最終話「再会の宴」
それから一ヶ月がたった。
都に一隻の豪華客船が到着した。
その船を出迎える集団の中には、ステファンや忍者たち、松五郎、それにアキや秋然の顔もあった。
「バルアチアの豪華客船が入港したぞ」
港でやじ馬たちも口々に噂をしていた。
船の入り口がゆっくりあいた。
そこにかけられた階段を乗客たちがゆっくりおりてきた。
初めに降りてきたのは、ステファンの父と母だった。
「ステファン、立派になったわね」
母はその場で泣きくずれた。ステファンも両親にしっかり抱きついた。
次に降りてきたのは、エミーラと愛犬のデュークだった。
「お兄ちゃん、アキさん、みんな!!!」
エミーラは涙を流しながらステファンに抱きついた。隣でアキも涙ぐんでいる。
「よく頑張ったな、エミーラ」
「お兄ちゃんこそ」
その横でデュークとムサシがにらみあっていた。
「お兄ちゃんの活躍、聞いたわよ」
「えっ、だれに聞いたんだい?」
エミーラは泣きながら次に降りてくる人物を指さした。
その人物は執事のアレンにつきそわれ、杖をつきながらゆっくり降りてきた。
「年寄りにはこの階段はきついよ」
そう言ったのは顔にしわが多く刻まれた『老婆』だった。
忍者たちは、もしかして、とつぶやきあった。
そしてだれかがさけんだ。
「長老!」
忍者たちは一斉かけよった。
老婆はゆっくりほほえんだ。
「よくわかったね。このすっぴん姿で」
「あんたはそのほうがべっぴんだよ」
「はっはっは、ベンさんのおべんちゃらは、年寄りにならうけるね」
そこへなぜかステファンの父が驚いた顔でやってきた。
「べ、ベンジャミン・コロンバイン博士じゃないですか!?」
「ほぅ、懐かしい名前を知っておるの、おぉ、おぬしはウォール君か!?」
「ええ、ご無沙汰しております」
横でマックスが目をまるくしている。
「え、え、え、え、えぇ! じじいがあの学会の異端児ベンジャミン・コロンバイン博士!?」
「そうじゃよ。通称は、さすらいのベンさんじゃ」
「ど、どおりであの増幅器をパワーアップさせられたわけだ」
「そうじゃ、ウォール君、あの増幅器の構造はな……」
増幅器の話でベンとステファンの父が盛り上がっていると、マックスの横にエミーラがやってきた。
「マックス!」
マックスがふりむいた。
「よっ! エミーラ」
するとエミーラはマックスに抱きついた。
「おいおい」
「マックス、ごめんね、あのとき私を助けてくれたから」
「いいんだって。おかげで面白いやつらに出会えて、面白い冒険をさせてもらったからさ」
松五郎が大声でさけんだ。
「さあ、さあ、皆さん、阿修羅城で宴の準備をしていますから、そちらでゆっくり積もる話をしましょう」
こうして、阿修羅城では盛大な宴がおこなわれた。
各々が思い出話に花を咲かせ、笑い、泣き、うたった。
そして夜になり、阿修羅城の庭に用意された舞台に上がったのは、エミーラだった。
白い衣装を身にまとい、観衆にお辞儀をすると、割れんばかりの拍手がわいた。
そしてエミーラはゆっくり手をあげて踊りはじめた。
空には大きな満月が皆を祝福するかのようにやさしく輝いていた。
(終)
青い目の忍者ステファン~和ノ国冒険譚~ いち こうさく @1kousaku
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