第44話 パーティ

 ゼリー状の魔物が炎に包まれて蒸発する。


 迷宮に入り、現在二階層を探索していた。

 出てくる魔物は今蒸発したスライム、そしてお馴染みゴブリン、後はビッグバットというコウモリのような魔物、ラッタルというネズミの魔物、そんなところだ。

 スライムは魔核を採取するためには魔術で倒さなくてはいけない面倒な魔物だが、あとは下級冒険者でも倒せるような弱い魔物ばかりだ。


 マップを見ながら次の階層への階段へまっすぐ進んでいるが、あまり上層で時間を潰すのは効率が良くないと感じる。


「うーん、迷宮の感じも分かってきたし、少し飛ばすか」


 馬鹿正直に出会った魔物を全て倒して魔核を回収していたが、時は金なりだ。低級の魔物は放っておこう。


 下層への階段へまっすぐ走り、出会った魔物はすれ違いざまに切り伏せていく。

 迷宮であれば魔物の死体は迷宮に吸収されるか、運良く迷宮に吸収される前に下級冒険者が見つければ魔核を回収して収入とするから、放置しても問題ない。


 そうこうしている内に、九層まで来たのだが…… 十層への階段がある部屋に、ほんのりと発光した大きな扉があった。

 今までは完全に普通の洞窟という感じだったのだが、ここに来て人工的な扉だ。不思議だ。


 扉の前には四人組の冒険者パーティが座って休憩していた。

 冒険者パーティは僕に気づくと、驚いた表情をしていたが、その中の一人が少し怒ったような顔をしてこちらに近づいてきた。


「君、こんなところで何をしているの?」


「えっ!? えっと、冒険者ギルドの依頼を受け、迷宮の魔物討伐を行っています」


「君、一人なの? 君みたいな小さな子が一人でこんなところまで来て、危ないわよ!!」


 どうやら子ども一人でこんなところに来たことに心配してくれているようだ。

 他のメンバーを見ると、困ったような表情をしつつも彼女を止めることはなかった。


「うーんと…… 僕、これでも一応Dランクなので、この階層の魔物程度なら一人でも問題なく討伐することができるんです。なので、ご心配することはありませんよ」


 彼女を安心させるためにギルドカードを提示する。いつも狩っている魔物と比べても弱い魔物ばかりなので、Dランクと言えば問題ないだろう。


「えっ!! Dランク!? 私達と同じなの!? ……でもあなた、この先にも行こうとしてたわよね。階層ボス部屋って知っててここまで来たの?」


「なるほど、ここはボス部屋だったんですね。十階層ごとにボス部屋があるんですか?」


「そうよ。ここのボスは、私達Dランクパーティ四人でやっとギリギリ推奨レベルに達するような魔物なの、君一人じゃ危なすぎるわ」


 なるほど…… それは心配するのも仕方ないかも知れない。

 しかし、ここまで来て引き返すのもありえない。

 時短のために、最低でも次来る時は十階層の迷宮転移盤を使いたい。

 ここで誤魔化して帰る振りをして後で戻ってくるのも可能ではあるが…… あまり無駄に嘘をつきたくはない。


「うーん…… でも、次来るときには十階層の迷宮転移盤を使いたいんです。正直、ここまでの魔物の強さから考えるとボスも普通に倒せると思うので……」


 予想外の返しだったのか、驚きの表情を浮かべる女の子。

 見かねたのか、戦士風の男の人がこちらに近づいてきた。


「俺はこのパーティ『ウルフファング』のリーダー、ウルフだ。この世話焼きのがエイミーだ。落ち着け、エイミー。心配なのは分かるが、この子も運良くだとしても一応ここまで下りてくる技量はあるってことだ。あまり舐めてやるな」


「ウルフさん、エイミーさん、ご心配おかけして申し訳ありません。僕は、シリウスと言います」


「シリウス、エイミーはお節介だが、まぁ言ってることは間違っていない。言っちゃ悪いがまだガキのお前が階層ボスに一人で突っ込むってんだ、善良な冒険者なら誰でも止めるぞ」


「そう…… ですよね…… 言いたいことは分かります……」


「だが、お前はどーせ止めたって行く感じだろ? それなら、せめて俺達と一緒にボス部屋に入らないか? 俺達もそんなに余裕はないが、お前一人で行かせるよりは行く分かは安心できるし、戦力になってくれたら勿論素材の分前は渡す。どうだ?」


 この人、とてもできた人だな。

 子どもである僕を守ってくれる優しさを持つ上に、相手を落とさないように冒険者として扱ってくれる気遣い。

 この人は信頼できそうだ。


「お気遣い、ありがとうございます。改めてこちらから同行をお願いしてもよろしいでしょうか?」


「あぁ、構わぇよ! エイミーやお前らもそれでいいだろ?」


「えぇ、それで良いわ。シリウス君、よろしくね。危なくなったらすぐに私達の後ろに下がるのよ?」

「俺も構わないぜ~」

「問題ない」


「皆さん、よろしくお願いします」


 他のパーティメンバーにもペコリと頭を下げる。


「あぁ、改めて俺らの紹介をしておくぞ。俺がリーダーで剣士のウルフだ」

「同じく剣士のエイミーよ」

「斥候士のファングだ」

「魔術師のマイル」


「僕は、えーっと…… 魔剣士?のシリウスです。改めてよろしくお願いします」


「魔剣士? なんだそりゃ」


「なんと言えばいいのか分からなくて…… 一応、魔術と剣術を両方使って戦うので。魔術師であり剣士でもあるって感じです」


「へぇ、魔術と剣術両方使うって珍しいな」


「大体、魔力を持っている人は魔術師になって剣なんて使わないものね」


 そんな話をしていると、淡く光っていた扉の光が消えた。


「よし、前のパーティが終わったみたいだな。皆行くぞ! シリウスも、準備いいな?」


「はい! いつでも大丈夫です!」


 パーティメンバーも皆頷く。それを確認したウルフさんが大きな扉を開き、ボス部屋に足を踏み入れた。

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