマと生クリーム。牛乳は大さじ一ずつ加え……そして、ここでメイ酒を加えるのだ!!

ドライフルーツをたっぷりと漬け込んだ、フルーツ成分がたっぷりと染み込んだメイ酒を加える事で、このスイートポテトは一気に私好みになる。

ふふふっ。

加熱するからアルコールは飛んでしまうが、香りは残るのだ!!



ある程度の堅さになったら、イモサツマを俵型に成形し、表面に卵黄を塗って……またロッテ①にお任せだ。

通常なら二百度で余熱したオーブンで十五分位焼くのだが、ロッテ①で作ればそんなに時間は掛からない。

スパダリだ!ロッテは私のスパダリだ……!!


「ロッテ①よろしくね?」

成形されたスイートポテトの乗った鉄板を入れ、ロッテ①を一撫でした。


さて。後は焼き上がりを待つばかりだけど……もう一品作ろうかな?


『ゴ主人様……』

「ん?どうしたの?」

大きく伸びをしていた私にロッテ①が話し掛けてきた。


『……ゴ主人様二トッテドンナ存在デスカ?』

「ロッテ①?」

私はロッテをジッと見つめた。

顔が無いから表情は分からないが、思い詰めた様に緊張しているだろう事は伝わってきた。


ならば……。

私はロッテ①にしっかりと向き合う事にした。


「私にとってロッテは……一番じゃない」

『……ッ』

ロッテ➀が息を飲んだのが分かったが、私はそのまま話を続けた。


「ごめんね。本当は一番だよって言ってあげられたら良いんだと思うけど、私はロッテ➀に嘘はつきたくない」

『……一番ハ誰デスカ?』

「一番はお兄様かな」

『……?リカルド様ジャナイノ?』

「うーん……実は迷ったんだよね。二番目がリカルド様かな」

私は苦笑いを浮かべた。


大好きなリカルド様。

一緒にいるとドキドキして、安心して……ああ、ずっと一緒にいたい。

会う度に気持ちが大きくなっている。

これは本当だ。だから早く結婚したいと思っている。

……本当はリカルド様が一番じゃないと駄目なのかもしれない。


しかし、私にとってのお兄様はなのだ。

決して恋愛感情ではないが。

……お兄様は記憶が戻ってからずっと私の味方だった人だ。

一緒に色んな事を乗り越えてきたかけがえのない肉親。

私は何度お兄様に助けられてきただろうか……?


「だから、ロッテ①は三番目」

『三番目……』

「うん。私、欲張りだから、お兄様とリカルド様以外はみんな三番目に大切。ロッテもお父様、お母様、双子にミラ、サイや金糸雀。この邸で働いている人達もみんな三番目に大切なの。みんなとずっと一緒に幸せに暮らしたい」


……こんな言葉をロッテ①は望んでいない。

だけど、私は自分の気持ちに真摯でいたい。そうありたいと思う。


『ロッテモ……ズット一緒……?』

「ロッテが私といるのが嫌って言うなら……」

『私ガ嫌ダッテ言ッタラ諦メルンダ……』

ボソッと呟いたロッテ①の声は小さくて私には聞き取れなかった。

でも……。

「一緒にいてくれるって言うまで説得する!!」

『へ……?』

驚いた様なロッテの声。


「だって、一緒にいたいもん」

『フフフッ……。ワガママナゴ主人様……』

ニッと笑いながら首を傾げると、釣られる様にロッテ①も笑った。


その時。

チーンと、タイミング良くスイートポテトが完成した音が鳴った。


スイートポテトを取り出そうと扉に手をかけると…………

「え?えー……!!?」

ロッテ①の本体が光り出し、あっという間に目映い光に包み込まれてしまった!


光が収まって直ぐにロッテ①に駆け寄り声を掛けた。

「ロッテ①……!!大丈夫!?」

『…………』

「ねえ?聞こえてる?」

呼び掛けてみても……返事がない。


まさか……壊れた……?

そんなの……嫌だ!!

「ロッテ➀!!」

『はぁーい』


へ……?

「ロッテ①……?」

『はぁい。なんですか?』

目の前からではなく……私の頭の上の方から声がする……?

ふと視線を上げると…………


「ええと……どなた?」

私はポカンと口を開けたまま首を傾げた。

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