26「魔法を見せてくれたから」アイリン
「未分類魔法に、可能性?」
クラリーちゃんはわたしを見て優しく微笑んでくれている。
未分類魔法には可能性がある。確かに、前にわたしが言ったけど……。
「普通の、医療系の魔法ではマナ欠乏症を治す方法は見付からなかった。だけど未分類魔法なら可能性があるかもしれない。……そう思えるような、常識をひっくり返す、すごい魔法をアイリンが見せてくれたから」
マナ欠乏症を治す可能性が、未分類魔法に……。
わたしの魔法を見て、クラリーちゃんがそう思ってくれた?
「……そうね、クラリーがそう思うのもわかるわ。アイリン、前にも言ったけどあなたの魔法はそれほどすごいのよ。勝手に発表しちゃおうって思っちゃうくらいにね。……しないであげるけど」
「そうだねー。ボクも実際に使わせてもらったけど、あれはすごいよ! 遺跡探索で使いたいって思った! 早く完成させてよアイちゃん!」
「サキちゃん、チルちゃんも……」
サキちゃんはしょうがないなって顔で笑って、チルちゃんは楽しそうな顔で笑っている。
そしてクラリーちゃんの方を向くと、真っ直ぐ目が合った。クラリーちゃんはもう一度、さっきと同じように優しく微笑んでくれる。
「アイリン。私ね、この未分類魔法クラフト部に入るって決めた時、自分の病気を治す可能性をここで探そうって思ったんだ。それが今の、私の目標の一つだよ」
「クラリーちゃんっ……!!」
「うわっと」
わたしは思わず立ち上がって、クラリーちゃんに抱きついた。
嬉しい。そんな風に思ってくれたのが、とても嬉しいっ。
「よかった、クラリー……。マナ欠乏症に対して、前向きになってくれたんだね」
「ナナシュ……えっと、私そんなに後ろ向きだった?」
「うん。少なくとも、将来に関しては……ね」
「……そっか。ごめん、そうだった」
「アイリンさんの魔法がクラリーを変えてくれたんだね。常識をひっくり返すって、いったいどんな魔法なんですか?」
「うん! 遠くの、離れた人と会話できる魔法だよ!」
「遠くの人とですか……それは……えっ?」
あれ?
しん、と静まり返る部室。
クラリーちゃん、サキちゃん、それにチルちゃんまで、じとーっとわたしのことを見ている。……それに気が付いて、わたしの顔から血の気が引いた。
「あっ……ああああ!」
「アイリン……」
「この子は……。勝手に発表するまでもなく、いつか自分でバラしちゃいそうよね」
「アイちゃん無防備過ぎだね! ダメだよ、探検家は情報の扱いも大事なんだから」
「うっ、う、ううう……」
がくっ。思わずその場に崩れ落ちる。
どうしてわたしは、こんなにうっかりしているんだろう!
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