まさかの①
(どうしてこうなった!!)
私は心の中で叫んだ。
私の目の前には、この国の王太子であり、従兄弟でもある【クリストファー・ヘヴン】がいる。
現在、一番会いたくない攻略対象者が現れたのだ。
それは叫びたくもなるってものだよ!?
どうしてこんな事になったのか…ちょっと遡ってみよう。
私は遠い目をした。
******
あの日。
泣きながらルーカスお兄様にカミングアウトした日から、約一ヶ月が経った。
お兄様は約束通りお父様に掛け合ってくれ、ダンジョン調査チームの一員として参加を認めて貰う事になったのだ。
あの時、お父様の顔が引き釣った顔で私を見ていたのは何故だろう…?
お兄様…何を言ったの!?
ま、まあ。参加出来る様になったのだから、良しとしよう。深く考え無い方が身の為な気がする。
当初の予見通りに、調査はギルドを通して行う事となり、調査チームのメンバーはお父様とお兄様を中心とした腕自慢な皆様。そこには執事のマイケルもいた。
老齢のマイケルはゲームの中では、そんなに強くなかった筈だった様な…。片目を失うという瀕死の重症を負ってたし。
否、待て。凶暴化した魔物三体を相手にしての事なのだから…もしかして普通に強いのかも…?
だから、お父様はシャルロッテをマイケルに任せたの?
意外な人が強かったという事実に多少の動揺をするものの…
強いに越したことは無い!
ポジティブに行こう!!と誤魔化す私。
私の言う《ポジティブ》は『誤魔化し』や『先延ばし』という意味だった事にあの日気付かされた。
それでも…自分を励ます為にも使う事にしている。
何度も繰り返せば『叶う』そんな意味も込めて。
そんなお父様のパーティー【リア】を中心にダンジョンを調査&攻略しちゃいます!
それにしても【リア】って…それお母さんの愛称じゃ…?
まあ、相変わらずのラブラブで結構な事です。
両親は仲が良いのが平和だよね。
【リア】はあの日から一週間後。裏山にある未発掘のダンジョンを発見した。
ダンジョンの入口は、それがあると分からなければ見付けられない様な、ウサギの巣穴の様な形だったらしい。
それを慎重に拡げてみれば、地底へ向かう階段が現れたそうだ。
そこから、地下一階、地下二階と時間を掛け調査を行った。
地下一階は【猿飢】の巣だったらしい。
猫位の大きさで、猿の様な顔。筋ばった細い手足を持った四足歩行の魔物。一体、一体は弱いものの、沢山の仲間を呼び寄せるという厄介な魔物。
それにはやはりお父様達でさえ殲滅させるのに手を焼いたと、お兄様が教えてくれた。
そして、地下二階には
雨黒は雨の様に自らの羽を降らせる魔物だ。
羽の先は鋭利に尖っていて、自分らの敵を容赦無く突き刺す。
数は猿飢よりも断然少なかった為、余裕で殲滅したらしい。
お父様達凄い。雨黒は猿飢よりも強いレベルだった筈。
階が下がれば下がる程、魔物のレベルが上がるらしい。
地下一階に猿飢が居ただけでも厄介なのに…。
お父様達の見立てでは、地下10階位のダンジョンだろうと言う事だった。
因みに、この世界のダンジョンは攻略すれば、魔物は出て来なくなる仕様。
なので、私とお兄様の目的の為には必ず攻略しなければならない。
そして、攻略すればスタンピードは起こらない…筈。
ここまで、私が『らしい』と言う説明の仕方なのは、勿論、ダンジョンには潜っていないからである…。
出来たてのダンジョンが未知過ぎて、初心者の私を参加させるのは得策では無いと、お父様達が判断したからだ。
お父様達ベテラン勢が決定した事は絶対だ。
なので、私はこの約一ヶ月の間。
ギルドに登録をし、簡単な依頼やダンジョンの基礎知識の勉強。お兄様から魔術の実践実技の研修等を受け続けていた。
そして、やっとお父様達から『参加して良い』とお墨付きを貰えた。
なのに!
調査チームの新メンバーとしてクリストファー殿下が参加する事となったのだ。
何故だ…。
王太子殿下はちゃんと安全な所に隠しておきなさいよ!
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