第205話少年期[195]首の骨をボキっと

ゼルートによって蹴り飛ばされたリザードマンは、一直線にもう一体のリザードマンの方へ飛んでいった。

もう一体の勝気な男と戦っていたリザードマンは、ゼルートの気配には気づいていたので、飛んできた仲間をしっかりと受け止めていた。


その影響で、勝気な男が後ろに下がったのを確認したゼルートは、二体のリザードマンに向かって走り出した。


(これで四人とも後ろに下がったな。って、あの男まだ騒いでるな。必死だった男の言う通り、仲間の命がかかってるんだから大人しく下がっていればいいのに。あっ、短剣の柄で頭叩かれてる。痛ったそ~~~~。まっ、自業自得だし、一旦頭冷やしとけって話だな)


短剣の柄で頭を叩かれた男に少しだけゼルートは同情したが、自分に向かって来る気配を気づき、前を向いた。


(っと、今度はロングソードに魔力纏ってるな。てかやっぱりここまで強いリザードマンがこの浅い階層にいるのがやっぱりイレギュラーだよな。リザードマン達が本気だったら、あの四人、出会ってそう時間も掛からず殺されてたろうな。遊んでたのか?)


リザードマン達の思考を考えているゼルートは、勿論戦闘中だという事も忘れておらず、手に魔力を纏いロングソードを片手で受け止めた。


「シャアアァァア!!??」


「何そんな驚いてるんだよ。そういった技能を持ってるやつなんざ結構いるぞ」


そう言うと、ゼルートはリザードマンが持っているロングソードの刃の中心辺りを握りつぶした。

またしても驚いた顔をリザードマンはしているが、どこか余裕の表情が含まれていた。


(もう一体がいないな。・・・・・・本当にこいつらって頭いいな。ダンジョンに生まれたから結構長いのか? まぁ、相手が俺だから関係ないんだけどな)


ゼルートは握り潰したロングソードを離すと、後ろに向かって裏拳を放った。


「シャッ!!??」


「だから、そんな驚いた表情するなって。世界は広いんだぞ」


ゼルートが放った裏拳はもう一体のリザードマンのロングソードの腹に当たり、軌道がそれた。

そして軽口をたたきながらリザードマンの手の甲にブレットを放った。


「よっ、と!!」


ブレットを喰らった衝撃でリザードマンがロングソードを手放したのを、見逃さず手の届かないところまで蹴り飛ばした。


「ほれ、驚いている暇なんてねぇぞ」


リザードマンが呆気にとられているのを見逃さず、ゼルートは直ぐに行動を移した。

持ち前の速さで一瞬にしてリザードマンの背後に回り、両手で体をしっかりと捕まえた。


「受け身の準備、しとけよ!!!!」


そう言うや否や、ゼルートはリザードマンにバックドロップを決めた。


ゼルートの攻撃方法に、さっきまでは特に表情を変えずに戦いを見ていたアレナとルウナの表情が変わった。

それはセフィーレ達も同じだった。勿論驚いている。

この世界にプロレスなんて格闘技はないのでゼルートが見せた技は、アレナ達にとって初めての物になる。


「あれは・・・・・・技、何でしょうね? 恐らく首の骨が折れたはずよ」


「そうだな。あれは、一撃必殺・・・・・・といった技ではないと思うが、受け身が取れなければ重症か死は免れないだろうな」


「確かにそうね。ただ・・・・・・」


「ただ・・・・・・なんだ?」


アレナはゼルートがリザードマンにバックドロップを決めるのを思い出しながらつぶやいた。


「なんというか、もの凄くあり得ない光景に見えたのよ。勿論ゼルートが外見に不釣り合いな力を持っているのは知っているわよ。でも・・・・・・」


「・・・・・・うん。なんとなくだが言いたいことが分かったぞ」


そんな二人の会話が聞こえていたゼルートも、アレナの言いたいことが分かった。


(まぁ・・・・・・子供が大人にバックドロップ決めてるんだもんな。絵面的に可笑しく見えるよな)


自分がやった事の可笑しさに笑いながらもゼルートは残ったリザードマンに、短剣を構えて走り出した。

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