第21話 瞬雷
雷鳴が響き渡ると同時に、裏山から凄まじい魔力を感知した。
恐らくゴブリンマジシャンの結界が壊れ、今まで隠蔽されていたゴブリンキングの魔力が解き放たれたのだろう。
今、僕らは村外れの広場に避難していた。
「シリウスくん……」
ララちゃんが心配そうな目でこちらを見ている。
父さん達が厳しい戦場にいる、僕を心配してくれているようだ。
「大丈夫だよ。父さんと母さんは凄い強いんだ。ゴブリンキングだってすぐ倒しちゃうさ」
父さんの強大で澄み切った魔力と母さんの凄まじい気力が、これだけ離れていても感じられる。
本気の二人は想像以上に凄まじい力を持っていたんだな。
しかし、それ以上に禍々しく強大な魔力を放つゴブリンキングに不安は募る。
「シリウス…… これ、ヤバくないか?」
「この禍々しい感じ、これがゴブリンキングなの……?」
操気の鍛錬により、多少の気配察知が出来るようになったルークとグレースさんが青い顔をしている。
これだけ強大な力だと、多少でも気配察知が出来ると嫌でも感じてしまうだろうな。
「あぁ、恐らくゴブリンキングでしょう。凄まじい力ですが…… 父さんと母さんなら倒せると信じましょう……」
そんな話をしていると、急に上空に多数の魔力を感知した。
その直後、地響きを立てて近くに何かが墜落してきた。
……ゴブリンキングの強大な魔力で気づくのが遅れたな……
そこには百匹近いゴブリンやゴブリンリーダー、そして筋骨隆々とした体躯に立派な鎧を装備したゴブリンとそのお付みたいなゴブリンが現れた。
「な!? ゴブリンロード!?」
広場を警備していた狩人衆が叫んだ。
ゴブリンロードだと……!?
急いで相手の能力を『洞察』する。
《
【種族】ゴブリンマジシャン
【ステータス】
体力:100
気力:10
精神力:700
魔力:1000
【スキル】
『魔力操作』『魔力感知』『中級風魔術』『中級闇魔術』
》
《
【種族】ゴブリンジェネラル
【ステータス】
体力:1500
気力:800
精神力:10
魔力:10
【スキル】
『軍団指揮』『中級剣技』『投擲』『ゴブリンブレイク』
》
《
【種族】ゴブリンロード
【ステータス】
体力:3000
気力:1500
精神力:100
魔力:100
【スキル】
『軍団指揮』『上級剣技』『投擲』『ゴブリンブレイク』『ゴブリンデモニッション』
》
ゴブリンロードは流石に強いな…… でも、太刀打ちできない相手ではない。
幸い、奴らは広場から少し離れた場所に落ちてきたため、村民達はそこまで恐慌状態に陥ってない。
そして何故か奴ら自身も戸惑った様子を見せている。
……もしかして予想外の襲撃を受け、咄嗟にゴブリンマジシャンの風魔術で避難してきたとかか?
それなら今がチャンスだ!
地面に両手を付け、『
ゴブリン達の目の前に、土の柱が交差しながら立ち上がり土檻を作り上げる。
そしてその土檻の中に『
これで土檻とゴブリンの死体が邪魔で進行速度が鈍るはず。
「皆さん! 念のため避難して下さい!! 狩人衆の方々は弓で援護をお願いします!」
「な……!? いや…… 分かった。さぁ皆さん避難を!」
「い、一体何が!?」
「空からゴブリンが振ってきたぞ!!」
「あの魔術は!? ミラさんのとこの小僧がやったのか?」
「に、逃げるわよ! 早く!」
やっと現実に思考が追いついてきたみたいで、村民達が混乱している。
しかしそこは狩人衆が上手く誘導し、村の外へ村民たちを逃してくれている。
そして僕達は土檻の外から魔術と矢を雨のように降らせ、一方的にゴブリンを殲滅していく。
このまま片付けられればいいんだが……
―――ズガァァァンッ
凄まじい音を立て、土檻が吹っ飛んだ。
「「「グギャギャギャアアアッ!!」」」
三匹のゴブリンジェネラル、そしてゴブリンロードがこちらへ襲い掛かってきた。
奴らはその巨体とは裏腹に、凄まじい速度で僕らに迫ってくる。
『
風の塊が奴らの顔面に直撃し、ゴブリンジェネラル達が後ろにぶっ倒れる。
――ゴブリンロードが止まらない!
「ゴブリンロードは僕が止めます! 皆さんはゴブリンジェネラルをお願いします!」
「分かった! こちらは任せろ!」
うちの狩人衆なら力を合わせればゴブリンジェネラルくらいは片付けられるはずだ。
こちらも行くぞ。
『
『
高速でゴブリンロードの脇に回り込み、雷剣を振るう。
―――ギィィンッ!
しかしゴブリンロードは一瞬で身体を回転させ、大剣でその剣撃を受け止めた。
そのまま力任せに振り下ろされた大剣をバックステップで躱し、向かい合う。
身体強化しても速度、力、共に劣っているな……
最大火力の攻撃を当てれば一撃で倒せそうだけど、外した瞬間に終わりだな。
……どうにかして必殺の一撃を入れる隙を作るしかない。
―――ギギンッ! ガギィンッ!
高速で動き回るゴブリンロードと剣戟の響きを起こす。
そもそもあの大剣、雷剣をこれだけ受けてるのになんで刃毀れ一つしないんだ?
むしろ雷剣の魔力がゴリゴリ削られているくらいだ。
普通の剣なら一発で切断できるほどの魔力を込めているのに……
あぁそうだ、あの剣を『洞察』すればいいのか。
《
【名前】ゴブロニア・ブレード
【ランク】Sランク
ゴブリンキングの魔力が込められた魔剣。
ゴブリン族が使用した場合のみ、その力を発揮する。
その強力な魔力により生半可な魔術は無効化され、強度はオリハルコンを凌ぐ。
》
いやいやいや! なんつーとんでもない物持ってんだ!
ゴブリンキングの魔力が込められた魔剣とか、そりゃ押されるわけだよ……
この剣と打ち合ってたらこっちの魔力が持たないな。
機動力を削ぐように攻撃をシフトし、足元を狙う。
ゴブリンロードの周りを地を這うようにちょこまかと動き回りながら雷剣を振り回す。
ゴブリンロードは煩わしそうに大剣を振るうが、足下へは攻撃しずらそうだ。
剣撃を全て躱し、執拗に足下を狙い続ける。
「ガァッ!!」
苛立ったゴブリンロードは気を膨らませ、地面に大剣を突き立て『ゴブリンデモニッション』を放つ。
大剣を突き立てた箇所から全周囲に土塊が飛散し、衝撃波が放たれる。
遠距離攻撃!? まずい!!
ちらりと後ろを見るとゴブリンジェネラルをなんとか倒し、こちらを観戦している狩人衆が驚愕の表情をしていた。
『
彼らに襲いかかる土塊を風の塊で迎撃する。
しかしそれは、
直様ゴブリンロードに振り返ると、狂喜の表情で大剣を大きく振りかぶり『ゴブリンブレイク』を放つ瞬間であった。
『ゴブリンブレイク』は溜めが大きいが、発動すると高威力の剣撃を放つ技である。
防ごうとして受け止めれば耐えきれず粉々に、運良く避けれたとしても背後にいる狩人衆は消し飛ばされるだろう。
だけど僕は、その"隙"を待っていた。
『
勝負は、ゴブリンロードの下半身を残し上半身が後ろに崩れ落ちる形で決した。
ゴブリンロードの背後で眩い雷光に包まれたシリウス以外の者は、突然両断され崩れ落ちるゴブリンロードを放心しながら見つめていた。
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