第40話 限定デュエル大会

闘技場の中には4つの円形の舞台があり、同時に4試合が可能になる。

ゲーム内では、双眼鏡などは必要なく、闘技場内に居れば、

自分の目の前にスクリーン表示する事ができる。

ダイジェストについては、後日、公式にアップされるので、

PCでもスマホでも見ることが出来る。


今回はそれに加えて、デュエル大会を盛り上げるためにPVのアップも

予定されている。

当初は、猫耳チーフを中心に作成される予定であったが、現在PV班は、

ローラの入場を中心に作成にとりかかっていた。


「あの入場はインパクトあったね。」

運営のメインルームで、開発室長が言った。


「そうですね。PV班も躍起になってます。」


「いいPVになりそうだね。チーフは荒れそうだけど。」


「それが一番心配です。」

運営の人間なら、皆がそれを心配してた。


「まあ、私は開発の人間だから・・・。」

室長は逃げる気満々だった。


限定デュエル大会には、いつもマルスは出場していなかった。

彼は、メーカーの人間ではあったが、部署は違っており、

運営には携わっていない。

そういう意味では、他のユーザーと何も変わりはない。

限定戦に出ないのは、単に個人的理由だった。

彼は、魔法剣士であり、限定戦が酷く不利なのだ。

ただでさえ、カラットに勝ててない現状で、限定戦なんて確実に負ける

のが目に見えたいた。

そんな無冠の帝王ことマルスが、出ない限定戦は、試合自体は、

盛り上がりに欠けてしまう。

カラットの出来レースと言われても仕方がなかった。


現在も、順当にカラットとクレインが勝ち上がっている。

このままの状態で進むと、クレインは準決勝で、毎回ベスト4の人間と

あたることになる。


結局、何も起きることなく準決勝。

カラットは、さくっと勝利し、決勝進出を決めた。

一方のクレインは、今回の山場となる対戦を迎えた。


「彼じゃあ役者不足ね。」

パルコが言った。


「パルコさんなら、武者たんに勝てますか?」

タイマーが聞いてみた。


「あの突きがやっかいなのよね。私の双剣よりも間合いが長いし、歩は悪そうよ。」


「カラットは無手ですよ?」


「カラット君は特別だからねえ。」


クレインは、いつものように水の構えで、相手を見据える。

剣道の有段者であるクレインのようなタイプは、VRのゲームでは、

プレイヤースキルは高くなる。

カラットにしても空手の有段者である。

VFGXのキャラのスピードは、全キャラ共通。

これに武器を装備した場合、武器によってスピードが落ちる。

重さの概念が無いため、スピードで調整している。

スピードは、武器を持ってない場合は、Lv間の差もなく、全キャラ

共通となっている。

全員が同じスピードだからこそ、プレイヤースキルの差が顕著に

あらわれてしまう。

単なるゲーマーの毎回ベスト4君では、クレインの相手にはならず、

あっさり突かれて終わってしまった。


結局、決勝は、前評判通り、カラット対クレインになってしまった。

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