ダンジョン①の1
そんなこんなで…お父様達【リア】のメンバーを先頭にしてダンジョン調査チームは地下をどんどん進んで行きます。
地下三階は猿飢の進化系である【
【猿紅】は三メートル位の大きな二足歩行の大猿の様な出で立ちだった。
猿飢の様に仲間を呼び寄せるのは勿論の事、顔が真っ赤に染まると、超音波系の咆哮を上げる。これは鼓膜を直撃して、敵の行動を不能にする厄介な物だ。
【雨血】は、二メートル弱の鳳凰にも似た巨大鳥だった。
真っ赤な体は炎を連想させる。雨黒の攻撃である尖端の鋭い羽の雨を、更に炎を纏わせた状態で行う。
羽には毒が含まれており、少しかすっただけでも地獄の業火の如く苦痛を与えるのだ。
この世界の魔物は進化すると赤くなるのだろうか…?
と、素朴な疑問を持ちつつ…。
お父様達は進化した魔物に臆する事無くサクサク倒して行った。
あれ?確か、進化前である猿飢に手こずったって聞いたのに猿紅は余裕なの??
お兄様へ疑問を投げ掛けてみれば、原因は、猿飢が稀に落とすという魔石のせいだったそうだ。
【リア】は、ダンジョンの攻略や調査の合間に、こなせそうな依頼を全て引き受けて潜っているらしい。
その中に猿飢の落とす魔石が依頼にあり、集められるだけ集めようと、数を増やしに増やしての討伐となった為、なかなか大変だったそうだ。
つまり、欲張ったから辛くなった…と。
自業自得…。
魔石を集める必要が無くなったから、皆さん 無双状態なんですね。
私は出る幕も無く、ただ後ろに控えてました。
そして、現在。
地下五階は一面の草原でした。
勿論、ダンジョンの中に普通の草花は咲かない。
食虫植物として有名なハエトリソウやネペントス。あれに似た植物が二メートル位に超巨大化して生えている。
巨大化したあれは立派な人喰い植物の魔物だ。
個体別に名称は無く、【キラープラント】と一括して呼ばれる。
近付いて来た獲物をパクっと呑み込み、体内で、じっくりと消化液で溶かして吸収する。種マシンガン的な激しい攻撃も仕掛けてくるらしい。
キラープラントに攻撃をすると、まず分裂する。そして、根っ子が変化する。根っ子は自らの命を守る為に動ける様に脚を作り出す。
キラープラントが追い掛ける姿は…昔のレトロゲームにあったアレに良く似ている。
これ以上増える前に、さっさと焼き払っちゃえば良いのに。
因みに…私とお兄様、クリス様は先頭から少し離れた所で、私の張った結界の中に控えてます。私の護衛だそうだ。
クリス様は要らないのに…。
お父様達は、さっきから無駄に攻撃している様に見える。
キラープラントを増やして、また魔石を集めるつもりなのだろうか。
…このままだと草原が
ジワジワと、確実にキラープラントは増えている。
「お兄様。これ以上キラープラントを増やすのは得策ではないかと。超高温の炎の魔術で焼き払ってしまう方が良いと思いますが、どうでしょう?」
私の直ぐ近くに居るお兄様やクリス様に提案すると、二人からは何故か《完璧な笑顔》を返された。
あれ?
何か…引いてませんか?
「…シャルロッテ嬢は過激になったな。」
「お転婆過ぎて困ってるよ。」
「まあ…うん。元気なのは良い事だ。」
「見ていて面白いから、僕の目の届く範囲でなら良いんだけどね。」
こら!
私が目の前にいるのにヒソヒソするな!!
悪口か!悪口だな!?
「…お兄様?」
貴方達には言われたくありませんよ?
微笑みを浮かべたままえげつない魔術をバンバン使うお兄様と、魔法剣を用い無表情でズバズバと魔物を切り裂くキラキラな王子様。貴方達二人には。
「まあ、ここら辺が引き際だろうね。父様達も分かってるだろうけど…怪しいな。ちょっと行って来る。シャルはここを動かないでね?」
お兄様は結界を抜け、先頭集団の方へ走って行く。
「お、お兄様!?」
ちょっ…!
お兄様が行っちゃったらクリス様と二人になっちゃうじゃないか!
先頭から少しだけ離れている私の達は、二人切りになってしまう。
何か話さないと駄目だろうか?嫌だな…。
「………。」
沈黙が気まずい。
そう思っていると、クリス様の方から私に話し掛けて来た。
「シャルロッテ嬢は…公爵令嬢なのに、これからもダンジョンの調査を続けるのか?」
「…いけませんか?」
『女なのに。』『女の子なんだから。』
そう来るのか?
私は静かに戦闘態勢に入る。
私が調査チームに参加しているのを快く思わない人達がいるのは知っている。
主に、私の王太子妃推奨派の皆様とか。
「悪くはない。理由が知りたいだけだ。幼い頃のシャルロッテ嬢は…その、怖がりだったからな。」
…あれ?止めないの?
【王子様】な、クリス様は女子に戦わせる事を良しとは思って無かった筈だけど。
ゲームの中では、戦わざるを得ない彼方に対して、自分の不甲斐なさを悔やんでいるシーンもあった。
「幼子とは怖がりなものだと思います。」
本当は今だって怖がりだ。
ただ、幼い子供の様に漠然とした物や良く分からない何かを怖がってるいる訳ではない。
「私が調査チームに入ったのは、私の叶えたい望みの為です。それが何かはクリス様でも教える事は出来ませんが…。」
大事な人達を亡くす事が、何よりも一番怖い。理由が分かっているのだから、行動しないという選択肢は無い。
「それは魔物に襲われると言う危険を侵しても成し遂げたいのか?」
「はい。何がなんでも成し遂げたい。そんな望みです。」
その為なら命だって掛ける。せっかく生まれ変わったのだから、絶対に無駄にはしないけどね。
「私は君を助ける事が出来るだろうか?」
はい!?
そ、そんなのは要らない!!
全力で拒否しますよ?!
「…い、いえ。私が自分で頑張らないといけませんから。」
「そうか…。」
シュンと肩を落とすクリス様。
クリス様が悲しそうなゴールデンレトリーバーに見えるぞ。
再会の時の事といい…クリス様ってこんな人だったっけ?
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