第44話 残念美少女、ほめられる



「ツブテさんが、こちらの宿にお住まいと聞いていますが」


 私とダンが住んでいる『アヒル亭』は、朝から多くの人が訪れていた。

 みんな、私とドンにお礼が言いたいらしい。


「はいはい、ツブテさんに会いたい方ね。ここにある、ツブテグッズかドングッズを買った方は、お言葉がもらえるわよ」


 人員整理をしているのは、エルフのマイヤーンだ。

 

「お金は、こちらで払ってね」


 おかみさんがレジを担当している。

 

「ほい、次の人」


 宿のおじさんが、一人ずつ、私の前に「お客さん」を連れてくる。


「ツブテ様、いえ、『青い悪魔』様、私は畑を国に取りあげられそうになっていたんです。悪い国王が居なくなって、何もかも元通り。本当に感謝しています」


「よかったわね」


「ドン様、このが、あなたのような美形になるよう。頭を撫でてもらえますか」


「はい、なでなで」


 こんな感じで、朝から夕方まで人が途切れない。

 早馬便でこの状況が少しでも早く終わるようタリランさんに頼んだが、返事がまだ来ない。

 休憩時間になり、みんなが食堂に集まった。


「いや~、儲かって儲かって。もう笑いが止まらない、ウフフフ」


 妹エルフが、嫌らしい顔で笑っている。

 そんな顔を愛しのドンが見たら、呆れちゃうぞ。

 

「本当に、こんなに儲かっていいのかしら。ツブテちゃん、ドンさん、ありがとう」


 お世話になっている女将さんが喜んでくれるなら、まあいいかな。


「こりゃ、宿を建て増しするかな」


 おじさんもホクホク顔だ。   


「あー、その必要はないと思いますよ?」


「ツブテちゃん、どういうことだい?」


「おばさん、私たちが帰って二日ほどして、お城から手紙が届いたでしょう」


「ああ、そうだったね」


「前のダメ国王が迷惑かけたということで、国からのおわびがあるみたいです」


「そうなのかい?」


「なんでも、宿と銭湯が入った、複合商業施設を建設してくれるそうですよ」


「えっ!? そういえば、街外れでいっぱい人が働いてるけど、あれがそうなのかい?」


「そうみたいです」


「嬢ちゃん、だけど、あれは新しい街区を作るとかで、かなり広いぜ」


「そうですね。できてみないと分かりませんが、かなり大規模なものになるようです」


 私とドンは自分たちに透明化の魔術を掛け、下見に行ってきたからね。

 

「手紙には書いてませんでしたが、商業施設には他の店舗も入るみたいですよ」


「ふえ~、新国王は、よっぽどあんたに感謝してるのね」


「あんたではなく、お姉ちゃんとよびなさい、妹よ」


「まあ、こんだけ儲けさせてもらってるから、少しくらいは言うこと聞くけどね、お姉ちゃん」


 エルフが顔を赤くしている。

 いいね、これ、いい!


 ポチ(カニ)たち『ツブテ、やっぱり、残念!』


 ◇


 儲かっていた『アヒル亭』のグッズ商売は、宿の前に立て札ができると、終了した。

 立て札には、私とドンに面会する場合、国からの許可が必要だと書いてあった。

 破った時の罰則もかなり厳しく、誰も面会に来なくなった。

 しかし、罰則の一つに、「痺れカニの刑」というものがあったが、あれは一体なんだろう。

 おばさんに尋ねると、新国王になってから、痴漢やセクハラの罪にその罰が適用されているそうだ。


 ポチ(カニ)たち『きっと、あれだっ!』


 そして、待ちに待った、商業施設オープンの日がやってきた。

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