第32話 残念美少女、〇〇を造る。


 翌日。

 私は、かねてから温めていた計画を、実行することにした。


 おかみさんの紹介で、ドンと二人して、一軒のお店にやってきたのだ。

 ここは不動産を扱う店で、顔も体も卵型をした、小柄なヒゲのおじさんが店番をしていた。


「あのー、町はずれに、空き家があると聞いたのですが」


「ああ、『アヒル亭』のモアナさんから聞いてるよ。

 木造と石造り、どちらがいいかな?」


「石造りでお願いします」


「石造りの方だと、少し値が張るよ」


「いいですよ。

 いくらですか?」


「ちょっと待ってよ。

 ええとね、ああ、あったあった」

 

 おじさんは、机の上に重ねていた羊皮紙のようなものから、その一枚を抜きだした。


「ええと、金貨三枚だね。

 ずっと売れ残ってるから、持ち主からは、ある程度値下げしてもいいと言われている」


 金貨三枚?

 日本円で三百万か。

 やけに安くない?


「とにかく、実物を見てから決めますね」


「ええ、これが地図です。

 この印が、その家ですから」


「ありがとう」


 ◇


「お姉ちゃん、これがおうち?」


 ドンが尋ねるのも無理はない。

 地図をたよりにやって来た場所には、完全に屋根が崩れ落ちた、石造りの建物があった。

 これ、金貨三枚って高いよね。

 

 草が生い茂った敷地の中を歩いてみる。

 広さは意外に大きく、小さな公園くらいはある。

 あるかどうか懸念していた井戸も、ちゃんとあった。

 

「ドン、この井戸水、飲めるかどうか確かめられる?」


「うん、やってみる」


 ドンは井戸の横に立つと、右手をかざした。

 井戸の中から、テニスボールくらいの水玉が浮き上がる。

 引き続き、彼はその玉に左手をかざした。

 水玉の上に、魔法陣が現われる。

 それはマイヤーンの鑑定魔法陣に似ていたが、遥かに大きかった。


「身体に悪いものは、入ってないみたい」


「ありがとう」


 排水用の溝はあるみたいだから、後は建物が修復できるかどうかね。 

 私は自分が作りたいものについて、ドンに伝えた。


「うん、そんなに難しくないと思うよ」


 ドンは、目的のために必要なものを教えてくれた。

 タイル、石材、砂、その他、細々したものをメモしておく。


「ここに、小さいものを作ってみるね」


 ドンはそう言うと、瓦礫の山がある所に右手をかざした。

 数種類の素材が、宙に浮く。

 それぞれが形を変えると、組み合わさり、犬小屋ほどの模型ができた。


「このウロコのような屋根が、一番難しかった」


 彼が言っているのは、瓦屋根の事だ。

 二階建ての和風家屋は、少女が不思議な世界に迷い込むアニメに出てくる建物を参考にしている。

 私とドンは、目の前にあるミニチュアハウスを元に、実物の構想を練った。


 ◇


 素材運搬には私のマジックバッグを使い、ドンが素材を組み立て、三日ほどで目的の家ができた。

 家の外見は切妻式の日本家屋で、道に面して敷地一杯に建っている。


 二階建てだが、中二階があり、そこには大きなタンクが置いてある。

 このタンクは、金属くずを溶かしドンが作ったものだ。

 これには、井戸からくみ上げた水が入るようになっている。

 水量が足りなかったので、ドンが井戸を掘り下げてくれた。


 こうして、私とドンの銭湯が完成した。

 銭湯の名前は『温泉ランどん』

 これは、私が名付けた。

 一部平仮名が入っているのは、「ドラ〇もん」にあやかった。

 温泉ランドとドンを掛け合わせた素敵な名前だ。


 ポチ(カニ)たち『『『藤子・〇・不二雄先生に謝れっ!』』』 

 

 こうして、私とドンの銭湯が完成した。

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