第47話 精算
眼の前にはまた、大きな扉があった。
そう、十階層からサクサクと下り、今二十階層へのボス部屋が眼の前にあった。
正直十階層以降の魔物もそんなに強くはなっておらず、大した労力もなく二十階層まで到達していた。
ゴブリンリーダーをはじめとするゴブリン系はうようよおり、他にはウルフ系やスネーク系の獣系の魔物が増えてきたように思う。
まぁ珍しい魔物もそういないよなと思いつつ、軽くボス部屋の扉を開く。
そこには多数のウルフと、ウルフより一回り体格が大きい三匹のヘルハウンドがいた。
また森によくいる奴らかと、真新しい魔物が出ないことに残念な気持ちをいだきつつ、『
魔核を回収し、階段から二十階層に降り立つ。
十階層より人は少なく、まばらに休憩しているパーティが見えた。
冒険者たちの視線が一瞬シリウスに刺さる。
全く気にせずに端に座って水分補給をすると、不思議な空気が漂いつつも視線は散っていった。
それにしても、時計がない上に太陽も見えないから、どの程度潜っていたのか分からないな。
水分と塩分を補給するため、チビチビと水と共にジャーキーを食べているため、腹時計もよく分からない。
このまま無限に潜っていられそうではあるが、体感的にはそろそろ夕方くらいであろうか。
服も大分埃っぽくなってきているため、風呂にも入りたい。そろそろ帰ろう。
そう思い、迷宮転移盤に目をやる。
使い方が分からないため、他の人が使っているところを観察する。
転移盤の横には魔石が置かれた台座があり、そこにギルドカードをかざすと、転移の魔術が発動するようだ。
利用者の列が途切れたところを見計らい、転移盤の上に立つ。
おずおずとギルドカードを魔石にかざすと足元から魔力が放たれ、気づいたら迷宮の外、受付裏の転移盤の上に転移していた。
転移盤の横には、暇そうにしている兵士が一人立っていた。
「……あ?」
「あ」
迷宮に入る時に受付をしてくれたお兄さんであった。
「坊主!! お前さん、もしかして十階層まで行ったのか!? 危ないじゃないか!! 無事に戻ってきてよかった……」
鬼気迫った表情でお兄さんに迫られ、ガクガクと肩を揺すられる。
本当は二十階層まで行ったが、そんなことを言える雰囲気ではとてもなかった。
「あ、あ、の、だ、い、じょ、う、ぶ、で、す、か、ら」
「お前なぁ…… 運良く無事に戻ってこれたからよかったものの、命あっての物種だからな。ほんと無茶すんなよ?」
「わ、分かりました…… ご心配をおかけして、すいません」
とりあえず素直に謝っておく。
「はぁ、まぁとりあえず、今日は帰ってゆっくり休めよ」
「はい、ありがとうございます」
その足で冒険者ギルドに戻ってくる。
「あ、シリウス君! お疲れ様。どうだった? 初迷宮は」
「楽しかったですよ。あまり潜れませんでしたけど。報酬を受け取りにきました」
受付嬢のセリアさんにギルドカードを渡す。
ギルドカードに記録された情報により、成果報酬が貰えるらしい。
「まぁ最初は手慣らしみたいなものよ。まぁ初日は一、二階層で様子見して、シリウス君なら数日の内に十階層くらいまでは余裕で行けそうよね」
「あ、あはは……」
迷宮探索ってそんな感じなのか? 初日で二十階層まで行ったとか、言わないほうがよさそうだ……
「えーっと今回の報酬は…… ん? おっかしいなぁー…… 基準価格は変わってないわよね? あれ……」
セリアさんがゴソゴソと資料とギルド石の情報を照らし合わせている。
なんか、嫌な予感が……
「えっ!!? ちょっとシリウス君!! あなた今日、一体何階層までいったの!??」
「えーっと…… 何階層だったかなぁ、あはは……」
鬼気迫るセリアさんに正直に答えられず、思わず目を逸らす。
「はぁ…… ギルド側ではね、冒険者が何階層まで進んだのか今日何を討伐したのかをギルド石で見れるの。誤魔化しても無駄よ。シリウス君、今日だけで二十階層まで行っちゃったの?」
「ま、まずかったですか?」
「そんな平然としちゃって…… 普通、二十階層っていうと、Cランクパーティがなんとか突破できるようなレベルなの。Dランク冒険者がソロで行くようなところじゃないのよ。 ……まぁ六歳でゴブリンロードをソロ討伐しているような子だから、これくらい当たり前なのかもしれないけど…… あまり無茶しちゃダメよ?」
「すいません、ありがとうございます」
うーん、やはり子どもだからか、皆に心配をかけてばかりだな。
冒険者ランクがもう少し上がれば、そういうのも減りそうなもんだけど。
「あのー…… ちなみに、次の冒険者ランクへの昇格にはどれくらいかかるものなんですかね?」
「大体DランクからCランクの昇格には早くて一年程度かかるものよ。Cランクは依頼達成と魔物討伐によるギルドポイントのみで判定されるからね。シリウス君の魔物討伐数が多いと言っても、Cランクに上がるのはまだ…… まだ…… あれ!!? 昇格までもう少しじゃない!? え…… 何この魔物討伐数……」
あー…… 素材を回収してない下位の魔物を合わせると、結構な数討伐したからなぁ。
普段の森での狩猟も合わせたら、この街に来てからも結構な数の魔物を討伐しているかも知れない。
しかし、それが全てポイントとして記録されるギルドカードって凄いな…… 一体どういう仕組になっているんだろう。
「シリウス君あなた…… はぁ。もう
「あ、あはは……」
セリアさんからの冷たい視線に、苦笑いすることしかできなかった。
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