少年期[277]走って運転して

ゲイルとラームのが世話になっている貴族が治める街まで約四日程飛ばして走っていたゼルート達はようやく辿り着いた。


「結構日にちが掛かったわね。というか目的地までの大半を走りで移動したのは初めてかもしれないわ」


「確かに今までその様な事は無かったな。体力が切れた時はゼルートが魔法で作ったトラック? だったか。それに乗って移動したから随分と速く着いたのだろう」


「ああ、俺達三人の走る速度と、トラックの速度を考えれば速い方だろう。ま、馬車に比べて乗り心地は良くなかっただろうけどそこは勘弁してくれ」


ゼルートが即席で作ったトラックは魔力操作によりタイヤが回転して普通に移動するより楽で速いが、即席で作ったので乗り心地は基本的に良くは無かった。


しかし二人は特に文句を言う事は無く、寧ろゼルートを褒めた。


「何を言っているのよ。あなたのその魔法が無かったらもっと時間が掛かっていたのよ。文句を言うところは無いわ」


「アレナの言う通りだ。寧ろ素晴らしい魔法だ。何か緊急時の際には敵から逃げる時に役立つ筈だ」


「別にそういう事態を想定して考えた魔法では無いんだけどな・・・・・・でも、それは案外良い案かもしれないな」


敵から逃げている途中に、トラックの後方から魔法使いが詠唱を唱えてから魔法を放ち、狩人が弓で矢を放って敵を撃退する様子をゼルートは思い浮かべていた。


「特別難しい魔法でもないからな。土魔法さえ使えれば出来なくないだろうし、でも魔力量がある程度ないとな・・・・・・トラックの操作もある程度上手くないと転倒する可能性もなくは無いだろうし・・・・・・難しくは無い筈だけど、簡単でもないかもしれないな」


「形を作るだけなら簡単かもしれないけど、操作は確かに難しいかもしれないわね。ゼルートはあのハンドルってのを造って操作するのが感覚的には一番動かしやすいの?」


「あぁ・・・・・・まぁな。何となく付けてみたんだけど左右にトラックを動かす時にイメージしやすいと言うか、取りあえず動かしやすいんだよ」


前世ではマ〇オカートをゲームセンターで偶に月一、二のペースでやっていたゼルートとしてはハンドルが付いている方が運転しやすく感じていた。

ただアクセルとブレーキまで付けてしまうと色々と疑われてしまいそうなため、流石にその二つは必ずしも必要という訳では無いので付ける事は無かった。


「なるほど・・・・・・む、ゼルート。兵士がこちらに向かって来ているぞ」


ルウナ言葉が指す方向に向くと、確かにゼルート達の咆哮に数人の兵士が走ってきていた。


(おいおいおい、俺まだ街にする入ってないんですが!? 別に前後に並んでいる人達と問題は起こしていないですよ。男達から嫉妬に視線を向けられているのは確かですけど)


自身達の方へ向かって来る兵士達にゼルートは動揺を隠しきれていない。

アレナも自分達が何も問題を起こしていないのにも関わらず、自身達に向かって廃止がやってくる現状に困惑している。


「申し訳ございませんが、ゼルート・」


「ストップ、今の俺はただの冒険者です」


いきなり自分のフルネームを口に出そうとした兵士にゼルートは待ったをかける。

待ったをかけられた兵士はゼルートが何を言いたいのかを理解し、ゼルートの家名を口に出さなかった。


「ゼルート様、アレナ様、ルウナ様、ラル様でよろしいでしょうか」


「はい合ってますけど・・・・・・俺達何か問題でも起こしましたか?」


ゼルートの言葉に兵士はゼルートが何を言っているのか理解出来なかったが、数秒程が立ち小さく笑いながら疑問に答えた。


「いえいえいえ、そう言う訳ではありません。この街、サーロウを治める領主様、アグローザ・ノーザス様よりゼルート様達を見つけたら直ぐに屋敷へ向かわせて欲しいと連絡がございましたので」


兵士から帰ってきた言葉は納得できる内容であったため、一先ず何か問題を起こした訳では無いと分かったゼルートはホッと一息つく。

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