第19話 災害の予兆
俺はミラさんの指示を受け、狩人衆の探索チームを組み裏山を探索している。
ゴブリンの巣を探すという重大な役割を受け、注意深く山の中を進んでいく。
『
ゴブリンマジシャンにより隠蔽されたゴブリンの巣を見つけるには、『
うちの村の狩人達が優秀と言っても上位探索スキル持ちは少なく、俺やミラさんを含め数人でこの山を全部探索しなくてはいけないという途方もない作業となっていた。
今日も見つからないだろうな…… そんな諦めの感情を抱きながら山を進んでいたのだが、ふと何か違和感を覚えた。
「なぁ、今日の山、いつもと雰囲気が違う気がするんだが」
「え、そうか? うっとおしいくらいゴブリンが出現するし、いつも通りに感じるぞ」
気のせいか……?
何か寒気のようなものを感じるんだが……
いや、狩人の勘が言っている、近くから何かを感じると。
もしかして、ビンゴかも知れない。
「やはりおかしい。近くに
「
「あぁ、奴らの巣がな」
一気に消耗するのであまり使えないのだが、『
「『
『
周囲百メートル程度の範囲の情報が、手に取るように頭に入り込んでくる。
……部分的に空間に揺らぎのようなものがある箇所がある、ここだな。
「右手九十メートル先くらいに空間の揺らぎが見えた。恐らく隠蔽結界だ」
「本当か!? 遂に見つかったか…!」
「あぁ。早いところ巣の規模を確認してミラさんに報告しよう」
気配を消し、隠蔽結界に近づく。
ゴブリンマジシャンの作る隠蔽結界は視覚をごまかすだけのものだから、普通に通過することが可能だ。
せめてゴブリンロードがいるかどうかだけでも確認できるといいんだが……
そう思い細心の注意を払い、結界を抜ける。
「ッ!!??」
その瞬間、凄まじい重圧を感じ取り、反射的に結界から身体を引いてしまった。
周りを見渡すと同じく何かを感じ取ったのか、青い顔をした仲間達が尻餅をついていた。
なんだ…… 今の重圧は……
まるで心臓を握られたかのようだったぞ……
巣の規模はチラリとしか目に入らなかったが、かなりの規模に見えた。
もはや群というよりも、集落に近いだろう。
危険だ、凄まじく嫌な予感がする。
「想像以上に拙そうだ。あの重圧、恐らくゴブリンロードは確実にいるだろう」
しかしゴブリンロードに、ここまでの重圧感が放てるのだろうか?
まさか…… いや、ありえない。
「探索に出ている他グループに至急伝令だ。俺は急ぎ本部に戻り報告する」
「あぁ、分かった……」
◆
遂にゴブリンの巣が発見されたとの報告が入り、他の狩人衆のメンバーにも緊張感が走る。
発見した者からの報告では、かなりの規模の巣となっており、結界を抜けた瞬間凄まじい重圧を感じたらしい。
上位探索スキル持ちの彼は冒険者で言うとCランク程度の実力は持っている。
ゴブリンロード程度だったら、そこまで重圧に負けることもないはず。
……
だとすると、狩人衆だけではあまりに厳しい。
シリウスに付き合って鍛錬をしていたのは正解ね…… ただでさえ冒険者をやめてからブランクがあるというのに、戦闘勘を少しでも取り戻さなければ。
「皆、遂にゴブリンの巣が発見できました。そして薄々感づいていると思うけど…… ゴブリンキングが発生している可能性があるわ」
「ま、まさか…… ありえないだろう!」
「ゴブリンキングって実在するのか!?」
「災害級だぞ!! もうこの村はお終いだ!」
流石の狩人衆も動揺が激しい。
そりゃそうよね、まさか災害級のゴブリンキングがこんな身近に発生してる可能性があるなんて、私だって認めたくないわ。
「静かに! 皆の気持ちは分かるわ。でも、私たちはこの村を守らなくてはいけない。ゴブリンキングは、私とレグルスで狩るわ」
「レグルスさんも一緒ならもしかして……」
「な、いくらミラさん達でも無茶では!?」
「いや、あのお二人はかつてSランク冒険者として王都でも結構有名だったんだ。いけるかもしれない……」
「正直、ブランクのある私達ではギリギリの戦いになると思うわ。でも仮にゴブリンキングが発生していたら、放っておくことはできない。この村だけではなく、この地域、国自体にも多大な被害を齎すことになるわ。ゴブリンキングは私達が命を賭して討伐するから、皆手伝って貰えないかしら」
「俺達だってこの村を守りたい……!」
「水臭いこと言わないでください! 勿論俺達だって頑張りますよ!」
「俺らでこの国を守ってやろうぜ!」
「皆……ありがとう。では、一週間で更なる情報収集、作戦立案、掃討準備を行い、一週間後にゴブリン掃討を決行します!」
「「「うおぉぉぉぉ!!」」」
◆
母さんが狩人集会から帰ってきた。
遂にゴブリンの巣が見つかり、一週間後にゴブリン掃討を決行するそうだ。
話によるとゴブリンキングが発生している可能性があるため、父さんも掃討作戦に参加するらしい。
仮にゴブリンキングが発生していた場合、二人で倒せるのだろうか……
二人とも余裕だと笑っていたが、どこか余裕のない様子だった。
そしてこの一週間は二人とも戦闘勘を取り戻したいと、僕の鍛錬は休止となり、自己鍛錬をすることになった。
丁度、今考案している魔術があったので開発と試行をして、掃討作戦が終わった二人を驚かせよう。
だから、無事に帰ってきてくれよ……
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