第81話 鼻歌交じりに夕食の支度を進める

ノリトは鼻歌交じりに夕食の支度を進める。


 自家製の燻製ベーコンを程よい大きさに切り分けてゆく。

フライパンにはオリーブオイルが少量注がれている。

本当に極少量をフライパンに延ばすとベーコンを投入した。

ベーコンその物から溢れ出た脂が、焦げ付きを抑えてくれるので少量だったのだ。


今日のカルボナーラに使うベーコンは、薫香を抑えたものにしてある。

薫香が強すぎるとチーズや卵と喧嘩をしてしまうからだ。


適度に脂が染み出た所で、細かく刻んだ大蒜ニンニクを投入する。

キッチンには甘い良い香が漂い始める。

仄かに薫香が漂い食欲が刺激されるようだ。


焦げ付かないようベーコンを焼き上げ、大蒜ニンニクの香を付けてゆく。

味付けはベーコンの塩分だけで十分だ。 余計な調味料は必要ない。

焼きあがったら一度皿へ取り次の準備だ。


常温に戻した卵をボールに割りいれておく。

粉チーズを用意し卵と炒めたベーコンが半々になるよう、大き目のボールへと入れてゆく。

粉チーズはボールの底中央へと中仕切りになる様に入れ、片側へ卵、反対側に炒めたベーコンを入れる。


後はパスタを茹で上げるだけだ。

ソースが絡み易くするため、少し太目のパスタを用意した。

 今日は人数が多いので、大き目の鍋に湯を沸かし、適量の塩を加える。

パスタは時間通りに茹で上げたらザルに取り、水気を切る。

湯に加える塩の量は、パスタに下味を付けるような感覚で良いので少な目にした。

ノリトは1リットルの湯に対し、小さじ3程度の塩を使っていた。


茹で上がったパスタの水気が切れたら、先に用意した卵が入ったボールの中にパスタを入れるのだが、その時に、卵・チーズ・ベーコンへとパスタを覆いかぶせるように載せていく。

これは、パスタの余熱で下にある具材を蒸す・・ためだ。

10秒程そのままにしたら、最後に全体をよく混ぜあわせる。


用意した皿へパスタを盛り、オリーブオイル少量を回しかけた後、黒胡椒を振ったら出来上がりだ。


ベーコンから微かに薫香が漂う。

ベーコンとパスタの塩気がしっかり効いた、濃厚な味わいのカルボナーラが出来上がった。

卵と粉チーズで出来たソースは、程よく蕩けておりパスタは太目でもっちりとした歯応えで、食べ応えのあるものに仕上がった。


軽く摘める物というなら、フライドポテトだろう。

パスタの茹で上がりと同時に揚げ終わった。

大き目の紙袋へと一度入れ、塩を振り袋を振る事で塩を満遍なく行き渡らせる。


大皿へと移して完成だ。

ケチャップやハニーマスタードなどのディップソースを用意し、配膳台車キッチンワゴンへと移す。


「さて、お客様はお揃いかな? 」

ノリトはエプロンを外すとワゴンを押しながら、ミオの待つリビングへと向かった。


    ◇    ◇    ◇    ◇


『アイギスよ、支度は良いか? 』

『はい、準備は出来ております 』

『御祖父様、私も大丈夫です 』

ゲオルグ達三人は、小脇に葡萄酒の入った小瓶を抱え連れ立って歩む。

侍女達には、今日はもう休むよう命じていた。

男三人で、いそいそと歩む姿は…… 微笑ましくもあった。


同時刻、此方でも同じ様な遣り取りが!?

『エスト、準備は良いかしら 』

『はい、滞りなく 』

『シャルルよ、本当に私達も良いのか? 』

『そう、興味はあるのよ…… その、お風呂? とやらにはねぇ 』

『大丈夫だと思いますよ。 

ノリト様より、何時でもお使い下さいと伺っておりますから 』

『エレオノーラ様、レイン様、これより向かう場所。

そこは楽園に御座います。 そして、一度訪れれば…… 

二度と元の湯浴み・・・にはお戻りになれないと存じます 』

『なっ、シャルルよ、何を言っているの!? たかが湯浴みであろう 』

エレオノーラが怪訝な顔をする

『うむ、だが、あの者達の使う施設なの。 唯の湯浴み場・・・・の筈も無いのよ 』

レインはワクワクした感情を隠さずにシャルル達へ答える


『では、皆様参りましょう! いざ、浴室へ!! 』

シャルルは勇ましく掛け声を上げ歩み出した。

四人は浴室を目指しキャイキャイと言いながら歩いて行く。


    ◇    ◇    ◇    ◇


『おや? シャルルよどうしたのだ? それに…… 』

『ほほぉ! エレオノーラにレインもとは!? 』

『お姉さま、もしかして…… 』

 二組はバラ園前でバッタリ出会った。


『御祖父様? もしかしてお風呂で御座いますか? 』

エレオノーラに、レインとエストもゲオルグが居る事に驚き、慌てて礼をとろうとした。

『よいよい! その様な挨拶等、この後も不要である。

折角の寛ぎの時間なのだ。 堅苦しい事は無しにしよう 』

『陛下の言われる通りです。 普通に爺達・・に接して下さい。 その方が嬉しく思いますので 』

ゲオルグに続きアイギスよりそう願われた。

三人は

『はい、分かりました。 今宵、その様に致します 』


そんな遣り取りを入り口でしていると、不意に声を掛けられた!

「あ~っ。 やっぱり皆さんお揃いですね♪ 」

ミオが笑顔で迎え入れる。

『ミオ殿、今宵もお世話になるが、宜しいかな? 』

「ええ! 何時でも歓迎です! 

それに、この奥でノリトもお待ちしていますよ 」

そう答えながら、明日からは暖簾が必要かしら? などと考えた。


『ノリト様が? 』

ええ、立ち話は止めにして、さぁ! 皆さんお入り下さい 」

ミオに促され、7人はハウスユニットへと入っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る