第44話 PV作成

PV作成をする場合、ネタが少なすぎても困るが、多すぎても

困りもんである。

しかもデュエル大会のPVな為、それ以外のネタが豊富すぎて、

PV作成班は、頭を悩ませてた。


「どんなPVを作ってくれるのかしら?」

しかも、チーフの余計なプレッシャーまでかかってくる始末。


「次のデュエル大会まで、時間もあるし、今日はお開きにしたら、どうかね?」


開発室長が提案した。

チーフは時計を見て、舌打ちした。


「みんな、急いで帰るわよ。深夜手当は出ないんだからね。」


いい時代には、22時を過ぎたら、悪い時代でも24時を過ぎたら、深夜手当がついていた。

今では、深夜手当もつかず、24時以降は帰宅しなくては、ならない決まりになっていた。


次の日も、朝からPV班は、PV作成にいそしんでいた。

全員が自宅にかえり、プロットを作成してきたという勤勉さである。

打ち合わせにより、大元のプロットは纏まり、作成にとりかかった。


15時からの試写には、間に合うことが出来た。

たった3分のPVだが、出来はかなりいいものとなった。

だが、PV班には一つの不安があった。

猫耳チーフの出番が少ない事・・・。

作成時には、運営の仕事があったらしく、一切、口を出してこなかったが、試写を見たら、ダメ出しされそうな予感がしていた。


「私の出番が30秒なかったら、即やり直しさせてやるわっ!」

颯爽と意気込んで、試写へと向かうチーフ。


不安渦巻く試写会が開始された。


一人の天使が舞い降りた。

そのフレーズと共にローラが登場する。

もちろん、キャラ名等は、表示されていない。

40秒近く使われる登場シーン。


戦う戦士たち。

大会に参加した面々の戦闘シーンが流れる。

一応開始時に、猫耳チーフが、申し訳なさそうに写っていた。

戦闘のメインは、決勝戦が多く使われていた。


突如現れる謎の男。

釣り仙人が颯爽と登場し、クレインを攫って行くシーンが流れた。


会場では、筋書きのないドラマが常に待ち受けている。

そう括って、PVはしめられた。


【即、却下だわ】


チーフは、内心で決めていた。

まずは、お偉いさんたちの評価からだが、上の人間なんて、何もわからず、可もなく、不可もない評価がされるのが日常だ。

チーフが却下すれば簡単に却下されるのは目に見えている。

が、何故か、普段参加しない人間が参加していた。


「いいじゃないか。色々楽しそうで、これでいこう。」

副社長が鶴の一声を放った。


「ですよね。私もいいと思います。」

太鼓持ちの取締役が言った。


「これでいいじゃないか。」

第2事業部長のゴーまで出た。


「・・・。」

もはや、チーフごときでは覆されるものではなくなってしまった。


「てっきり却下するもんだと思ったよ?」

運営のメインルームで開発室長が言った。

開発室長も試写会には参加していた。


「あの状況で、どうやって私が?」

チーフが苛立つように言った。


「しかし、副社長が出席してるなんてねえ。」


「想定外だわ・・・。」


チーフが爪を噛みながら言った。

そして、PV班をひと睨みした。

怯えて下を向くPV班の面々。


「まあまあ、彼らも悪気があったわけじゃあないし、ね?」


「時野の奴はいつ来るのかしら?」

チーフは、いちモニターに当たる気満々だった。


「ら、来週です。」

運営の一人が答えた。


「そう。ふふふ・・・楽しみだわ・・・。」

魔女の様な笑みを浮かべながら、チーフは言った。

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