少年期[239]現時点で考えれば

空中で頭部を抉られたアイアンゴーレムは第二の心臓とも呼べる脳を壊されたため。完全に機能が停止して体が微動だにしないまま地面に落ちた。


アイアンゴーレムの頭部を抉り終えたラルはあまり音を立てず地面に着地する。

そして戦いが終わったのを確認したゼルートとルウナがラルの元へ駆け寄り、お互いを労う。


「お疲れ、ラル、ルウナ。どうだ、ある程度は満足出来る戦いは出来たか?」


「ああ、中々楽しい戦いだった。ゼルートが戦ったリザードマンナイト程は強くなかったもしれないが、指揮を取れる魔物がいたからランクが高くない魔物でもそこそこ緊張感のある戦いだったぞ。それとロックパンサーに関しては本当に良い戦いが出来たと思っている。それこそリザードマンナイトやアイアンゴーレムに負けない程良い緊張感を体験できる試合だった」


「グルルルルルル、グルルル~~~~」


ルウナは満足気な表情で自分が戦った魔物の大まかな強さをゼルートに伝え、ラルも満足気な顔でゼルートに頭を擦りつけて来た。


「そうかそうか、ラルもルウナも良い感じに満足出来たみたいだな」


「ゼルートも中々満足のいく戦いだったんじゃないのか。私は戦いの中でチラッと見た程度だったがゲイルには敵わないだろうが、それでもかなりの腕前を持っていたと私は思ったが」


「確かにルウナの言う通りゲイルには及ばないけど、良い腕だった。修羅場を潜り抜けて来たのが一目で分かるリザードマンナイトだった。まぁ・・・・・・少し単細胞だったけどな」


剣を手から離させるためのあからさまな挑発に乗ったポーカーフェイスながらも動きが単調になったリザードマンナイトを思い出し、ゼルートは苦笑いになりながらも戦利品の武器に目を向ける。


「ただ、そのおかげで結構上等な武器が手に入ったんだけどな」


「ほぅ・・・・・・同じ剣が二つという事は双剣か。ただ、長さは普通のロングソードと変わらないみたいだな。それはゼルートが使うのか? それともアレナに渡すのか? アレナなら二刀流で戦う事も出来ると私は思うぞ」


ルウナの言う事にゼルートは分からなくもないが、アレナは二刀流のスキルを持っていないのでエレメントブーストを渡すかどうか少し迷っている。


(正直二刀流のスキルが有ると無いとじゃかなり扱いやすさが変わって来るんだよな)


ゼルート自身二刀流のスキルをレベルは高くないが習得しており、スキルを持っているといないとでの差が大きいという事は実感していた。


「俺は取りあえず使わない。俺にはフロストグレイブがあるし・・・・・・五体でも十分に戦う事は出来るしな。俺もアレナに渡してやりたいって思いはあるけど、アレナは二刀流のスキルを持っていないからな。持っているとないとでの差は経験済みだ。二刀流のスキルはセンスがあってもそう簡単に覚えられるスキルじゃない」


父親が治める領地の兵士達の中で二刀流のスキルを習得している者がいる。

ただ、習得した人数は三人だけ。決して人数は多くないが平均的なレベルが高い父親の兵士たちでさえ、ガレンに教えを請いて訓練に励んでも習得するのに長い月日が掛かった。


「だからこいつは父さんに渡すつもりだ。二刀流のスキルレベルも高いからな」


ゼルートの答えにルウナはなるほどと思い、優しい笑みを向けた。


「なるほど、流石ゼルートだ。相変わらず家族思いだな」


「・・・・・・当たり前だろ」


ゼルートは頬を少し赤くしながら顔を逸らした。



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