第66話 ギレン七世が亡くなる少し前の事
遅れた理由としては。 恐らく、開戦の準備やラルース家への対応のためであろうと思われた。
それとも、それ以外の理由であったのかは知る由も無い。
◇ ◇ ◇ ◇
周りに不穏な空気、血の臭いを感じた
この場所は王族であり、ギレン法国を継ぐ者にしか知らされてはいない。
この場合の王族とは、王に連なる
従って、姿形を真似たとしても侵入する事は叶わないという場所であった。
ただし、王に連なる
『まだ…… 時間は残されておるか? もはや
「左様に御座います。 余り時間は残ってはおりませぬが……。
如何致しましょう? 」
一風変った装束に身を包んだ者が、
男なのか、女なのかも判らぬ不思議な人物であり、その者が纏う着衣も、この辺りにでは目にした事も無い意匠の物だった。
『なにもせずとも良い。 既に手遅れであるのでな。
だが、これを持ち…… この国より脱出せよ 』
「これは? 脱出とは何故で御座いますか!?
御身に、最後までお供させて下さいませ! 」
その者は書簡を受け取ることを固辞した
『ならぬ! この国の行く末を…… これが、最後の希望なのだ!
これを受け取りアスガルドへと逃げてくれ!
頼む…… この通りだ! 』
「その様な…… 御命令とあらば。 お預かりいたします 」
悔しさを滲ませた声色で返答を返し、震える手で書簡を受け取った、
「ですが、これを
『その内の一通は其方への物だ。 その手紙に全て書き記しておる。
頼んだぞ。 この国の未来…… いや、世界の未来がかかっておる 』
そのうちの一つをその者の首へと掛けると、残りの二つを手に握らせた。
「お館様、 これは!?
まさか、アルカーヌ・メイスでは在りませぬか! 」
『この者、
承認せよ! 』
瞬間、首に掛けられた宝剣を象ったネックレスより、魔法陣が展開するとその者を包み込み、収束して行く。
『この一つは御主に預ける故、必要とあらば使う事を此処に許す。
だが、心して使うが良い!
フィルモア家のもので名を
白き物はラルース家の
もう一つの物は、将来の事だが、息子が受けるに相応しい者に変われたのならば……、 わしからと手渡して欲しい。名を
わしの物であったが、もう使うことも出来ぬ。 頼んだぞ 』
受け取った者は頭を垂れ、一言を残し姿を消す
「では、承りました。 お約束は必ずはたしましょう!
我が一族、萬川集海の名に掛けて 」
残された
きっと、彼の国はわしの願いを叶えてくれるだろう。
我が友、ゲオルグ、アイギスよ、頼む。
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