第72話 前回優勝者
「さて次は、遂に前武道祭優勝者、シオン選手が登場です! 対するは同じく三学年、大剣を手足のように軽々と振り回すマルコット選手!」
大歓声の中、前回優勝者のシオン先輩が闘技場に登場した。
シオン先輩は茶髪で細身のイケメンであった。クラスで人気のあるスポーツ万能のサッカー少年のようなリア充オーラが半端ない。
爽やかな笑みを浮かべ周りに手を振るシオン先輩。
装備は手甲を両手に装備しており、腰にはチャクラムがいくつかぶら下がっていた。
対するは大柄で筋肉質なマルコット先輩。無骨な大剣を背負っている。
「マルコット、よろしく頼む」
「シオン、本気で行くからな!」
二人は仲よさげに握手を躱し、定位置に着く。
「それでは試合開始!!」
無手で構えを取るシオン先輩と大剣を抜き放つマルコット先輩。
しばらく睨み合った後、マルコット先輩が地を蹴りシオン先輩に斬りかかった。
「『
マルコット先輩の剣がブレはじめ、そのままシオン先輩に斬りかかった。
シオン先輩は片手を添えて、攻撃を受け流し回避した。
マルコット先輩の剣の軌道が逸らされて地面に突き刺さる。
地面には二本の剣跡が刻まれていた。
『闘気』か……恐らく、片方は気力により具現化された刃なのだろう。
攻撃を片方防いでも二撃目で当てることができる。単純だが、力が拮抗している場合はその差が勝敗を分けそうだ。
その後もマルコット先輩はまるで細剣でも振っているかの如く高速で剣撃を放っていく。
シオン先輩はやはりその剣撃に片手を添えてひらりと躱し続ける。
いや、
シオン先輩が手を添えると、マルコット先輩の剣が明らかに物理法則を無視した軌道で逸らされるのだ。
「相変わらず全く当たる気がしねぇな! 一回くらい当たってくれてもいいんだぜェ!?」
「ふふっ! こんな攻撃、一度でも当たったら一溜りも無いじゃないか!」
高速の連撃を放ち続けているマルコット先輩は、流石に疲労が見え始める。
流石にあれだけでかい大剣をあの速さで振っていたら疲れるだろう。
そして遂に闘気の発動が厳しくなってきたのか、『
「待っていたよ!!」
シオン先輩は今まで添えて受け流すだけであった右手を、勢いよく剣の側面に突き出した。
すると大剣がマルコット先輩の手から弾き飛ばされ、高速で回転しながら宙に舞った。
シオン先輩はすぐさまマルコット先輩の懐に入り込み、腹部に掌底を叩き込む。
「ガッハァ!!」
マルコット先輩は螺旋を描きながら吹き飛び、障壁に叩きつけられて退場させられた。
「勝者、シオン選手! やはり、やはり前回優勝者!! 大剣のプロフェッショナル、マルコット選手の攻撃を掠りもせずに完封してしまいました!! 強すぎます!!」
……底が見えないな。
この試合、シオン先輩はほとんど力を使わずに勝ってしまった。
強いということは分かるのだが、何が強いのかが分からない。
流石、二学年で武道祭に優勝した人だけあるな。
◆
「次の試合は二学年最優秀者、氷の女王クリステル選手! そして三学年、ゴーレムマスターウェイン選手です! 上級魔術師同士の勝負、一体どうなるのでしょうか!」
「よろしくお願いいたしますわ」
「よろしく頼む」
水色の長髪をたなびかせるクリステル先輩は、魔石の埋め込まれた指輪をいくつか装備していた。
大してウェイン先輩はかなりごつい長杖を装備している。
「では、試合開始!」
「『クリエイトゴーレム』」
「『
ウェイン先輩が杖で地面をトンッと叩くと、地面から五体のゴーレムが湧き上がってきた。
それぞれが大剣、剣盾、大鎌、槍、弓を装備しており、騎士のような出で立ちである。
その発動を見たクリステル先輩は『
更にそれぞれのゴーレムとウェイン先輩に向け氷の槍を無数に放つ。
「ッ!?『
ウェイン先輩は咄嗟に炎障壁を発動し、自らに飛来する氷の槍を防ぐ。
しかしゴーレム達は足を地面に凍りつけられているため避けられず、もろに食らっていた。
氷の槍が突き刺さった箇所から凍結化が進み、あっという間にゴーレム達は氷の中に封じ込められてしまった。
「くっ! 『
「『
ウェイン先輩が放った『
本来『
「『
「『
クリステル先輩はウェイン先輩の周囲を高速で移動しつつ、全方位から『
ウェイン先輩は『
障壁が解けると同時に氷の槍が様々な方向から突き刺さり、ウェイン先輩は闘技場から退場させられた。
「勝者、クリステル選手!! 氷の女王が初手でゴーレムを封じ込め、魔術師とは思えない動きで完封しました! これはもしかして、またもや二学年から優勝者が出てもおかしくないでしょう!」
精神力、魔力、そして『
この人も全然底が見えないぞ……
これから戦う相手の強さをひしひしと感じ、手に汗を握りしめた。
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