実験

テレテッテッテッテッテー♪


シャルロッテの三分クッキングー!


ここに取り出しましたのは、我が家の厨房の万能オーブンの『ロッテ』ちゃんです。

因みに『ロッテニ号』は、私の部屋にいます。



「ロッテ、よろしくー!!」

『ハーイ、ゴ主人様ー!』


パカッとオーブンのドアを開けたら、そこへ一つの耐熱性の大きめなカップを入れます。

ドアを閉めて……待つこと三分。


チーン。

「ゴ主人様、出来マシタ」


ゴクリ……。

私はドキドキしながらドアを開けた。


中のカップを取り出すと……


ホカホカのご飯が炊き上がっていた。


やっぱりか……。

私は艶々の白米を見ながら溜め息を吐いた。


「ゴ主人様……ロッテ……間違エタ?」


おっと……いけない。


「んーん!ロッテは全然悪くないよ」

私はロッテを撫でた。


私が求めたものにならなかったのは、決してロッテのせいではないのだ。

寧ろ、カップに水と生米を入れただけで美味しそうなご飯が、たった三分で炊き上がったのだから、やっぱりロッテは凄い。

炊飯機能まで兼ね備えていたとは……。


私がロッテでしたかった事。

それは………。


『ロッテで米酒が作れないかなー』

なんてね。 テヘペロ。


やっぱり、そんなに簡単にはいかないよね。


『ゴ主人様……。モウ一回スル?』

シュンとしたロッテの声。

気を使わせてしまっている。


「ロッテ……」

……よし!

駄目で元々。失敗は成功のもとだ!


「もう一度やってみよう!」

『ハイ!!』

ロッテを撫でながら言うと、元気な返事が返ってきた。


『ヘェー……イイナ……』

ゾクリと背筋に寒気が走った。

『ズルイナー』

『ナデナデサレタイナー』

『ロッテバッカリダ……』

『ゴ主人様……』


厨房の入り口を振り返ると……

「……ひっ!」


お掃除魔道具のル◯バなロッテが、扉を少しだけ開けたその隙間から、五台ほど積み重なりながらこちらを見ていた。

……いつの間に。


『ネー、ゴ主人様遊ボウ』

『コッチノロッテト遊ボウ?』

『ネーネー』

バラけたル◯バなロッテが厨房の中に入り込み、私を取り囲む。


……可愛い。

可愛いんだけど、今の私には君達と遊んでいる時間はない。


「私は用事があるから、また今度ね?いつも邸を綺麗にしてくれてありがとう」

しゃがみながら、一台、一台に撫でながら声を掛ける。

すると、撫でられた事で気が済んだのか……


『エヘヘ、撫デラレチャッタ』

『イイコ、イイコダッテ!』

『アリガトー、ゴ主人様ー』

『ゴ主人様大好キ』

『オ仕事頑張ッテ!』

五台のル◯バな照れながら、厨房から出て行った。


う、うん……。

ご機嫌が直ったようで何よりです。


「さあ、気を取り直して続けようか!」

『ハーイ!』


先程は材料を入れた後は、ロッテに丸投げだったので、今度は少し説明をしてみようと思った。


私のチートさん=ロッテの様なものだから、理解をしてくれるはずだ。


材料は同じでお米と水だ。


ドアを開けて材料の入ったカップをさっきと同じ様に設置する。


「ロッテ、良い?私が作りたいのはお米で作ったお酒なの。さっきみたいなご飯じゃないよ」

『ハイ。ゴ飯ジャナイノデスネ』

「そう。偉いね。もっと液体でサラサラしてるの。お米の甘さが充分に出た……そんなお酒なの。分かる?」

『モット甘イ液体……オ酒デスネ?』

「そうそう。それを作ってくれる?」

『分カリマシタ』


簡単に米酒の説明をした後に、スタートボタンを押した。


***


三分後。


チーン。

出来上がりの音がした。


『今度ハドウデスカ?』

「うん……ちょっと待ってね……」

ドキドキしながらドアを開けると、フワッと甘そうな匂いがして来た。


成功か?!


カップを取り出すと、中には乳白色の液体が入っていた。

甘い匂いが何とも言えず心地好い。


これはもしかして……!

私は恐る恐るカップに口を付けた。


コクン。

口に広がるお米の優しい柔らかな甘味……。

ホロリと火照る頬。


これは……『甘酒』だ!!

度数は低い様だが、しっかりとアルコールを感じる事が出来る。ノンアルコールではない。

ロッテは米麹を作り出してくれたようだ。


……惜しい。実に惜しい。

しかし、これはこれでとても美味しいからOKだ。

酒粕で作る甘酒よりもクセが少ないし、砂糖を使ってないから、飲み過ぎなければ血行が良くなってお肌がツルツルになる。

甘酒は『飲む点滴』と言われるほどに栄養満点なのだ。

そこに酒成分が含まれてるなんて……!!


「ロッテ、偉い!!」

私はギュッとロッテを抱き締めた。

『ゴ、ゴ主人様?』

「私が作りたいのはコレじゃないけど、コレも凄く良い!!」


米酒に辿り着くのも後一歩だ!!



喜ぶ私の背筋がまたゾクリとなった。

また?!


『ヘェー……ギュットサレテルー』

入り口にはまた……ル◯バなロッテが隙間から中を覗く為に積み重なっていた。


『ズルイナー』

『サッキハナデナデサレテタラシイヨ?』

『マジデ?ロッテバッカリ……』

『ゴ主人様……』


ル◯バなロッテ達の話によると、さっきとはまた別な子達の様だった。


…………おう。

また私を取り囲むル◯バなロッテ達。


「ごめん、ごめん。いつもありがとうね。すっごーく感謝してるよ」

そう言いながら一台、一台を抱き締めた。


『エヘヘヘヘッ』

すると、この子達もまた照れながら厨房を出て行った。


これ……後、何回続くのだろう?

私は苦笑いを浮かべながら、こっそりと溜め息を吐いた。


可愛い。可愛いのだが……愛が重い。


『……ゴ主人様。作業ヲ続ケマスカ?』


良く見てると、ロッテ達にはそれぞれ個性があるのが見えて来る。


厨房にいるロッテ一号は、おっとりしていて気遣いの出来る優しくて可愛い子で、ル◯バなロッテ達は、まるで子供の様に幼くて可愛いらしい。


そして、ロッテ二号は……

『話ハ全テ聞カセテモラッタ!!』


そう。とても活発で行動力のある可愛い子だ。

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