少年期[400]多分許してくれる筈

全員が集まった事で豪華な夕食が始まる。


テーブルに並ぶ料理はどれも高級店と名の付く料理店に負けておらず、ゼルート達の口から上手い!! 美味しいという言葉が何度も飛び出す。


そして全員がある程度の料理を食べたところで、クライレットがゼルートに話しかける。


「ゼルート、王都にはまだ数日いるんだろ。どうするか予定は決まっているのか?」


「殆ど決まっていないけど、一日はルミイル様とのお茶会? に時間を使うと思う」


ゼルートが発現した一日の内容に関して全く予想していないかった答えが出たことで、クライレットは咳き込み、レイリアは少しまだ口の中に入っていたワインを吹き出してしまう。


周囲で待機している使用人達は元々上からの指示でこの屋敷に務めているため、二人ほど驚くことは無かった。


「ぜ、ゼルート。あなたいつの間にルミイル様と関係を持ったの?」


「王都でのパーティーから帰った日の夕食で言わなかったけ? 元々三馬鹿貴族の子息が声を掛けて来た理由はルミイル様と俺とその場で知り合った一人の子息が話していたからなんだ」


「それで、お茶会の理由はお前が冒険者になってからどんな日々を送っているのか訊きたいってところか」


「そんな感じだと思います」


送られて来た手紙からは政治的な問題を匂わせる様な内容は一切無かったので、後日のお茶会に対してゼルートはそこまで気を重く感じていない。


(会話の途中で何か依頼される可能性は無いとは言いきれないが、それでも面倒な件では無いと俺は信じたい)


「ゲイル達はその日はどうする。俺の従魔だから着いて来ることは可能だと思うけど」


「特に刺激があるとは思えないので偶には屋敷でのんびりと過ごしておきます」


「私もそうさせて貰います」


「僕ものんびりしてる!!!」


(確かに三人にとって興味のある話をする訳でも無いからな)


ゼルートも面倒な気はしないが、それでも自分が体験した事を話すだけなのでそこまで期待するものは無い。


「流石に解っているとは思うが、あまり失礼な態度は取るなよ」


「それぐらいは解ってるよ・・・・・・多分」


敬語を使うつもりだが、どのタイミングで素が出てしまうかゼルートは全く解らない。


(何というか、もう随分と前の事だけどかなり話しやすい人だった気がするんだよな)


仮に敬語を忘れて素が出てしまい、護衛の者が突っかかって来た場合は正直謝るつもりは無い。


(先にもしかしたら敬語を忘れてしまうかもしれないって言っとけば、そういった問題であの馬鹿共の様な奴らと同じような発言をする事は無い筈だ)


よっぽどの事が無い限り性格が曲がるような者では無い。


ゼルートの考えは正しく、学園内でのルミイルの態度は良い意味での貴族らしい者であり、爵位がどうこう等関係無く平等に接している。

但し、自尊心が強く傲慢な者には言葉に毒を含ませて接する。


「まっ、ゼルートなら問題が起こって何とかする筈よ!!!」


「僕としては何とかする前に問題を起こさないで欲しいというのが本音だね」


クライレットはゼルートが性根が腐った者と面倒事を起こす事に不満は無い。寧ろその面倒事に乗じて潰してしまえとする思っている。


だが、表立って悪い噂を聞くような事も無く、裏も真面な者とは極力問題を起こして欲しくない。

それは貴族として、兄として心の底から願う事だった。


夕食が終わり、クライレットとレイリアが寮へと戻り、食休みを終えたところでゼルートはワッシュから一通の手紙を受け取る。


「ルミイル様からか」


何となくは予想出来ていたので特に驚き事無くゼルートは手紙を開ける。

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