少年期[410]雲の上の存在
「さぁーーーて、遂に着いてしまった訳なんだが・・・・・・あいっ、変わらずデカいな」
「私は初めてマジかで見たけど、本当にデカいわね。ルウナもそう思うでしょう」
「ああ・・・・・・確かにデカいな」
デカいとは思うが、ルウナの過去には薄っすらと自身が住んでいた場所の記憶があるので、そこまで驚くほどの大きさでは無かった。
「これを見せれば問題無いって聞いていたんだが・・・・・・やっぱり不安だな」
ルミイルからの手紙にはこの手紙と封筒を見せれば問題無いと書かれてあったが、それでもゼルートの不安は消えない。
(王城を守る兵士達とか、そこら辺の貴族に仕える兵士よりよっぽどプライドが高そうだしな。俺が我慢すれば良いだけの話かもしれないけど・・・・・・無理そうな気がする)
しょうもない理由で威張り散らす相手にゼルートはニコニコしながら相手をする程懐は大きくない。
そして王城の前に着く。
警備をしている兵士にゼルートを手紙と封筒を出しながら声を掛ける。
「すみません、今日ルミイル様に呼ばれたゼルートって冒険者なんですけど」
ゼルートから手紙と封筒を受け取った兵士は軽く確認すると、直ぐにゼルート達は王城内へと案内する。
(あれ? 思ったよりもスムーズに入れたな。というか、あんな目視だけで手紙と封筒が本物かどうか判断できる物なのか?)
兵士は腰に自分が手に持った者が本物かどうか確認出来る魔道具を身に付けていたので、しっかり仕事をしていた。
だがゼルート達の確認がスムーズに終わったのにはもう一つ理由があり、今日警備をしている兵士達はルミイルからの命令でゼルートとシーナの代理決闘を見ていた者達だった。
基本的には特別な決闘でも無い限りは外部の者は観戦できないのだが、王女からの頼みという事もあって学園長は特に文句や嫌味を言う事無く受け入れた。
らだし王女側も権力に物を言わせるのは良くないと思い、観戦料をしっかりと学園側に払うという対応を取る。
学園長は特にそういった物は要らないと言ったのだが、ルミイルが頑なに折れなかったので観戦料を受け取ることにした。
「・・・・・・やっぱ、果てしなく豪華だな」
「こういった場所に来るのは五歳のパーティーぶりですか?」
「いえ、少し前に色々とあって侯爵家の家にお邪魔したんですけど、それよりも豪華でスケールが違うといった感じで」
(マジでなんでこんなに天井が高いんだよ)
巨人族が通るにしても高い天井にゼルートは王族としての外見を整える為とはいえ、自分には想像もつかない程金を使っているのだろうという事だけは理解する。
アレナとルウナも内装のレベルの高さに歩は進めているものの、口が空いたまま塞がらない状態が続いている。
「侯爵家ですか。良き縁が結べましたか?」
「・・・・・・どうでしょう? 侯爵家の家に向かった理由は元々面倒事が原因だったので、悪い関係になっってないですけど、良くなったかはいまいち解りません」
「そ、そうでしたか。その後の冒険に支障とか・・・・・・」
「いや、全くないですよ。原因は子供の我儘で親は常識人だったんで」
王城の警備をしているとはいえ、ゼルート達案内している兵士からすれば侯爵家の人間など、雲の上の存在。
そんな存在と面倒事を起こしてしまったら絶対にそれ以降の生活に支障が出るといったイメージしか浮かばない。
そんな他愛もない会話を続けているうちに、目的の場所へと到着した。
場所はルミイルの自室の前。
兵士がノックをし、ゼルート達が来たことを告げる中から入っても大丈夫という内容の返事が返って来た。
「それではごゆるりとお過ごしください」
そう一言告げると兵士は自身の持ち場へと戻る。
「お茶会なぁ・・・・・・まぁ、何事も無く楽しく終わる事を祈ろう」
たかがお茶会、そこまで気を張る必要は無いと自身に言い聞かせながらゼルートはドアをゆっくりと開ける。
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