第20話 ゴブリンキング
この一週間、私自身でゴブリンの巣を探索していた。
巣の規模はかなり大きく、今なお発展し続けていた。
ここまで大きくなるまで気づけなかったことが不甲斐ない。
複数のゴブリンロードが確認できたことから、それを統率している存在、ゴブリンキングがいるということは確信に変わっていた。
作戦としてはゴブリンロードを私とレグルスで殲滅、その後ゴブリンキングを討伐する。
戦いによって下位ゴブリンが逃げて村へ下ってくる可能性があるため、村を守るように狩人衆が罠と共に包囲網を張り、ゴブリン達を村へ逃がさないようにする。
村民にも避難準備をしてもらい、包囲網が突破されそうな時は伝令し、隣村へ避難してもらう手はずとしている。
ゴブリンキングが相手となると確実を期すために増援が欲しかったけれど、王都からはゴブリンキングと戦えるようなSランク級の冒険者を派遣するのは難しいとの回答だったので、限られる人員でベストを尽くすしかなかった。
「準備はいいかしら? 皆、命を第一に考えて絶対生き残るのよ。村民を守ることも大事だけど、あなた達の命も同じく大事なのだから」
「「「はい!!」」」
「それでは、掃討作戦を開始します!」
「「「応!!!」」」
裏山に向かい、戦闘配備に付く。
「あなた…… シリウスのためにも、絶対生きて帰りましょう」
「あぁ、勿論だ。君は俺が守る。俺ら二人が組んだら最強だろう?」
「そうね。あなたとなら、ドラゴンにだって負ける気がしないわ」
「よし、行こう。『雷神纏衣』」
レグルスの『雷神纏衣』により、強力な雷属性が付与され、身体能力が跳ね上がった。
そしてその付与は愛刀『雷薙』にも纏われ、力を帯びる。
「まず俺が周囲を殲滅する、護衛を頼む。」
「分かってるわ」
「『
広範囲に降り注ぐ雷によりゴブリン、ゴブリンリーダーはもとより、ゴブリンジェネラルまでもが一撃で葬り去られていく。
広場にいたゴブリン達の大半は殲滅され、生き残った者たちも散り散りに逃げ出していく。
魔術に魔力を注ぎ雷を降らせ続けるレグルスに、突如凄まじい衝撃波がゴブリン達を吹き飛ばしながら飛来する。
「はぁッッ!!」
瞬時に『雷薙』を振り抜く。
衝撃波は斬り裂かれ、レグルスに到達することはなかった。
衝撃を放った存在が姿を表わし、緊張が走る。
「……ゴブリン…… キング……」
「……やはりいたか……」
三匹のゴブリンロードとゴブリンマジシャンを携え、ゴブリンキングが現れた。
ゴブリンキングは身長が二メートル程度の細身であり、魔族とゴブリンの中間のような容姿をしていた。
身長が三メートル以上あり筋肉質なゴブリンロードと並ぶと一見貧弱そうに見えるが、纏っている魔力の密度はゴブリンロードの比ではなかった。
「ニンゲンヨ…… ヤッテクレタナ」
「人語を操るほどなのね……」
「高位の魔物は人語を解するとは言うが、ゴブリン族にそこまでの知能が宿るとは…… やっかいだな……」
「ゼッタイニユルサナイ…… コロス」
ゴブリンキングから凄まじい殺気が放たれ、同時にゴブリンロード達が襲い掛かってくる。
「ゴブリンロード達は俺が抑える! ミラはゴブリンキングを! 『
『
そして予定通り、ゴブリンロードのヘイトがレグルスに向く。
「はぁぁぁッッ!!」
一瞬でゴブリンキングに詰め寄り、『雷薙』を振るう。
―――ガギィィン
必殺の速度で剣撃を放つが、ゴブリンキングは軽々と受け止めた。
「ッ!?」
必殺の一撃を放ったつもりが受け止められ一瞬動揺したが、すぐに無数の剣撃を浴びせる。
―――ガギギギギギギンッ
ゴブリンキングは若干苦い表情を浮かべつつ無数の剣撃を往なし、それどころか隙を付くように反撃を放ってくる。
攻撃速度は優勢であったが、攻撃力が不足していた。
ゴブリンキングの纏う魔力密度が凄まじく、深い傷を与えられない。
一方ゴブリンキングは圧倒的な膂力を持っており、一撃でも当たれば勝敗を決する強さを持っていた。
私は手数で押し、ゴブリンキングは一撃を与えられる隙を窺う、そんな戦いが続く。
◆
「『
高密度の電流が光線となり、ゴブリンロードの頭部を貫いた。
ゴブリンロードと三対一で戦っていたが、遂に二匹目のゴブリンロードを葬った。
仲間を二匹も葬られたことにより最後のゴブリンロードが激昂し、凄い勢いで襲い掛かってくる。
本来魔術師である俺はゴブリンロードと正面から戦えるような身体能力ではないが『雷神纏衣』により敏捷性が跳ね上がっているため、ゴブリンロードの攻撃は掠りもしなかった。
「『
雷により形成された剣を右腕に纏い、すれ違い様にゴブリンロードの胴を両断する。
ゴブリンロードの死を確認し、魔力回復ポーションを一気飲みする。
今行くぞ、
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