第97話 同郷!?

『なに!?  神聖なる駆動体アルカナ・エンジンに代わる物が在るのか! 神の如き力を内包する神騎に、対抗し得る力があると言うのか!? 』

ゲオルグは眼前の者へと、隠者ハーミット唯一の聖戦士ハイランダーで在る者へと問いを掛ける。

傍らのアイギス達もその問いの先にある答えに意識を向けた。 

皆その胸中には「その様なものが存在するのか? 」との疑問を抱いていた。 

 創西暦が始まって現在いままで、神聖なる駆動体アルカナ・エンジンに代わる力など存在しなかった。 この星の唯一の強者として竜種の伝承はあったものの、その存在を確認した者は未だ居りはしない。

そのため、神騎に代わる最強のモノとは、唯一の聖戦士ハイランダーである事がこの世界の常識であるからだ。 とは言え、所詮は人の身である。人の理から外れる神騎である神聖なる駆動体アルカナ・エンジンに勝る事は在り得ない事だった。


『彼の国に、何があると申す? 何がそこにると言うのだ! 』

その焦りからか、何時しかゲオルグの口調は強いものになっていた。

隠 者ハーミット唯一の聖戦士ハイランダーは皆に聞こえる様答える。

「全てを知り得る事は叶わず……、しかしそのモノの存在は確認し得ました。

それはギレン法国では狂戦鬼バーサーカーと呼ばれております。

外法げほうにより生み出された人外の騎士…… いや、騎士と言うのも憚られます。

悪魔の如き所業により生み出されしモノ。

死霊学ネクロマンシー異界・・の技術により生み出された邪悪なる騎兵と呼べるモノ。

元となる悪鬼を何処より運んで来るのかは終ぞ判らず…… 悪鬼を元に人が乗込み制御する生体鬼動兵器に御座います 」


『……生体鬼動兵器とな? それはどの様なモノなのだ? ノリト殿は判るか? 』

ゲオルグは聞き慣れぬ単語と異界と言う言葉から、傍らに控えたノリトへと問い掛けた。


「陛下、想像は付きますが…… 確証は持てません。隠者ハーミット唯一の聖戦士ハイランダー殿と少しお話をしても宜しいでしょうか? 」 


『ノリト殿、宜しく頼む 』

ゲオルグは頷き、ノリトへと託す。

「有り難うございます 」

そう言ってゲオルグへと礼をとり、隠者ハーミット唯一の聖戦士ハイランダーへと向き直ると、視線を向け告げた。


「お初にお目に掛かります。 私は神薙 騎士かんなぎのりとと申します。お名前をうかがっても宜しいですか? 萬川集海に連なるお方なら同郷だと思うのですが……。 藤林、服部、百地といわれるのでは無いですか? 違っておりますか ? 聞かれたく無いのでしたら中央まで御出で下さいますか。私も其方へと参りますので 」

ノリトは闘技場の中央へとゆっくりと歩を進めた。

隠者ハーミット唯一の聖戦士ハイランダーもノリトと同様に中央へと歩み始めた。

程なく二人が中央で向き合うと何やら挨拶を交わしている。

地球の日本では良く見られるお辞儀・・・と言われるものだ。

手を身体側に沿わせ腰を折り頭を下げる。日本以外では見られぬ光景である。


「改めて名乗りましょう。 私は日本に生まれ、日本を守護する兵士であり、名を神薙 騎士かんなぎのりとと申します。こちらの世界へ迷い込んだと言うのでしょうか、数日前この国の召喚陣に相棒と共に現れました 」

ノリトは、相手に判る様に相棒のところでミオへと視線を向ける。

挨拶をするノリトをまじまじと見ながら、隠者ハーミット唯一の聖戦士ハイランダーが口を開く。

とは言っても、その素顔が晒される事は無く布地で素顔が隠されたままであった。

「我が名は藤林 一刀ふじばやし いっとう。本来の名は襲名と同時に捨て申した。 一刀いっとうと呼んで下され。 素顔は…… 同郷であれば説明も無用と思う、ご理解頂きたい。 それに、あなたも色々と事情がおありの様子 」

一刀はノリトの鋼の身体を眺めると頷いた。

一刀いっとう殿ですか。 素顔…… これは私も同様です、この身体の事もお判りになるとは、ご理解感謝します 」

二人は頷くと話をはじめる。


「では、これよりの話はこの場に居る者のみに伝えましょう。 音響障壁を展開しますが宜しいですか? 」

「そうして頂けると安心と言うもの、何処に間者が居るやも判らんのでね 」

ノリトは虚空へとシールドバインダーを展開し四方の大地へと突き立てた。

シールドが展開すると淡く光り始める。様々な衝撃を吸収出来ると言う事は、音響の阻害や遮蔽も可能だという事である。 バインダーに囲まれた空間の音声を遮断し即席の防音壁としたのだ。

「私の世界と一刀殿の世界…… 同じとは限りませんが、限りなく近いと感じております。 その装束も私達の世界には有りましたし、萬川集海と言う名も残っておりました 」

「我が一族の住まう世界は鬼と呼ばれるモノ達と戦いを続けて来た世界である。 我らの様に忍術を使う者と科学を使う者がおり、我が一族は忍術と科学を融合させた唯一の衆派であった 」

「鬼ですか? 忍術とはこの世界で言う魔法では? 」

「左様、この世の魔法と忍術は同義であった。 鬼とは人ならざる生を持ち、獣の如き…… いや、悪魔の如きモノ達である。 人を、魔力を持つ者達を喰らい己が力と換えるモノ。 永き渡り戦ってきたのだが、決着がついた時に、背後に新たなる敵が現れた…… そしてこの地へと逃れてきたのが我らである 」

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